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ポッドキャストの方程式

こんにちは。アライ@翻訳です。

これは、読んでもらうために書いている文章ではなく、聴いてもらうための文章です。音声版を同時配信していますので、そちらを是非お聴きください。リンクはこちら

さて、前回の配信では「音声版とテキスト版の違い」についてお話しました。その中で少し、ポッドキャストのオンラインコースを受講しています、という話をしたんですが、今回はそこで学んだ「ポッドキャスト作りの方程式」について、お話したいと思います。

1.ストーリーテリングタイプのポッドキャスト

そもそもポッドキャストって、いろんな作り方のタイプがあるというのをご存知でしたか?以前の記事でもまとめたんですが、大きく分けて7種類あります。

1.パーソナリティーがゲストを迎えて話すインタビュータイプ
2.一人で話す、一人喋りタイプ
3.決まった2人のパーソナリティーのおしゃべりでお送りする会話タイプ
4.複数人が討論形式で進めるパネルディスカッションタイプ
5.事件や事象を深堀する、ノンフィクションストーリーテリングタイプ
6.昔で言うラジオドラマ、フィクションストーリーテリングタイプ
7.動画やTV番組を音声版にした、コンテンツ再利用タイプ
詳しくは、こちらの記事からご覧ください。(テキスト版音声版

その中でも、今回の方程式は、事件や事象を深堀するストーリーテリングタイプで教わった方程式です。ポッドキャストの革命児とも呼ばれるAlex Blumberg(アレックス・ブランバーグ)自らが教えてくれました。

2.方程式

その方程式とは

I'm doing a story about X 
It's interesting because Y
X についての話をしています。
それが面白い理由は Y だからです

ちょっと中学生英語みたいな訳になってますが、スムーズに言い換えるとすれば、「Yが面白いから、Xについての話をしています」という感じでしょうか。いずれにしても、とってもシンプルですよね。

この方程式の使い方も簡単です。まずは、このXとYに自分が作るポッドキャストの話やストーリーを具体的に入れてみます。できた方程式を他人に伝えたときに、「おっ!続きが知りたい!」と思わせたら正解、「別に、興味ない」と思われたら不正解、というわけです。

3.方程式の意味

この方程式を使う理由は、そもそも自分が作るポッドキャストが、他人が聴きたいと思う視点や切り口を持っているのかどうか?という判断材料になるから。

これはポッドキャストに限りませんが、普段人と話をしていても、オチがあって喋り上手だなと思う人って、起承転結があって、ちゃんと話のスジが一本通っていますよね。その一本通ったスジあるから、例えば誰かに途中で話を邪魔されても、大勢の会話の中で話が別の方向に行ってしまっても、必ず話を自分の方向に戻せる力がある。

その一本通ったスジが、このXとYの方程式なんです。

ポッドキャストは世の中に85万もの番組が存在します。その中でも、実際に話をグダグダしているものって実は結構あるんですよね。それが味だからいい!という番組ももちろんあるんですが、ストーリーテリングタイプでグダグダやってしまうと完全に「不正解」。

4.方程式 解答例

それでは、早速方程式の解答例を使いながら、具体的に使い方を説明してみたいと思います。今回は、オンラインコースの中で出てきた例を使って紹介していきます。

まず、「芸術家を紹介するポッドキャストを始めたい」とします。単純にその人の描く絵がきれいだから紹介したい場合、シンプルに方程式に当てはめるとこんな感じ。

<解答例1>
〇〇さんという芸術家を紹介する話をしています。
それが面白い理由は、〇〇さんの絵がきれいだからです。

「ふーん」って感じですよね。もちろん、この芸術家のファンの人なら聴きたいと思いますが、芸術に普段興味のない人からすると、特に心を惹かれません。

それでは次に、紹介したい理由である「絵」について少し掘り下げたいと思います。なぜ、綺麗だと思ったのか?例えば、油絵の技術が独特だから、色合いが他の芸術家では出せないから、自然がテーマでリラックスできるからとか…これを方程式に当てはめてみると

<解答例2>
〇〇さんという芸術家を紹介する話をしています。
面白い理由は、〇〇さんの絵は他人には決して真似できない唯一無二の芸術だからです。

こんな感じ。最初よりは少し具体的になりましたが、それでもしっくりきません。理由としては、芸術家って誰でも唯一無二の作品を作り上げてるから、特別感が全くないんですよね。あえて、このポッドキャストを聴いてみようという理由にはならない。

それでは、この芸術家がなぜ、人の心をとらえるような絵を描けるのかどうか?を掘り下げてみます。例えば、その人の生い立ちや絵に興味を持った理由、子どものころの思い出なんかを調べてみたとします。そこで分かったのは、実は離婚歴もあって、心身ともにズタボロ、人生のどん底を何度も経験し、そんな人生の転換期に実家に帰っては家庭菜園でトマトを育てながら、裏山を見ながら絵を描いたのが始まりで、今でも自然がテーマの絵を描き続けているとします。(あくまでも仮定の話)

<解答例3>
〇〇さんという自然をテーマに絵を描き続ける芸術家を紹介する話をしています。
面白い理由は、〇〇さんのズタボロ人生があんな綺麗な絵のルーツだからです。

どうでしょうか?「えっ?ズタボロ人生なの?」とちょっと気になりませんか?人間って、どうしても他人の不幸が気になる生き物なんで、まさかあの綺麗な絵画の裏にドロドロした過去があったとは…となると、ワイドショーと同じような感覚でちょっと知りたくなるんです。

5.解答例 解説

ここで、最後の解答例を最初の2つの解答例と比較してみると、実は2つほど利点が出てきます。

1つ目は、視聴者の幅が広がっている事。最初は芸術好きな人ぐらいしか聴かないだろう、という話だったんですが、最後は芸術に特に興味のない一般人、しかも他人の不幸が気になる人だったら誰でも聴いてみたくなるものになりました。

またもう一つの利点としては、ポッドキャストの作り手側にとっても、一本通さなきゃいけないスジが明確になっているので、話が組み立てやすいという事。例えば、実際にその芸術家にインタビューをする場合、表面的な質問ではなく、その芸術家の歩んできた人生のどの部分に焦点を当てて質問をすればいいのかが明確になります。作り手にとっても、効率的に、ピンポイントで、ポッドキャストに収録したい欲しい答えが見えてきます。

6.Yをしっかり見つける

今回、この方程式を勉強したオンラインコースでは、最後の解答例を元に、モデルインタビューの実施と、その音源を元にしたポッドキャストの制作というデモンストレーションが行われました。

このコースの参加者には、ポッドキャストを今から始めてみたい人も多くいて、実はアイデアも既にあったりするんです。「こんなのを作りたい!」という方程式のXの部分はあるんですが、自分も含めて実は次に来るYがピンと来ていない人も多かったんです。

聴いて面白いと思ってくれる視聴者に向けてポッドキャスト作りをすること。これが、方程式のYの存在なんだと思います。

6.最後に

今年から始めたポッドキャストのPR活動も、今までは、人が作ったポッドキャストのおすすめや、翻訳プロジェクトなどから始めていましたが、作り手側の視点を勉強する事で随分とポッドキャストの聴き方が変わりました。

今、私自身もこの方程式のXとYをひねり出している真っただ中です。ここから、ストーリーテリングタイプのポッドキャストを自分でも制作していきたいと思います。新たなプロジェクトの始まりです。

それでは、次回のnoteで。

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