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【コラム】公的保証のない「プロ」、3つの線引き

「お前も、もうプロだろ。」

今の会社に勤め始めて2年目のとき、小さな失敗が続いた時期に上司に怒られつつ言われた言葉である。2年目と言っても私自身、初配属となったマーケティングの部署から営業部署に異動してまだ2ヶ月目かそこらの頃だった。

未熟な私は分かったような顔をしながら、サラリーマンの何がプロなのかと内心よくわからないという顔をしていたと思う。

世の中は多種多様な職であふれている。その中には「プロ」と「アマ」の線引きが何かしら目に見える形で明確化されているものもあり、その世界に足を踏み入れた者はすべからくプロを名乗れる到達点を目指して努力する。

例えば、サッカーではFIFAが『Regulations on the Status and Transfer of Players』の中で、「クラブと契約を結び、日常の出費を上回る給料をサッカー活動により支払われている者」と定義している。家計的なお金の動きが絡むと、なんとも正解に近い気もしてしまう。

では、そんな公的保証がない職種は何をもってプロとするのか。何千万円にもなる絵を描く画家は?YouTuberは?それこそ30年以上勤めるサラリーマンは?生活できているのであれば全てプロと言っていいのか。その界隈で「プロ」を冠する人たちは何をもってプロなのか。

①唯一絶対の「武器」があるか

パティシエの小山進さん。著書『丁寧を武器にする』で「どんなジャンルの仕事でも、丁寧な力こそ仕事の基礎力になる」と述べる彼が開発した「小山ロール」は1日1600本を売り上げる。小山ロール最大の特徴は、その究極の「丁寧力」に裏打ちされたスポンジのきめ細かさ。

プロには他の追随を許さない「武器」がある。界隈にいる人口が多いほど埋もれていき消えていく中で、プロとして生き残っている人たちには特有の突き抜けた力がある。それは自分で武器だと思っている・公言しているという段階では往々にして認められない。誰に自分を語らせてもキーワードとして挙げられるようになって武器と化す。

②逆算した努力ができるか

プロのピアニストになろうとした大阪音大卒の同期がいる。「趣味でピアノを習っている素人が半年ぐらいかけてこなす曲を、音大では一週間程度でできるようにならないとダメだった。1日10時間以上の練習は当たり前だった。」そんな彼女は今サラリーマンで営業をしているが、努力の大切さを身にしみて理解しており、他の追随を許さない売上を記録している。

「努力すれば結果はついてくる」という話がある。ただ、その結果が理想のゴールよりかけ離れていると「努力しているのに何でこの程度なのか」と考える。確かに後追いで実を結ぶ結果もあるだろう。だがそれは、自分が行った努力の量に見合った結果がついてきただけの話だ。10時間練習することが必要なのではない。自分が目指すレベルに到達するために練習した結果、いつの間にか10時間経っている。自然体で膨大な量の努力を重ねられるのは、目指す姿と道筋が明確に見えているからに他ならない

③人を感動させられるか

日本最強のコンシェルジュ、阿部佳さん。フランス発足のコンシェルジュネットワーク組織であるレ・クレドールで、名誉会員に認定された唯一の現役日本人である彼女は、著書『わたしはコンシェルジュ-けっしてNOとは言えない職業-』で顧客満足度についてこう語る。

「サービスのプロでない人が”親切心”で行う行為であれば、相手に感謝されることで満足していい。ただプロの仕事として行うサービスは、お客様に『また来たい』と思っていただき、さらに『また来たよ』と言っていただくことに喜びを感じるところを目指す。」

「NOと言えない日本人」が流行っていた中、そう言えない状況にある職業においては特に顧客と向き合うことを忘れない。「何をしてあげれば、何を提供すれば、この人たちを『感動』させられるのか。」常に追究する。


まとめ

「プロ意識」という言葉がある。プロとしての心得を自分の中に持ち、それを意識して行動するために必要なマインドセット。数多くの項目があらゆる媒体で紹介されているが、0の状態から考え始めて実行に移すまでは慣れが必要である。

だがその前段階として、プロは一流になるために必要な能力を知っている。その習得に必要な努力量を理解している。それを習得し発揮することで感動させられる姿がある。その上で「私はプロだ。」とマインドセットするのだ。

プロを名乗る以上、何か保証をと考える。そういう判断軸も確かに存在する。だが、そういう目に見えない「モノ」で担保されない仕事においては、「人の心を動かす必要以上の能力を持ち、その技術の習得を努力と認識しない」ことだと考える。

「お前も、もうプロだろ。」

この言葉は一生追いかけて、そして追われることになるのだろう。あのとき怒られて良かったと、まだプロに程遠いと、私は本気で思う。





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