詩と暮らす(神へ捧げる詩)|#シロクマ文芸部
「詩と暮らす」ではじまるお話を書きます。
#シロクマ文芸部 さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
「詩と暮らすだなんて、馬鹿げているわ!」
母は声を震わせ泣き出した。
◈◈◈
『詩喜明幸の会』に入会した私は、この半年間、仲間と集団生活をし、朝、昼、晩、詩を書き続けて詩神である教祖様へ読み届けている。
詩を書き続けることで、自身や家族を負のスパイラルから離すことができ、不幸を跳ね除けて幸せになれるからだ。
◈◈◈
半年前、同僚から声をかけられた。
「本が好きなのね。詩は書いたりする?」
毎日書く日記の中で、ちょこちょこ詩を書いていた私は、正直に書いていることを伝えた。
「詩を沢山書ける楽しい場所があるわ!」
◈◈◈
教祖様は私の詩をとても素敵だと褒めてくださり、ぜひ神のために詩を書き続けてほしいと笑顔でおっしゃった。
詩と暮らしましょう。
いつも自信なく生きていた私は、自分の生きる場所はここしかないと確信し、すぐに一人暮らしをやめ、ここで集団生活をすることに決めた。
会社から支給されるこれまでお金と呼んでいたものは、神へ詩とともに捧げる喜花代として大事なものだから、仕事は辞めていない。
◈◈◈
詩は素晴らしいけれど、喜花代が少ないですよと注意を受けたのは、3ヶ月が過ぎた頃で、会社から受け取るものは全て詩とともに捧げているので、どうしたものかと考えて、夜も働くことにした。
キャバクラでは、気が利かないと叱られてばかりだけれど、これも神が与えてくれた難であり、これを超えることで幸が舞い降りてくると思えば辛くなかった。
詩を書く時間は減ってしまうけれど大丈夫。いつも心の中に詩を思い浮かべているから。
◈◈◈
頑張っているつもりだけど、やはり喜花代が足りない。キャッシングでなんとか過ごしていたのだが、返済期限がきても返せるものはなくて、連絡先の実家へ手紙や電話がいったようだ。
母から、すぐ家に来るよう、スマホに連絡がきた。
◈◈◈
「詩と暮らしているのよ。」
「詩神様が褒めてくださる。」
「何を馬鹿なこと!500万円の借金があるというじゃないの!毎日、督促の電話が鳴り続けるし、玄関先にもこわい人が来るのよ!」
「お母さん その難は乗り越えなればならないのよ。そうでなければ幸せになれないの。」
「だからお母さん 今すぐ100万円下ろしてきてね。」
◈◈◈
(終)
※これは小説です。
実在する団体名、名称とは無関係です。
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