香田 凜

つれづれなるままに。

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最近の記事

読後感#7 珈琲の世界史

 珈琲の発祥から、現代のサードウェーブまでの生産者、消費者両面をバランス良く描いた書物。詳細は本書に任せるが、概略は次の通りだ。  アフリカ大陸で生まれたコーヒーノキは、スーフィーらによってイスラム圏で15世紀にコーヒーとして編み出される。大航海時代とも相まって、地中海や大陸を通ってイスラム圏からヨーロッパに伝播する。紅茶のイメージが強いイギリスでは、いち早くコーヒーが広がった。その理由が面白い。それまではアルコールを飲んで酔っ払って政治論談を繰り返す中産階級たちが、素面でか

    • 読後感#6 アカマイ 知られざるインターネットの巨人

      IT業界やインターネットに詳しい人であれば聞いたことであるだろう、アカマイという会社を、初めて知った。 本書でも述べられているが、インターネットとは、”ネットワークのネットワーク”という語源を持ち、個別のネットをつなげたものだ。そう、ネット間の情報通信によって、私たちは情報を得ている。その情報の通信方法は、現在TCP/IPというプロトコル(約束事)で決められて動いている。要点は、末端機器・端末がデータを保証する、という点だ。ネット間をつなぐルーターは、複雑な処理を行わず、決め

      • 読後感#5 珈琲の表現

         はじめて「珈琲だけの店 カフェ・ド・ランブル」に訪れた。銀座の名店だ。コーヒーといえば、獲れたて、煎れたて、挽きたて、淹れたてが美味しい飲み物であるが、カフェ・ド・ランブルでは貯蔵(エージング)して何年か寝かせたオールド・コーヒーを取り扱っている。店主曰く、『ものによったら長期寝かしたほうがいい豆だってある』『人は20年目で味が変わってくるような珈琲豆に出会ったことがないのであろう。』 私はメニューを渡され、好みを聞かれた。深煎りコーヒーをブラックで飲みたいと申し出ると、

        • 読後感#4 IT全史ー情報技術の250年を読む

           腕木通信、電信、ラジオ、テレビ、パーソナルコンピューターと、情報通信・情報技術の遷移が紹介されている。近代的な情報通信の本質とは、手紙や紙のメモといった手にもてる媒体を通して伝達する方法から、手に持てない媒体を通して伝達する方法と考えると、腕木通信がその嚆矢となる。考えてみれば、今のコンピューターもデジタルなビットで情報をやり取りしており、その近代的な方法には250年も経とうとしているのだ。一方、インターネットの大衆への伝播の歴史を見ると、50年も経っていない。過去を見渡す

        読後感#7 珈琲の世界史

          読後感#3 わかりやすい民藝

           去年から、備前焼、益子焼、常滑焼、瀬戸焼、唐津焼など焼き物の窯元をめぐることを趣味にしている。焼き物にはまる前は、器の色は地味だし、面白みがないものだと思っていた。しかし、よく見ると形や色は複雑かつ多様で、なぜか惹かれてしまうのである。民芸品、工芸品、いろいろな呼び名があり、柳宗悦の本を数冊読んでその違いを考えたことがあったが、なかなかわかりにくい。今日紹介する本は、そんな民藝の歴史をわかりやすく説明してくれる。  本書の著者は、福岡市の大壕公園近くの工芸店「工藝風向」の

          読後感#3 わかりやすい民藝

          好みとコーヒー 「美味しいコーヒーって何だ?」読後感#2

          手動ミルをくるくると回す。できるだけ均等に挽けるよう、回転速度は変えない。ネルフィルターに挽きたての粉を落として均す。ポットの温度は90度。まずは全体を湯に通し、若干蒸らす。アロマの香りを楽しみ、少しずつ、少しずつ湯を注ぎ、液体を抽出する。いつも使っている備前のカップに注ぎ、一口目を楽しむ。敏感なうちの舌触りや風味を感じる毎朝の楽しみは、コーヒーに限る。 Youtubeのコーヒー動画を見たり、Amazonで器具を買ったり、オンラインショップで珈琲豆を買ったり、見よう見まねで

          好みとコーヒー 「美味しいコーヒーって何だ?」読後感#2

          インターネットの錯覚ー「僕たちのインターネット史」読後感#1

           95年生まれの私が、インターネットを手に持ったのは大学生になってからだった。高校時代はガラケー、家にはパソコンはなかったけれど、何ら問題もなく不自由せず暮らしていた。と、書いてみると、まるで貧乏な家で育ったかのように思われるかもしれないが、地方出身で大学生になって初めて一人暮らしを経験した同世代にとっては、こうした境遇を理解いただけるのではないかと思う。もちろん、同世代の中ではインターネットを経験するのは遅いほうだし、少し誇張も含んでいるかもしれない。  何が言いたいかと

          インターネットの錯覚ー「僕たちのインターネット史」読後感#1