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「この町は、公園もあって育てやすいわ」 やかましわ!

幼少期からポジションを必要以上に気にする子供だったかもしれない。いや、俺の地域ではみんな気にしていた。
具体的に説明すると、「どうしたら、優位に立てるか?いじめられずに済むか?」ということ。

地方ベットタウン・育児特区は、周辺に大人が楽しむ娯楽施設がなく、生活に必要最低限なお店(床屋、塾、スーパー)しか存在しない。

このような環境下で育つ子供たちは、価値観や思考を深く・広く持つことができない。教えてくれる場所や人がいないから。(駅前でワンカップ大関を飲んでる人・路上アーティスト・如何わしい店のキャッチ・多文化なレコード屋・非商業的な本屋)
一見、同じ価値観の人間が集まっていると聞くと、安穏なユートピア的な場所を想像するが、それは大間違い!
自分の想像力から少しでも逸脱した行動をとる奴は周りから孤立する。
村八分と同じ原理。

そして、娯楽がない分の楽しみいえば、人の悪口とイジメの2つ。イジメに関してはエンタメ化され、(同じ人をイジメても面白くないのか?)イジメられる対象がコロコロ変わる。


ある日、俺の小学校に黒人の女の子が転校してきた。名前は、ジャリス。
彼女は、転校初日からおぼつかない日本語で会話を試みるが、前例のない明らかに見た目の違う彼女を周りは容易く受け入れることはなかった。
最初は無視される程度であったが、日が増すごとに黒いとか唇が分厚いとか彼女の容姿へのイジメと発展した。彼女は廊下でよく泣いていた。
でも誰も手を差し伸べなかった。自分のポジションが大事だから。
ポジションは、防波堤の様なもの。一度欠壊すると、取返しがつかないことになってしまう。
そして、彼女は半ば追い出されるような形でこの町を去っていった。


育児特区とされる町は親にとっては育てやすい場所かもしれない。
しかし、子供にとっては大いに育ちにくいのだ。(ベルトコンベアーに乗せて一定のモラル性をもった同じような人間を社会に納品するなら別だが。)

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