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阿久根 旬のてしごと

最近、めっきり買い物をしない。周りに店がないせいもあるが、必要以上の洋服は欲しないし、体験や見学に行った際に食材をいただくことが多い。 

衣・食・住が整い、生きていくに困らないことに感謝しつつも、試作を待つ熟れすぎた大量のミニトマトに少しの焦燥感を感じながら、玄関の戸を開けた。



今日は、一年に2回、地域のおかあさんたちが仕込む、「味噌作り」体験だ。おかあさんたちは、自分たちが使う半年分のお味噌を、自分たちで仕込む。

まずは、大麦の処理。

流水で洗い、とぎ汁が濁らなくなったら、ひととき浸水させておく。

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しっかりと水分吸いこんだ大麦を、手のにぎり加減で固さを確認。蒸し窯で蒸していく。

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100kgという大量の麦を、3度にわけて、徐々に蒸していく。

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1/3量の蒸された麦を、スコップでかき混ぜる。この上に麦を乗せ入れ、さらに蒸すため、均一に蒸せるようにだ。蒸し上がった麦は、ずっしりと重く、体力勝負だ。

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発酵専用の真空機に移し、人肌に冷ます。蒸し上がった大麦はぷるんぷるんの触感。熱気に覆われながら、しゃもじでおかあさんたちは素早く広げていく。

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真空状態で急冷された麦に、麹を混ぜていく。100kgの麦に、たった100gの麹菌。黄色い。

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全体をよく混ぜる。これがまた地味に一苦労。おいしくな〜れおいしくな〜れと声をかけ、混ぜ終えた麦はこのまま、一晩発酵させる。



2日目。

作業に入る前に発酵機をちらり。

ほのかに麹菌が麦の周囲に白い綿毛を咲かせている。今回は、麹の花は控えめ。

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口に含むとほのかに甘い後味。

酒粕のようなバナナの皮のような甘い香りが口の中に広がる。むふふ〜美味しい味噌になりそう。


今日は、前日からつけておいた大豆の水切りから。

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蒸し器で蒸していく。

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湯気の立ち込める窓際が、朝の光と相まって、みょうに美しかった。


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蒸し上がった大豆をざるにとり、空気をいれるように手でほぐし、冷ましていく。

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ミンサーでつぶす。

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さらに細かく、ほぐす。ほぐす。ほぐす。

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攪拌機に発酵した麦、塩、ほぐした大豆を入れ、攪拌。

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ほどよく攪拌され、フレッシュな味噌が完成。

まだ、色も淡く、よくよく見ると、大豆の黄色い粒が残っている。

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ここから1週間常温で寝かせ、味噌として食べられる。寝かせれば寝かせるほど発酵が進み、味わいは深くなるそうだ。



おかあさんたちのこのお味噌は市販のお味噌より甘く、塩味も弱く、やさしい味わいだ。

できたての味噌を両手に抱え戻り、味噌の名前の由来が途端に気になり、その足で調べてみた。味噌の「噌」は「さわがしい」って意味だった。

騒がしい味。。

塩味、甘味、旨味、たしかに色んな味わいがあって、味噌はフレンチのソースでもコクだしや深みにも使われる。

昔から地域には「もえ」と呼ばれる寄合がある。今も、呼び名や形は変われども、助け合いながら地域の人は暮らす。

味噌作りは、材料もシンプルで、工程もさほど多くはない。けれど、量が多くルーチンの体力勝負の作業は、連携プレーが必須だ。

もえのように、味噌を作りながらおかあさんたちは色んな事を話す。自然にそこには、相談、励まし、笑い、楽しみが生まれ、そして側には持ち寄りの赤飯、ちまき、つけもの、お茶が在る。

色んな味わいの人柄や人生が在って、それがまるごと味噌に詰まっている気がした。区域ごとそれぞれに、おかあさんたちが仕込む味噌は、阿久根だけでも何種類もある。それぞれに味わいが違うのも面白い。


小さい頃は味噌汁の最後に残る麦が嫌いだった。でも最近は、飲み干す最後の愉しみだったりする。

今日も、いちにち ごちそうさまでした。




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