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対話型アート鑑賞会をやってみました!

みなさん、こんにちは。りんです。
先日初めてオンラインで「対話型アート鑑賞会」を実施しましたのでそのレポートをお届けします。

みなさんは対話型アート鑑賞ってご存じですか?
私はアートに詳しい(というかプロですが)友人から2,3か月前に始めて聞いてからずっとやってみたい!と興味を持っていたのですが、今回ついに実施することができました。

対話型アート鑑賞とは?

1980年代にニューヨーク近代美術館(MoMA)で生まれた。
鑑賞力だけではなく、観察力・批判的思考力・言語能力・コミュニケーション能力といった総合的な「生きる力」の育成につながる手法

※出典
教えない授業――美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方
鈴木有紀
https://www.amazon.co.jp/dp/4862762654/

美術鑑賞といえば事前の予備知識や解説を見てその知識をインプットして作品を鑑賞しがちですが、まず自分で鑑賞、自分の意見を表現し、そして答えのない世界で自分なりの答えをだす、という新しい鑑賞方法かつ学ぶ力を培うプログラムです。

1.実施概要

今回は読書会コミュニティ仲間でありプロのアートディーラーのまめさんにファシリテーションをお願いして進めました。

プログラム内容はこんな感じです。

前回(アート鑑賞のお作法会)のおさらい
・鑑賞の心構え
・鑑賞の方法
実践
・対話型鑑賞(VTS)をベースに。
 1)答えのある作品の答えを探る
 2)有名な作品をあらためてみる
 3)答えのない作品をみる
リフレクション


2.前回のおさらいからのまずは練習!

まめさんとは以前にもアートと向き合うか、ということで鑑賞法についての勉強会を実施したのですが、今回の対話型鑑賞ではその方法をベースに進めていきました。

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1)答えのある作品の答えを探る

まず最初にアンティークジュエリーを見ながら各自考えたことを話していきます。
その際には「どこから見てそう思ったのか?」を話すのがポイントになります。
いきなり本格的対話型鑑賞に入るのではなくちょっとした練習問題からチャレンジしました。

2種類のアンティークジュエリーを見て練習問題にチャレンジ!

1つめはアンティークのブローチとジュエリー。
1分間しっかりじっと見たのち順番に思ったことを発言してもらいました。

今回の8名の参加者からはこんな発言が出ました。

ブローチ
「包み込むような温かさ・レースで女性らしさを感じる。黒い縁取りで闇を感じる」
「象牙かと思った。育ちが良いのかレースがあって若いイメージ」
「なめらかで質感が良い。誰向きに作ったのか気になった。後ろの黒いところが気になった」
「工芸品に近い美術品。女性から男性へのプレゼントなのかな」
「手首だけ白くなっているのが気になった」
「なにに使うものか気になった。お花を摘んでいるところなのかなと思った」
「すごい色遣いだなと思った」
「ブローチだと思ってどんな洋服に似合うだろうと思った」

ジュエリー(指輪)
「ポップな感じもする」
「ケースに保管されているので何か特別な意味があるのかと思った」
「暖色が一色だけ入っていて何か意味があるんだろうなとか思っていた」
「婚約指輪なのかな。結果的に芸術品になった贈り物?宝石自体に意味がありそう」
「角度を変えると色が変わるのではないか。お年を召した方がつけるものだと思った」
「ジュエリーの左右のゴールドの色の違いが気になった」

と全員から意見が出そろったところで、ファシリテーターからの解説がありました。

まず、ブローチの方から。
象牙製のブローチ。繊細なつくりなので欠けないように黒い台座がある。モチーフに意味がある。

女性の手が持っているバラの花ことばは愛。
女性の手も当時良く使われたモチーフで意味があり「想いを捧げます。私を捧げます」という意味が込められているそうです。

で、つなぎ合わせると「愛+女性の手=愛を捧げます」というメッセージになるとのこと。
そんなメッセージが込められていたとはびっくりでした。


一方の指輪の方は、当時流行したデザインでメッセージジュエリー。
宝石はルビー、エメラルド、ガーネット、アメジスト、エメラルド、ダイヤモンドが使われていますが、これらをつなぎ合わせて「Regard」というメッセージになっているとのこと。
さらに宝石のモチーフに使われている花(忘れな草)にも神話(花言葉)があり、私を忘れないでというメッセージになっているそうです。

ということで、両方ともモチーフに込められたメッセージがあって、それが謎解きみたいで面白かったです!

