味噌汁とヒーローとまどか

一人暮らしを始めてもう14年目に突入しようとしている。
地元で過ごした年月と地元を離れた年月が近づく度に、自分はどちらの人間なのだろうかとふと思う。

14年目で通算3回目ぐらいのワカメと豆腐の味噌汁を作った。平凡な味がした。
外で食べるよりも数段劣る味噌汁をすすりながらぼんやりと70年代に放送されたバラエティ番組を眺める。
あの頃とは違う薄っぺらなテレビの中でヒーローは今日も輝いていた。

新型コロナウイルスでコメディアンの志村けんさんが亡くなった。
仕事の合間に飛び込んできたニュースを聞いて愕然となった。

志村さんは僕のヒーローの一人だ。
どんぴしゃな世代ではないけれど。
親からはくだらないから見るなと言われながら、隠れて見た志村さんは子供の頃からのヒーローだ。

ヒーローだけど感覚は超面白い親戚のおじさんみたいなそんな感じ。
会って話すなんてきっと出来ないだろうけど、いつか生で見てみたいと思う人だった。

仕事をしながら色んな思いと感情で心の中がぐちゃぐちゃだった。
耐えきれなくて休憩中のトイレで涙が溢れた。

帰宅しながら音楽を聴いた。
FINLANDSというバンドの「まどか」という新曲。
今の自分のヒリヒリとした心にじんわり染み込んできた。

泣いて抱いて当たり前を願わせてよ
崩れた時代じゃあなたさえ祈れないのか

当たり前が当たり前じゃなくなった今わかる当たり前の大切さ。
ヒーローがいつものようにみんなを笑わせている。
いつものようにあまり美味しくはない自炊の料理を食べる。
そんな当たり前が今とても愛おしい。

14年間で通算3回目のワカメと豆腐の味噌汁は、ワカメの量が多すぎてまだ鍋に残っている。
昨日よりワカメが増えている気がする。
味の濃くなった味噌汁をすすりながら少し軽くなった心で、今日もスーパーヒーローが活き活きとみんなを笑わせているのを見ながら子供のように笑った。

#志村けん
#FINLANDS
#ひとりごと

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