桜と神様と千年の恋(58)

「え⋯⋯?」
 声が震えた。
「お別れ⋯⋯?」
「そう。私達の恋人同士の期間は、これでおしまい」
「咲耶⋯⋯。なんで⋯⋯っ」
 思わず、咲耶へと手を伸ばすが。
「!」
 その手は彼女をすり抜け、空を切るだけだった。
「ね? こんなの、不毛でしょう?」
 咲耶は自嘲する。そうだ⋯⋯コイツには触れる事が出来ないのだ。
「ごめんなさい⋯⋯。本当は、キミの前に現れるべきじゃなかったの。前回だって、私の事思い出すのに時間がかかったのに⋯⋯。力が、強くなるはず無いのに⋯⋯」
「咲耶⋯⋯」
 コイツは、心のどこかで期待していたのだ。俺が、今までの記憶を持って生まれて来る事を。初めて逢った日の事を覚えている事を⋯⋯。
「もっと、離れたところに行くべきだった⋯⋯。思い出なんかに縋るんじゃなかったのに⋯⋯」
 咲耶は今にも泣き出しそうだった。それが初めて見る、彼女の弱さだった。
「⋯⋯そろそろ行くわ。アイツにトドメを刺さないと」
 そう呟いて、重い足を一歩踏み出す。
「咲耶⋯⋯待ってくれ!」
「⋯⋯⋯⋯」
「俺は⋯⋯お前が好きな俺じゃないのか⋯⋯?」
「⋯⋯⋯⋯」
 答えに迷っているようだった。
「記憶を持ってない俺のことは、好きになってくれないのか⋯⋯?」
「それは⋯⋯」
「俺だって⋯⋯俺だってお前を助けたい⋯⋯! お前の力になりたい⋯⋯!」
「⋯⋯⋯⋯」
 咲耶はギュッと目を瞑ると、小さな声を上げる。
「⋯⋯必要ないわ」
 そして、俺に背を向けた。
「そもそも、どうやって戦うというの?」
「それは⋯⋯」
 言葉に詰まる。影と戦う事が出来ない俺は、ただ見守ることしかできないのだ。
「お前だって、その刀でどうやって⋯⋯」
「大丈夫。今までずっとひとりでやってきた。これからだって⋯⋯なんとかなるわ」
 ふと、声が柔らかくなる。
「キミも、私が守るから」
 そう言って、咲耶は消える。舞い散る桜の花びらを残して。ひとり、公園に残されてしまう。
「待っ⋯⋯っ」
 思わず震える右手を伸ばす、が⋯⋯。無力故ににどうすることもできない⋯⋯。

 好きな人を守るさえ事も――――。

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ラノベ系小説書きです。 有料なしでちょっとずつ更新してます。 よろしくお願いします。
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