見出し画像

アカデミック読書会(第31回) 開催レポート - オランダの黄金期 -

読書会概要

9/23(木)のアカデミック読書会では、イマニュエル・ウォーラーステインの『近代世界システム I』を課題本とし、「アムステルダムはどのようにして「世界経済」の中核となったか?」をテーマに対話しました。

今回のテーマにある「アムステルダム」は、小国であるのも関わらず、なぜ世界経済の中核になれたのか ― それはオランダが穀倉地帯であるポーランドとバルト海沿岸の木材を押さえていたことにあります。特に木材によって造船が可能になったことから、オランダは国外と貿易し栄えました。対照的に、大国スペインは投資先を国内に集中させ、経済政策を誤ったことで衰退し、インフレーションも起こったことから、最終的にはデフォルトします。イタリアは高級品市場を選択したことや、食料・木材の不足、ペストによる人口の減少のために勢力を失っていきます。

こうした状況下のなか、オランダは黄金時代を迎え、世界経済の中核になります。さまざまな状況をかんげるとオランダの繁栄は、地の利と周りの国々の経済政策の失敗や疫病などの災害という幸運によるものが大きいのかもしれません。

今回の読書会では、日本にもなじみの深いオランダ史について対話することができました。ご参加されたみなさまには厚く御礼申し上げます。

読書会詳細

【目的】
・アムステルダムについて深く知りたい
・第4章の内容を見通したい
・自分にはない見方を得たい
・世界経済の知識を得たい
・経済の中心とは何をするところか知りたい

【問いと答えと気づき】
■Q
・ウォーラーステインのいう「世界」はどこまでなのか?
・この本を読む現代的意味は?
■A
・直接的な答えはない
・今の資本主義世界を生きる私たちにヒントを与えてくれる
■気づき
・現代の日本や、当時の日本との関係は? ということに疑問を持った

■Q
・成立期の世界経済は格好の獲物だった
・誰にとって格好の獲物か?
・革命(ネーデルランドが中核になった革命)の進行と宗教、カルバニズムが遂行していった
・党派を形成したのは宗教に他ならない→裏付けがない
・ネーデルランド革命はブルジョワ革命だった→いまでいうブルジョワ(資本家階級のこと?)だったのかわからない
■A
・書いてない
■気づき
・第4章は、検証しようとするとき引用を持ってくる、そういう論調だと気づいた
・教わらなかったことを気づいた

■Q
・オランダに地中海からヘゲモニー(経済の中心になったエリア)が移ったのはどういう背景があったのか?
■A
▼16世紀
・地中海:食糧不足、木材の不足→船が作れない=競争力がない
・アムステルダム:食糧不足、木材の不足にアドバンテージ、ポーランド(穀倉地帯)、バルト海(木材、貿易)が利用できた
■気づき
・オランダの商人が面白い人たちだったのではないか
・宗教的には寛容、いろんな人種がいた(多様)→商い道で身を立てる

■気づき
・オランダが発展した:ウェーバーの説(プロテスタントが資本主義をドライブさせたから、禁欲的に働いた)
・プロテスタントが寛容であるから発展した(面白い視点)
・他者に対する寛容さと自分に対する寛容さ(内面的には禁欲的だが)
・実感と隔たりがあった(ウェーバーの説に驚いた)

■Q
・17世紀のオランダにおいて、生産と通商と金融、どこに記述されているか?
■A
▼スペイン
・スペインが没落の要因→投資先が国内に向かった(土地に向かった)
・外国人の金融業者が大きな役割を果たした→自滅の道をたどった
・人口減少
▼オランダ
・バルト海貿易の中心になった(穀物の供給)
・漁業と造船業が発展した
・北イタリアが中心になれなかった理由:生産コストが高かった
→オランダは安く生産できた、輸入品を安く押さえた
■気づき
・経済の動きがポイント

【対話内容】
■プロテスタントと資本主義
・プロテスタントでもいろいろ派がある。
・信仰の教義は厳しい、それを信仰している人の生活はそれに沿っているわけではない
・文化的な仏教徒=文化的に仏教徒である
・世俗外:厳格な教義に従う
・世俗:自分で納得できる考えが出てくる(与えられた仕事を天職と考える)
・学校の先生:労働者と定義する⇔聖職、どんな職業も天職なんだという考え方(日本人でも持っている)
・ぜいたく品を買わずに貯める→資本の蓄積になった→資本主義の拡大

■オランダなぜ世界経済の中核になったのか?(イタリア・スペインとの比較)
・イタリアとの比較:労働コスト(イタリアは高い)、価格優位性でイタリアは負けてしまった
・イタリアは高級品市場を相手にしていた
・スペインは自ら没落していった、スペインハプスブルク家の借金
・スペインは投資先を国内に向けた(交易に向かわなかった)
・金などが海外に流出した
・インフレが起こった→経済にダメージを受けた
・最終的にはデフォルトしてしまった(現代のギリシャと同じ)
・政治的に拮抗している(1648年:ウェストファリア条約が結ばれる→30年戦争を収めた、国家の枠組みができた、オランダの独立が認められた)
・経済的な優位性:食糧供給の市場、造船技術の発展
・凡庸な政治家が力を持ってしまったから
・オランダが発展したころには、スペインは没落していた(借金が返せない)
・スペインはオランダに対して文句が言えない
・オランダは州の力が強い⇔イギリスは中央集権的な政府を作っていった
・オランダは自由が浸透
・イギリスは集権的、民間の強制力が働かなかったのか?
→重商主義政策、資本を蓄積した
・オランダは、スペイン・イタリアが没落したから、発展した
・オランダは運的な要素を使うセンサーが敏感だった
・オランダは時代を読むことができた
・イタリアは人口が増えなかった(人口が増えなかった)

【気づきと小さな一歩】
気づき
・スペインやイタリアの経済政策の失敗、自滅の道→一時的にオランダから覇権を得た
・建築物にお金を使ってしまった、無駄な投資をしてしまった、ROIの高いところに投資する
小さな一歩
・投資について深堀したい(歴史から考える投資教育)

気づき
・オランダが栄えたのは物流の拠点になったから
・人流があったからも大きい(情報の流れがあった)
小さな一歩
・商人のエートスを学べる書籍を読む

気づき
・世界経済を考える際の要素を知ることができた
小さな一歩
・書籍を手に取って読む

気づき
・棚ぼた的にオランダが栄えた
・スペインやイタリアがそのままだとしたら…、オランダはどうなっていたのか
・オランダがダイバシティがあるのは、歴史的な背景がある
小さな一歩
・プロ倫を読んでみる

気づき
・サブタイトル:帝国の挫折
・ネーデルランドはスペインの領土だった、政治的拮抗の中でオランダは漁夫の利を得た
・帝国の挫折としてとらえるのではない、世界経済と世界帝国は別
小さな一歩
・現代的な解釈を加えず、著者の時代の文脈で読む

【次回の読書会のご案内】

開催日時・場所:2021年10月14日(木)20:00~21:30 @ZOOM
テーマ:イギリスやフランスはなぜ「世界経済」の中心地になったのか?
課題本:イマニュエル・ウォーラーステイン著、川北稔訳『近代世界システムI ― 農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立 ―』 (岩波現代選書、岩波モダンクラシックスは『近代世界システムII』)
※「岩波現代選書(岩波書店)」「岩波モダンクラッシックス(岩波書店)」「新版(名古屋大学出版会)」どれでもOK
詳細・申込み


この記事が参加している募集

イベントレポ

最後まで読んでくださった方ありがとうございます。よろしければサポートいただけますと幸いです。本を買い、noteを書き続け、読書文化の輪を広げるために使います。