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冷蔵庫の余りもの−たった1分で読める1分小説−

「じゃあ冷蔵庫の余りものでチャチャッと作るよ」
 涼太がエプロンを身につけた。

 今日は俺と小春で、涼太の家に遊びに来ていた。俺は小春に惚れていて、どうにか付き合いたかった。

 その涼太の焼き飯は絶品だった。小春が絶賛する。
「おいしい、これっ、本当に冷蔵庫の余りもので作ったの?」
「そうだよ。俺、余りものでなんでも作れるんだ」
 涼太が爽やかに笑った。

 俺と小春で帰ると、小春が余韻に浸るように言う。
「あの焼き飯おいしかったね」
「……スーパーで材料をそろえれば、俺でも作れる」
「そうじゃなくて、余りものでっていうのが素敵なの」
「なんでだよ」
「限られた材料で工夫できる人って、成功できる人だよ。涼太君はきっとそうなるな」
 それが小春が涼太を選んだ決め手となり、俺は失恋した……。

 二人が結婚して数年後、俺は家に呼ばれた。
 中々子宝に恵まれなかったが、やっと子供を授かったのだ。
「抱いてやってくれ」
 涼太が赤ちゃんを渡し、おっかなびっくり受け取ると、俺は驚きの声を上げた。
「冷たっ!」
 人間の体温ではない。死体に触れたみたいだ。

「びょっ、病院」
 動揺する俺をよそに、涼太が笑顔で説明した。
「落ちつけって。これがこの子の平熱だよ」
「どういうことだ?」
「俺達病院で検査したんだけど、二人とも子供ができる体質じゃなかったんだ。だからさ、俺の特技を使った」
「特技?」

「冷蔵庫の余りもので、チャチャッと子供を作ったんだ」



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