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サプライズ結婚式−たった1分で読める1分小説−

 晋太郎は、ウェディングプランナーだ。
 今度披露宴を行う新婦の小園美鈴に、こんな提案をした。
「実は海外でこんな演出があるのですが」

 動画を見せた。新郎が一人待っている。後ろからウェディングドレスを着た花嫁が来ると聞かされて。

 花嫁がやってきて新郎の肩を叩き、新郎が顔を輝かせて振り返る。だがそれは花嫁ではない。ドレスを着た新郎の友人の男性だ。新郎は爆笑し、参列者達も腹を抱えて笑っている。
 サプライズ好きの美鈴にぴったりの演出だろう。

「これやりたい」
 美鈴が賛同し、晋太郎はほっとした。

 式当日、新郎の友人の太一がドレスを着ている。筋肉質なので、まるで似合ってない。
 新郎が待つところに、太一が近づいていく。新郎の驚く顔を想像しているのか、美鈴がほくそ笑む。

 新郎が振り向いた。一瞬目を丸くしたが、なぜかボロボロと涙を流した。
「……太一、おまえと別れるのは嫌だ。俺はこの結婚をやめる」
 新郎は太一の手を握り、式場から二人で去っていった。
 美鈴と参列した人達はぽかんとしている。

 実は、新郎と太一は恋仲だった。
 まずい……。
 晋太郎が急いで扉を開けて廊下に出ると、そこには新婦の父親が控えていた。

 父親が首をかしげた。
「何かあったのかい? 中が騒々しいが」
「お父様、計画は中止です。今すぐ着替えてください」
 父親はサプライズ好きの娘を驚かすため、

 ウェディングドレスを着ていた。



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浜口倫太郎 作家
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