2020/07/07

米澤穂信先生、初めまして。

私の頭の中には、米澤穂信という人物と、米澤穂信達が世に送り出した作品を私が解釈した世界が常にあります。東欧と聞けばさよなら妖精が、頭をよぎります。本当にたくさんのものを受け取ったのに、私から影響を与えることはできないのかなと思ってメッセージを送りたいと思いました。でも何を伝えればいいのかわからなくて、素直にたくさん好きなところを書いて、ファンレターにしようと思いました。

初めて知ったのは、中学1年の時、2012年にサブカルチャーに興味を持って、何となく書店で見かけた少年エースを購入して、前の方のページに載っていたコミカライズ版氷菓(大罪を犯す)を読んだ時です。魅力的なキャラクターデザインが施された登場人物と、その心情に沿われた物語。とても気に入りました。そのあとアニメ氷菓と、原作の古典部シリーズを見ました。すごく好きになりました。当時の私は本気で省エネ主義を目指していたし、高校生活は薔薇色なのだと信じていました。

愚者のエンドロールで、本郷真由という人物がいますね。私は彼女が好きです。物語の最後で、入須と本郷二人の真意が明らかになりますが、あそこの対比で、なんといいますか、不幸な役目であった本郷が少しだけ報われるような気がするんです。アニメ版氷菓で、古典部が本郷の脚本を読むシーンで、伊原が「やっぱりちゃんと考えてたのね」と言うとき、江波が少しだけ嬉しそうな表情をするのがとても好きです。

他の小説も読みました。リカーシブルでは村社会に興味を持ち、ハルカの力強さに励まされることもありました。小市民シリーズでは、小鳩君と小佐内さんはある種超人的な能力を持っているのに、彼等は居心地の悪さを感じることが多いという二面性が描かれた物語に、心惹かれました。さよなら妖精は一番読み返した回数が多いです。初めて読み終えた後は衝撃を受けました。太刀洗のセンドーと言うあだ名は、守屋をマーヤまで運んでいく、という意味で付けられたのではないかと考えてしまうくらい好きです。王とサーカスでは、チャメリが太刀洗にとんぼ玉の髪飾りを贈る場面が大好きです。

作品を好きでいる気持ちが段々米澤穂信先生自身への興味に変わっていくことにも気づいていました。アニメ氷菓のイメージに合うクラシックの選曲(編曲担当をされた田中公平さんのブログより)とか、手作りチョコレート事件で奉太郎が語る恋愛観とか、さよなら妖精で描かれた守屋の葛藤を記した文章とか、たくさんの情報から補完できる、先生が生み出された世界曰く「灰色」に、何を足すべきなのかを、私は考えています。同じ世代の登場人物達の姿と、お話の中に散りばめられた教養は学ぶことの楽しさを教えてくれたし、何度も自己啓発のヒントになりました。

ここまで書いて、自分が何をしたかったのかがわかりました。私は感謝を伝えたかったのだと思います。影響を勝手に受けたのは自分だけど、でも感謝するならその元を作ってくれた作者様だと思います。米澤先生、素敵な時間をありがとうございます。