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村中璃子、ちょこっと読み。

わたしの書いた記事や科学・医学のニュースのまとめを適当にセレクトしてちょこっとお届けするマガジンです。わたしがnoteに書いた記事をぜんぶ読みたい方はマガジン『文系女医の書いて、… もっと読む
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#ワクチン

妊婦接種用RSウイルスワクチンの「接種可能期間」についての注意【重要】

妊婦接種用RSウイルスワクチンの「接種可能期間」についての注意【重要】

昨年秋に日本でも承認され、今年の6月か7月には販売されるという妊婦接種用のRSウイルワクチン「アブリスボ」。世界ではじめの、妊婦が接種して生まれてくる赤ちゃんに抗体を与えることを目的として開発されたワクチンです。

今日、徳島県医師会主催の研修会でこのワクチンを含む、さまざまな婦接種用ワクチンについて話をしたところ、思わぬ質問を受けました。

「アメリカでは『妊娠32週から36週になる人』という狭

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結局、ワクチンで新型コロナ後遺症は防げるのか、発症率「1~2割」は本当か

結局、ワクチンで新型コロナ後遺症は防げるのか、発症率「1~2割」は本当か

新型コロナウイルスの「後遺症」の予防に、ワクチンは有効なのでしょうか。

ワクチンの後遺症予防効果を見た国内外の論文は1000本以上あります。しかし、接種したワクチンは、種類も違えばスケジュールも異なります。感染したウイルスの型も違えば、感染のタイミングや回数、重症度も受けた治療も違います。システマティックレビュー(複数の論文のデータを比較検討したもの)もいくつかありますが、バイアスや交絡(因果の

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ワクチン型のインフルエンザ「山形系統」が消滅した

ワクチン型のインフルエンザ「山形系統」が消滅した

興味深いニュース。

マスクやソーシャルディスタンシング(この言葉も今やひどく古く聞こえます)など新型コロナウイルスに対してとった対策により、それまでは毎年流行していたB型ビクトリア系統のインフルエンザウイルスは消滅したので、2024年からはインフルエンザワクチンに入れるのはやめるようWHOが推奨を出したという報道があった。

流行っていない型をワクチンに入れる必要がないのは当然のことながら、

結局、どうする?新型コロナワクチン秋の追加接種、最終ガイド

結局、どうする?新型コロナワクチン秋の追加接種、最終ガイド

今月20日から秋の新型コロナワクチン接種が始まります。わたしの暮らすドイツでも10日から始まりますが、ほぼ誰も追加接種の話はしていません。新型コロナワクチンの接種・追加接種が推奨される対象が大幅に縮小したためです。

昨日、日本でも来年度から65歳以上の人以外は原則として自己負担になるとの報道が出ましたが、日本以外の諸外国はすでに対象を狭めています。

ワクチンが2価から1価になった理由ところで、

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伸び悩む接種率、つづく子宮頸がん(HPV)ワクチン集団訴訟

伸び悩む接種率、つづく子宮頸がん(HPV)ワクチン集団訴訟

8月17日で、信州大学の元教授で現在も同大学の名誉教授の池田修一氏に訴えられてから7年の月日が流れました。

わたしにとってこの裁判はもう過去の話ですが、国と子宮頸がん(HPV)ワクチンの製造元を相手取った集団訴訟はまだ続いています。

今日は原告側の証人第1号として、その池田氏が尋問を行いました。

鈴木エイトさんの5月18日付のツイッターによれば

と相変わらずの状況の中、勧奨が再開し、9価ワ

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子どもがワクチンや輸血を受ける権利とそれを受け「させない」親の権利のこと

子どもがワクチンや輸血を受ける権利とそれを受け「させない」親の権利のこと

日本に一時帰国中だった3月8日、わたしの暮らすドイツ・ハンブルクにある新興宗教「エホバの証人」の施設で銃撃事件が起きたことについては以下のnoteでもお伝えしました。

エホバの証人は輸血を拒否する信仰で知られ、輸血拒否カードを持っています。患者には「治療の自己決定権」がありますが、医師には「患者の救命のために全力を尽くさなければならない」という義務があります。

そのため、救命に輸血が必要な場合

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感染による免疫とワクチンによる免疫、「本当のところ」どっちが安全なのか?

感染による免疫とワクチンによる免疫、「本当のところ」どっちが安全なのか?