2)有名な作品をあらためてみる

続いて練習問題2つ目。かの有名なミュシャの作品を改めて鑑賞してみます。

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これも1分ほど見たのち、みんなでそれぞれ感じたことをは発表していきました。

「チェコにあるミュシャの美術館いった。
家にミュシャのポスターがある。構図もモチーフも好き。髪の流れが好き」

「絵を何個組み合わせているのか?トランプみたい」

「星座があるから空がモチーフ?太陽と月もある。
おとめ座がモチーフ?おとめ座の擬人化なのか?」

「情報量多くてめまいがする。全部盛り的な。
女性の輪郭が太くて周りに埋もれないようになっている。
堂々としていて威厳がある。一般人ではない神様系」

「情報量多い。アニメっぽい。
12星座があって袖が星になっている。
冬の女神?雪と氷のモチーフがあるから。
ネックレスがゆりやスズランのモチーフに見えるので春から夏?ヒイラギもあるように見える」

「切り札として困ったら私を使ってください。という感じがする。
カードみたいな感じがする。木とか葉とか地球上のもの。
女性がすべてを操れるかのような全能の神的なイメージを受けた」

「女神のモチーフが大きく、情報量が多いけどごちゃごちゃしていない。
それは他の方が言った通り線が太いせいかもしれない」

「占いのカードのシリーズの1つみたいと思った」

全員の発表が終わったとことでファシリテーターからミュシャの解説です。

今回はミュシャの「ゾディアック」という作品を扱いました。
12星座と太陽(ひまわり・昼)と月(夜の象徴)をモチーフにしていて間の空欄は宣伝のためだそうです。

印刷会社と出版社の広告用だったのでこの作品をきれいに摺り上げられる技術力のアピールのため細かく繊細で情報量が多いのかもしれないということでした。

3. いよいよ実践!答えのない作品を見る

さて、いよいよ最後に実践編!今度は現代アートを題材とするため現代アートおさらいをしながら最後の教材をやはり1分間見ます。

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そしてみんなからの発表に移りました。

「自分起点で世界をみる。地面から自分を高い位置に置く感じがする。
自分の自由を求めている感じがする。
自由になった自分で世界を照らしている」

「生活の不安定さ(車も切り取られていたり、タイヤもない)
ベッドの上にソファがあるからソファで寝落ちしているのではないか」

「東日本大震災を思い出す(机が壊れたり、ベッドやソファが転がっていた当時を思い出す)」

「震災のイメージがあった(廃材を使った作品だと思った)
どこにも行けない、眠れない明るいソファ。よくわからない」

「自身で流された家具が引っかかっていると思った
何とかなるという象徴?」

「なんで街頭に刺さっているのが気になり、街頭が何を表しているかを考えた。
車から始まって視点が上にいく。
現代日本人の生活の順序(車→家具→街頭は夢?朝日?)」

「見てると不安になる(構造が不安定)
貧困も連想させる(場所がなく家具が積みあがっていく感じ)
洋服が上にあるのは高速道路によくあるさみしいイメージ。全体にネガティブなイメージ」

「普段横に並んでいるものが縦に積みあがっているので常識を疑うアンチテーゼのように思った。
ウチとソトの枠を取っ払う接合点にも見える」

と一通り発表が終わったところで、ファシリテーターより作品名の公開!
今回の作品は
西野達さんの「やめられない習慣の本当の理由とその対処法」でした。


4.みんなのリフレクション

最後に振り返りをして終了しましたが、みなさんからの感想をまとるとこんな感じでした。

・こんなにじっくり作品を見たことがなかったかも。
・他の人の意見を聞けたのが良かった。
・それぞれの見方を尊重する方式も良かった。
・人対人でなく、みんなで同じものを見るので会社での課題解決にも使えそう。
・みんなの意見を聞くことで自分の考え方のクセがわかった。
・ネット検索するのをあえて我慢した。


5.実施してみての感想

参加者の方からの感想にもあるようにオンラインで実施したので調べようと思えばすぐ調べられたわけですが敢えてそれをせずに自分でまず考える、というのか対話型アート鑑賞の最大のポイントであり楽しさだなと実感。

教科書的インプットに縛られずにまず自分の意見を述べるというのは最初はちょっとした勇気が必要ですが、思い切って踏み出すとわくわくする新しい世界が広がっていました。

私も自分で参加してみて、今まで漫然と見ていたのが1分間という制限時間もあって作品を真剣に見るようになりました。
同時の頭の中で自分の思考を言語化するということで頭をフル回転し、良いトレーニングになりました。

特に最後の作品鑑賞の時には対象が現代アート、ということもあり自分ではまったく思いつかなかった東日本大震災を想起された方や日本人の日常生活、自由、といったキーワードが出てきたりして非常に興味深かったです。

また自分の意見を述べたり他の人の意見を聞くというディスカッションの場では「心理的安全性」が大事になってきますが、人対人で意見を述べるわけではなく、作品を触媒としてコミュニケーションすることで、同じ方向を向きやすく対立関係でなく、心理的安全性を担保しやすい、というのは大きな発見でした。

この手法はアート以外でも応用できるのではないかと可能性を感じるとともに継続して実施したいと思っています!

参加いただいた皆さん、ファシリテーションを担当してくれたまめさん、ありがとうございました!!

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