リクルートの学び

「抽象化」をクセにしよう (データサイエンティストが学ぶビジネス その5)

はじめまして。
普段IT系の会社でデータ分析やシステムの開発・運用などをしているrilmayerというものです。

データ解析職として新卒で会社に入社してから3年目に突入したので、会社での学びを自分なりにまとめて共有していこうと思います。
自分が新卒の時に知っておきたかったことや、振り返ると重要だったなぁと思うことをいくつかテーマとしてピックアップして掘り下げていこうと思います。

今回のテーマは「抽象化をクセにしよう」です。

「なるほど」が早い人は何が違うのか

入社してから様々な人と話すのですが、ちょっと話しただけで「なるほど、そういうことね。じゃあこうするのが良いんじゃない?」となる人が多くいました。

当初は単に頭の回転が早いのかと思っていたのですが(もちろん頭の回転は早い)、彼ら彼女らの頭の中で何が起こっているんだろうと考えているうちに気付いたことがありました。

それは、「理解が早い人は抽象化を活用している」ということでした。
ということで今回の記事では抽象化とは何か、抽象化を活用する方法と、それによって得られる嬉しいことについて書いていこうと思います。

抽象化を行い、知識として蓄積し、具体に当てはめるそれを行えるようになるだけで仕事の進め方はまったく違ってきます。

抽象化で理解が早まる

抽象化とは何かということは他の記事に譲るとして、ここでは簡単な説明をします。
抽象化とは簡単に言うと、とある物事に出くわした時に「本質的な要素って何だろう?」を考えてラベルを貼ることを言います。

例えば、コップを例に考えて見ましょう。「コップ」という概念がなかった時、それを伝える時に何と伝えれば良いでしょうか。

「液体を貯めることができて、手に持つことができるもの」
「飲み物を入れておく容器」
「大きさが10c㎥くらいの穴のない入れ物で液体が入るもの」

というように、毎回面倒なコミュニケーションが発生しそうですし、そもそも自分の中で「木を掘って作った便利な液体を入れる飲み物に便利な道具」などといった認識しかできず他の「コップに該当する物」を認識するのに時間がかかってしまいます。
そこで、上記の例のように共通する事象を考えて「コップ」というラベルを貼ることによって、コップという事象の理解をサクッとできるになります。

そして、このような思考過程はビジネスの中でも多く出てきます。
以下では自分の経験を元にそうした思考の過程を振り返って見ようと思います。

複数のプロジェクトを推進する中で抽象化力をつける

自分は新卒のときに複数のプロジェクトを推進していました。時期によりますが、だいたい4〜5のプロジェクトを推進していました。
そうなると4〜5のプロジェクトに関わっていると、いくつかの共通する事象、そして重要そうなことが見えてきます。
例えば、一個前の記事「ビジネスという共通言語を身に着けよう」で書いている「各組織や職種では共通言語としての価値が存在する」というのは私が複数のプロジェクトに関わる中で抽象化をして発見した知識です。

その過程をちょっと振り返ってみます。

■個別具体事例
自分は複数のプロジェクトを進める中で以下のような事例に出会いました。

A. 一緒に仕事を進めているとあるマーケターは、やたらWebサイトへの新規訪問の話をする
B. 飲み会でお話をする営業さんは仕事の話をするとき、新規契約数に触れることが多い
C. システムの保守運用を行なっている組織に新規施策の話をすると、システムの安定稼働率を気にする
などなど・・・

■抽象化の過程(筆者の頭の中)
このような事象を前にして、以下のような思考の流れがありました。
ポイントは仮説を置いて、事実と照らし合わせる事です。

1(気持ち)進めやすい仕事と進めにくい仕事がある
2(事実)どの社員も何かを気にして働いており、それを把握できると仕事は進めやすい
3(気持ち)社員が気にしているものは何だろう
4(仮説)組織や職種ごとに気にする事には傾向があるかもしれない
5(事実)組織や職種ごとにある程度共通の価値に従って動いている

自分は上記のような抽象化の過程を経て、「各組織や職種では共通言語としての価値が存在し、それを把握することが物事を前進させる上で重要である」という抽象化知識を得ることができました。

■抽象化知識を使って個別の事象をパパッと理解する(知識を活用する)
どのように活用できるかという例を考えてみます。
そうして抽象化知識を得た自分が新たに法律のチェックが必要なプロジェクトを始めることになったとします。
自分は上記の抽象化知識を使って「一緒に仕事をする法務の人はきっと何らかの価値に従って働いている」ということがパパッと分かります。例えば、法務の人が気にしているポイントの一つに「リスク」があります。
そこで、あらかじめ法的なリスクを洗い出した上でプロジェクトを進める準備をしておけば、何も知らない状態に比べてはるかに素早く仕事ができるのです。

というような内容を抽象化して図で理解すると以下のような形になるかと思われます。

リーダーにも必須な抽象化

また、リーダーにとっても必須の知識と言われています。
マネージャーなどの人材がどのように抽象化を使うのかについては、以下の記事が参考になります。

ということで、仕事を進める上で最強の武器となる「抽象化」を身につけるために、日頃から抽象化をクセにしていきましょう。

今すぐ始めよう!

1. 最近の事象を書き出して、それらに共通することはないかを考えてみましょう。例え、共通事項がなくてもそうした思考訓練を行うことが抽象化の第一歩となります。また、事象は複数なくても大丈夫です。1つの事象について、その事象の背景で何が起こっているのかを考えることも抽象化の訓練となります。

2. 周りの人(先輩や上司)との会話の中で「仕事で気付きを得た経験はあるか」を聞いてみましょう。そうした経験と気付きについては抽象化のエッセンスが大量に隠されていると思われます。

参考図書

上記で話した内容をより、分かりやすく体系的に説明してくれている良書です。



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