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本はまるで目次のように、あの時の私のことを教えてくれる

「断捨離」「ミニマリスト」が評価される昨今において、私は物欲を抑えられない人間だ。その中でも特に本は我慢できない。と言いつつ、私はけして読書家というわけではない。

昔引っ越しをした際にはたくさんの本を処分した。整理と仕分け、処分にかかった時間と労力。「余程のものじゃない限りもう本は買わない」と心に決めた。だけどその決意は長く続かなかった。

電子書籍に移行しようとしたことは何度もある。薄いkndleを持ち歩いて読書する人の、その軽やかさに憧れた。図書館を利用し、購入という選択肢しかない時には手に取らないであろう本との出会いを楽しんでいる人を見ると、なんて賢く豊かなんだろうと羨ましく感じた。
お金はかかるわ、物は増えるわ。期限があるわけでもないので、読んでない本も数えきれない。本が好きなフリをしているだけのような気もして、一人で恥ずかしくなったり情けなく思ったり。本との間にはいつも少しだけ申し訳なさがつきまとっていた。

そんな私の家に今日も本が届いた。最近ハマっているpodcast「over the sun」のパーソナリティの一人であるジェーン・スーさんの本をいくつか購入したのである。ラジオの中でいろんなことを赤裸々に語る姿が魅力的なスーさん。あるときは近所のおもろいおばちゃん、そしてあるときはとても繊細な女性。まるで子供のようにはしゃいでいると思ったら、次の瞬間にはさっぱりと仕事のできるいい女に。コロコロ変わる口調、声色、視点や思考。その全てに”表現者としての魅力”がたくさん垣間見えて、本当に面白いのだ。(さらには番組のコンセプトも、堀井美香さんとの掛け合い、互助会の皆様の文才も最高)

このラジオの魅力はまたどこかでじっくり語るとして。今回届いた本は6冊。5冊はスーさんの本。あとの1冊はラジオの中で紹介されていた、アーネスト・ヘミングウェイの『老人と海』である。本当はスーさんの本を全部買おうかと思ったのだが、流石に買いすぎかなと心の物欲ブレーキが作動しここまでに落ち着いた。

積読はどんどん溜まっていく。自分で購入しておきながら最初はそれらに罪悪感を感じていた。だけどある日、この積読たちはまるで私の心の動きを表しているようだと気がついてからはすっかり気楽になってしまった。
純文学ばかり読んでいた学生時代。そこから徐々に女性の強さや着物を着た女性の美しさが強調されるものが多くなり、芸術的な美学の匂いがするものにのめり込んだ。かと思ったら反動なのか軽く読めるエッセイが増えてきたり、雑誌や映画で影響されたものが増えたり、民藝、食、旅、デザイン、人間関係、コロコロと読みたいものが変わっていった。

本の内容だけじゃなく読み方だって変わっている。マーカーを引いてメモを残していたり、付箋にメモを書いて貼り付けたり、また読みたいページの端を折ったり、好きな文章に細長い付箋を貼り付けまくったり。一気に読んだものもあれば、何冊かを同時並行で読んだものもある。朝読むもの・夜読むものと決めていたり、電車のときはこれと決めたり。読み返した本もあれば、読みかけで止まってしまったものもある。今それらの道のりを辿れるのは本を買い、蓄え、そして積読をしているからだ。

本の装丁、読んだ時期、買った場所、もらった人、買った理由。いろんなものがそれぞれ思い出せる。そしてそれが今の私の背中を押すことだってあるのだ。積読を見ればいつだって、本を手に取った時に抱いていた感覚を思い出せる。それが「また純文学を読みたい!」というものでなくてもいい。「何かに興味を抱く心がそこにあった」という、それだけでいいのだ。

そして面白いことに、流行が回るように興味も回る。というよりも、いろんなジャンルの本を買っているようでいて、私の興味の本質は全てに通じているようにも思えてきた。今度はそんな視点で積読を眺めてみるのも面白いかもしれない。

本を読めるかもわからないのに購入し、積読を増やし続ける自分をダメだダメだと思っていたけれど、案外悪いものでもないと思えるようになった。積読はノルマにあらず。私の興味の軌跡であり、道標なのである。と、鼻息荒くし語る私がいま興味を持っているのはライティングの哲学や文豪たちの文章への向き合い方、「書く」ということへ目を向けた本たち。なんと私の興味が反映されていることでしょう。

きっと未来の私は思っている。
「ああこのとき、noteを"書く"ということに興味を持ったんだな。」
本は私の人生の目次。今は人生の何ページ目だろう。人生という本棚が埋まるとき、たくさんの目次たちに埋もれていたいなと、今から積読が楽しみである。

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