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考えない人−たった1分で読める1分小説−

「ねえ、御園さん、私達のグループに入らない?」
 希美が、御園梨花に声をかけた。御園はとびきりの美人で頭もいいので、仲良くなりたかった。

 チラッと御園が、希美のいるグループの女の子達を見た。
「遠慮するわ。私は考えない人になりたくないの」
「どういう意味?」

「集団の中でいると、確かに寂しさはまぎれるし、優越感にも満たされる」
「いいことばかりじゃない」
「でも考える力は失われる。ぬるま湯に浸って、集団の誰かの指示に従っていれば、どんどん人間はダメになる」
「私はそれがダメだとは思わないけどな」

 フウと御園が肩を沈めた。
「それをダメだと思わないのがダメなのよ。四六時中スマホを見て流行を追いかけ、誰かと繋がりを求める。まさに何も考えない人間の行動だわ。孤独になって、一人考える時間を持たないと、いつか大変なことになるわよ」
「ほっといて」
 何を偉そうに、と希美はむかむかした。

 自分の部屋で、希美はスマホを触っていた。
 すると画面に触れた指先から、カツンと音がした。
「何これ!?」

 希美の指が石になっている。その石化の範囲がドンドン広がり、すぐに肩口まできた。
 考える時間を持たないと、いつか大変なことになる……。
 御園の言葉が頭の中で反復する。もしかしてこれのことなの?

 考える、考える……希美はとっさに思いついたあの姿勢になった瞬間、全身が石化した。

 そのポーズは、ロダンの考える人と同じだった。


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浜口倫太郎 作家
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