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やっぱアートにオーラってあるんだなぁ。

大学で現代美術の授業を受けてとても驚いたことがある。
6年ほど前、高校生の時に愛知の現代美術の展示を見に行き、そこで唯一印象に残ってた2人の作家が、授業でも取りあげられたのだ!

その2人の作家とは、河原温(カワラ・オン)とアンゼルム・キーファー。

当時、「美術なんてわかんね〜」って思ってた学生でも感じ取れる “オーラ” というのが、良い作品には本当にあるんだなぁとびっくりした。本当に。

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ちなみに私が美術館で見たのは、まず、河原温の「TODAY」シリーズ。今思うとなんて貴重な経験を…。
毎日、一日一枚その日の日付を描いていくだけなのだが、これを3000枚以上続けているらしい…狂気だ…。
美術館のキャプションか、学芸員の説明か(昔のことなので記憶が曖昧)で知ったのは、❶これがフリーハンドで描かれていること、❷グレーは何色も混色して作られたものだということ。(古い記憶なので違っていたらすみません…。)だから微妙に色が違うし、微妙に文字がやわらかい。
本当でもそうでなくとも、私はたしかにあの作品を前にして、PCでタイプして印刷された文字以上の何か “オーラ” を感じていた。

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もう1つは、アンゼルム・キーファーの「シベリアの王女」という作品。調べていくと、私は名古屋市美術館の常設展でこれを見ていたことが判明した。
ロシア革命で処刑されてしまう王女の絵らしい。画面右側には絵の具で塗られたトゥシューズ(実物)がかけられている。
詳細についてはこのブログの示す通りである。
https://blogs.yahoo.co.jp/sai794heian/12900779.html

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少し昔話を聞いて欲しい…。
この絵を見ようという時、当時の私は本当に「現代美術」のげの字も分からなかった。油絵教室に通って絵を描いていたが、普段触れる絵画は、美しい風景画や、宗教画、肖像画ばかりだった。
だから現代美術の展示室に入って、全く見方が分からなくなり、何を思ったのか、唐突に学芸員に「私は現代美術を初めて見ました。どうやって見たらいいんですか?」と話しかけた。
その時の学芸員の嬉しそうな顔は忘れられない。若い学生が難解な現代美術に興味を示してることが嬉しかったんだと思う。
彼は、ちょっと待ってねと言って少し考え、まず私をアンゼルム・キーファーの「シベリアの王女」の前に連れて行き、解説をしてくれた。解説というか、考えるヒントをくれた。

「まずこの絵を見てどんな気持ちになる?」「ちょっと怖いかも」
「そうだね、これは戦争を題材にした絵画なんだ。ロシア革命を背景とした皇后アレクサンドラがシベリアに流刑され〜ウンチャラ」
((シベリア送り的なアレよな。こわいやつだ…。))
「でも見てごらん、これ何かわかる?」「バレエのくつ?」「うん、トゥシューズだね。そしてこの絵のタイトルは『シベリアの王女』。きっと彼女のものなんだろうね」
「ちなみにこの絵、何で描かれてるか分かる?」「油絵とか、なんか違うのもある」「そうそう、実は鉛も〜ウンチャラ」

実はもう一作品、半立体作品を解説してくれたのだが、残念ながらこちらのことは何1つとして覚えていない。キーファーだけは私の心を惹きつけた。

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他に客も少なく、非常に丁寧に説明してくれた。知らなくても、知ろうとする姿勢に快く応じてくれたこと。この経験は私がアートに接する上で非常に重要なものとなった。
私は今でもアートをよく知っている人間ではないから、また、全く分からないことにぶち当たるだろう。それでもこうして助けてくれる人はきっといる。

それはアートじゃなくても同じことで。
私が知らない世界を覗くのに、過剰に恐れたり、躊躇したりするのを減らしてくれたのは、名古屋市美術館の学芸員さん、そして素人をも惹きつけるオーラをまとった河原温とアンゼルム・キーファーだった。

(2019/08/23)

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