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灰崎凛音の小説まとめ

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オリジナル小説を纏めたマガジンです。 掌篇(ショートショート)から短篇、ちょい長め短篇まで取り揃えておりますので是非ご一読ください。 ※各小説タイトルに文字数を記しております※
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掌編小説「彼みたいな彼女からの手紙」(約750字)

掌編小説「彼みたいな彼女からの手紙」(約750字)

「何も恥じることはない。
 何も後悔する必要性もない」

 その手紙は、俺への挨拶も何も無く、ただこう始まった。

「俺も昔は、『まだ若いんだから、いくらでもやり直せるよ!』といった言葉を無責任に投げつけられるのがクソほど嫌だった。
 だってそいつらに俺の、そしておまえの何が分かる?
 分かるわけがねえんだ、尺度はマジで人それぞれなんだから。

 元カノと今カノが鉢合わせた瞬間を『人生最大のピンチ

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連載小説「おっさんJCりーりのブルース」第3話(約2600字)

連載小説「おっさんJCりーりのブルース」第3話(約2600字)

03:何これ脅迫? はてさて、ワタクシがですね、ホームルーム終了後に担任教師に名前を呼ばれた時、これ完全に不意打ち、誰々さんや何々さんのように部活に打ち込んでいるわけでもない俺は、とっとと学校鞄を背負って、今日は何のマンガ買おうかなと思いを馳せる程度に茫洋とした状態だったわけであり、担任が、

「篠崎、ちょっといいか」

 と言って寄ってきた時はぎょっとせんばかりに飛び上がった、垂直跳び二センチ。

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連載小説「おっさんJCりーりのブルース」第2話(約2400字)

連載小説「おっさんJCりーりのブルース」第2話(約2400字)

02:友情諦念賛歌 ん、そうこうしている内に授業が終わる。面倒な時間の到来だ。私もね、決して争いごとを好むような人間ではないのです、ただただ疑問に思うのです、何故一緒に便所に行かにゃならんのか、机くっつけてメシ食わにゃならんのか、とかな。つまり俺にとっての休み時間とはこれ即ち授業中、うん。

 あっはっはーい早速お友達の何々さんと誰々さんがママお手製の弁当持って俺の机に向かってくるぜ! いや便所、

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連載小説「おっさんJCりーりのブルース」第1話(約2400字)

連載小説「おっさんJCりーりのブルース」第1話(約2400字)

01:見た目はJC、中身はおっさん! え、それ俺やん つかね、こんな俺にもね、それなりの苦労ってやつがあるんよ。あ、思わず俺って言っちゃったけど私ね、女です女。
 いや、俺とか言いたくなる苦労っぷりだわ昨今。なんかさー、いつまでこの『女子中学生』なる身分、そう身分に甘んじることになるのかと。ん、いや、俺今二年だから実質あと一年三ヶ月ってのは、ね、分かってるんです頭では。しかしですよ、卒業という名の

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短篇小説「遁走者の顛末」(約5700字)

短篇小説「遁走者の顛末」(約5700字)

 初めに、雲があった。

 二年前の夏、眠りから覚醒したような、或いは天から不本意に産み落とされたような感覚を味わいながら、俺は茫洋と真上を向き、曇天の中少し目立つ白い雲を阿呆面で眺めていた。そうこうしている内に唯一の白い雲が消え、空が突然号泣するかのように雨が降ってきて、それでも微動だにできなかった俺の腕を初老の男性が掴んで『何しとるんじゃ! 風邪引くで!』と言いながら車に乗せてくれた。
 それ

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掌篇小説「DIGNITY 〜彼の信条〜」 (約1500字)

掌篇小説「DIGNITY 〜彼の信条〜」 (約1500字)

 どうして僕がかくも理不尽に糾弾されなければならないのか、全く理解が追いつかなかった。

 連中の言い分は、合衆国の平均値以上の知能指数を持ち合わせているとは到底思えないほど愚にもつかないもので、何をどう議論し誰がどうやったらあのような結論に帰着するのか、僕には分からなかった。分かりたくもなかった。

 この州のトップの面々はおろか、フェデラルのご老体共までもが、そして他方でその辺りのストリートを

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