7月某日晴れて暑い日(灼熱)
「久しぶりに来ませんか?長くお会いしてないし」
仕事でもご縁が有った人だし、頭の構造が合理的なのに優しいところもあって面白い人だ。柔らかい印象の女性だけれど、理系らしい。
わたしもちょっと別件でもし叶うならという欲があったし久しぶりだったので、灼熱のかんかん照りの中比較的ご近所のサロンに向かった。暑すぎる。
質問されて答えたり、近況報告的なことがあったり。ちょっとめずらしいデザートを出してもらったり。共通の友人の話、発酵、平和、SDGs、フェアトレード、彼女が関わってきた様々な経験からいろんな話が出てきた。勉強になる話もあるし、けっこう長い話をした。今回の話のメインは、映画の話だった。グローバリズムと大国の思惑に振り回されるアジアの国々。公正とはなにか、日本がアジアの中の国であるなら、わたしたちのできることはなにか。国を動かす力は一般の民には無いのか。きっと彼女のことだから、なにか始まるんだろう。
そのうち美しいリキュールグラスに入った金色の飲み物が出て、「好きかどうかわからないけれどどうぞ飲んでみて」と言う。きりりとしてとろりとしたテクスチャーで、おいしいドリンクだった。
「これ、MLMなんだけど、とても気に入っているの」と言う。飲んで自分自身こんな経験をした、こういうこともあるらしい。
誠実な人なので最初からMLMだと言われているのに、わたしは気が散って「そういう話は聞いても期待に応えられないし伺わないほうがいいわ」という機会を逸してしまった。申し訳ない。機会を逸したばかりに、飲み物のことやシステムのことなど、お互いに長い会話を続けることになってしまった。
MLMはすべて悪であるとは思っていない。そういうビジネスがあり、詐欺のように粗悪な商品でなければ、互いに納得の上で成り立っているならそれは真っ当な商売だ。意志に反して購入せざるを得ないところに追い込まれたり騙されたりしているのでなければ、普通に成立して構わない。ましてや今回の場合、相手はビジネスとして取り組みたいとはっきりわたしに伝えている。
MLMの魅力ってなんなんだろう。そこで同じビジネスをする人同士の交流が生まれたり、商材を挟んで売る人と買う人の交流が深まったり、ひいてはある種の同志の共感のようなものがうまれるのかもしれない。商品とお金以外に納得の行く魅力がなければ、そんなに長くこういうビジネスが続くわけはないと思う。MLMに関わる人たちが一様に言うのは、商品の良さ、システムの負荷の無さ、上の人の人間性の良さ。公正さ。どのMLMでも必ずそう言う。
自分で海外と交流しながら材料を仕入れ、自分なりのビジネスをしている彼女が、ふとMLMビジネスに関わってみようと思った、そしてわたしに紹介してみようと思った原因はなんだろう。ゴリゴリと営業されたわけでもなく、ふわっとアプローチされただけだから、被害を被ったと思うより、申し訳なかったと思う。わたしが大人な反応ができなかったばかりに。
自分にMLMをやってみようと思う気持ちが少しでもないかしらと自分の中をスキャンする。暑い夏の午後でした。
いや、やっぱり無いな。