フェルミ推定『四聖獣の乳』を理解する
「獣帯鏡」は古墳時代の青銅鏡だ。円状に突起があり、外側の7つは玄武、青龍、白虎、朱雀の「乳」を表すという。さてここで問題だ。
各聖獣が持つ乳の数はいくつか?
これが『四聖獣の乳』と呼ばれるフェルミ推定だ。
問:各聖獣が持つ乳の数はいくつか?
いくつだろう?考えてみよう。
7つの突起を四聖獣で分担するのだ。
まず人間と同じと仮定し、ひとり2個ずつ乳を割り振っていくと8個必要となり、1個足らない。だれかひとりが1つしか持っていないのか?
哺乳類以外は乳を持たない
いや、そうではない哺乳類にしか乳はないのだ。
玄武=亀(爬虫類)
青龍=龍(爬虫類?)
白虎=虎(哺乳類)
朱雀=鳥(鳥類)
虎を除く聖獣は哺乳類ではないため、7つとも虎由来のニップルじゃん、となる。
現実の問題文は数学とは違う
この解答は、数学の計算問題ならば正解だが、今回はミステイクである。
のとき、解が以下であるとしよう。
形式的にはこの4次方程式の解でも良い。しかしそれは象牙の塔である。7つの乳は玄武、青龍、白虎、朱雀の乳だという提示(定義ではない)なら、1聖獣につき最低1乳は割り振っていなくては、文章としては不自然だ。数学的に条件定義し直すと各変数は「0を除く自然数」だ。
※ 噛み砕いて言うと、文章題の出題者としては、足を持たないヘビとかミミズとかC3POで鶴亀算作っちゃダメだって話
条件が厳しいものの方から解けば良い
考え方を変えよう。架空の生き物なら乳はいくつでも良いとも言える。架空度の高い動物は以下の順だ。
こういう場合、条件が厳しいものから解決する、つまりより現実に近い生き物の乳の数のほうが融通がきかない。ここでは白虎の現実度が高い。
ネコ科の生き物は多くは8つの乳を持つので、白虎にも適用する。しかし、それでは7を超えてしまい破綻する。ここでフィールドワークだ。実際の猫の乳は増減する。ある程度の増減は個体差といえよう。
最難条件の虎だが、フレキシブルな条件に置き換えができた。
ここで、各変数は「0を除く自然数」を思い出そう。
さらに、ネコ科は8乳を持つ個体を中心値として、上も下もなだらかに減っていくと仮定しよう。(中央値仮説)そうすると回答はこうなる。
玄武= 1
青龍= 1
白虎= 4
朱雀= 1
これで合計7だ。もちろん、白虎乳も1まで減らし、他乳増加も可能だが、中央値仮説により、中央値に一番近い4が適当である。
以上が、フェルミ推定のテクニックである。
この獣帯鏡、現在開催中の、東京都美術館の「ボストン美術館展 芸術×力」に来ている。あらゆる時代あらゆる場所の権力者が利用した芸術というテーマの展示で興味深い。読者諸兄姉はぜひ現場での推定をされたい。
補足:
獣帯鏡の円状突起が「乳」を表すという話はホント
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