私たちの中には、自然のもの、中でも自分の庭や畑で育てた野菜やお米などは「安心で安全だ」という思い込みがあります。

天然水と水道水、どっちが安心?しかし、自然のものや自分で育てたものが必ずしも安全とは限りません。

自然か人工かを問わず、毒性とは「量の問題」です。

たとえば、ただの水でも、どんなに名水と言われる天然水でも、摂り過ぎれば水毒症を起こし、命に係わることがあります。

水の致死量は1日

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コロナの新変異株XBB.1.5に市民はどのくらい警戒するべきか?

コロナの新変異株XBB.1.5に市民はどのくらい警戒するべきか?

昨年の秋に出現が確認され、12月初旬時点では全米のコロナの10%しか占めていなかった新型コロナウイルスの変異株「XBB.1.5」。その後、急拡大し、現在、全米のコロナの40%を占めるようになっています。

一方、欧州では、ドイツ、フランスなどほとんどの国で発生が確認されているものの、もっともXBB.1.5の流行っているイギリスでも全体の5%以下の状態で、XBB.1.5が1月中に欧州で大きな問題とな

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取り扱い注意?話題のアメリカ発「学校でのマスク着用」論文

取り扱い注意?話題のアメリカ発「学校でのマスク着用」論文

日経メディカルによると、11月末、ツイッターでは、NEJMという有名医学雑誌に掲載された、アメリカのマサチューセッツ州に学校におけるマスク着用効果に関する論文が話題になった。

話題のアメリカ発「学校マスク」論文の概要日経メディカルの記事をもとに論文の概要をまとめると(日本語がちょっと変なので直した)以下のとおりになる。ぜんぶ読むのが面倒な人は、太字だけ読んで欲しい。

驚くのはそこじゃない!?マ

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日本人は気づいてない、日本人のマスク姿が「特別」な理由

日本人は気づいてない、日本人のマスク姿が「特別」な理由

2022年のワールドカップは、新型コロナパンデミック開始以降、本格的に観客を入れる初めての国際的スポーツイベントとなった。

収容人数6万人というスタジアムの観客の9割方がノーマスクの中、テレビでは、浴衣にマスク姿でスタジアム観戦する日本人サポーターや、東京の街角をマスク姿で叫びながら勝利を喜ぶ日本人の様子が報道された。

もっともスタジアム感染する日本人サポーターも、2戦目となるスペイン製以降は

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子どもから、安全に「感染を許容」していくという議論

子どもから、安全に「感染を許容」していくという議論

昨年9月、ワクチン接種率72%に達したデンマークは「新型コロナはもう脅威ではない」として、マスク、ワクチン接種証明の提示など、それまで行っていた新型コロナに関する行動制限を全廃することを発表しました。

集団免疫成立ラインと言われていた70%接種率を達成してからは、感染をある程度許容し、ワクチンを打たない人は重症化や死亡のリスクが高いが自己責任で、ワクチン接種者や若い人などリスクの低い残りの人は、

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オミクロン株対応ワクチンの重症化予防効果は今のワクチンとほぼ同じ?

オミクロン株対応ワクチンの重症化予防効果は今のワクチンとほぼ同じ?

アメリカやイギリス、EU各国ではオミクロン株対応ワクチンの接種が始まっています。

オミクロン株には、高い免疫回避能があります。ワクチンや感染からの回復で免疫を得ていても、それをすり抜けて感染する能力です。特に世界的に流行しているオミクロン株のBA.5の免疫回避能は高く、ワクチンを打っている人の間でもたくさんの感染を引き起こしています。

オミクロン株対応ワクチンは「意味がない」という専門家が続出

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オミクロン亜株のこと(BA.5とBA.2.75)

オミクロン亜株のこと(BA.5とBA.2.75)

日本でも感染者が確認されたとして話題のオミクロン株亜種「BA.2.75」、俗称「ケンタウロス」。

遺伝子変異の数が多く、今後、大暴れしそうなことから、あるツイッターユーザーが、ギリシア神話に登場する半人半馬の種族の名前で呼ぼうと投稿したことから広がったあだ名です。

BA.2.75のあだ名は「ケンタウロス」と「煽り株」いかにも強そうな名前ではありますが、「ケンタウロス」という呼び名は”煽り”だと

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サル痘やデング熱など今までとは違う動きをしている感染症のリスクの見極め方

サル痘やデング熱など今までとは違う動きをしている感染症のリスクの見極め方

パンデミックのせいなのでしょうか。

アフリカの外でのサル痘の報告、小児の原因不明肝炎の増加,、東南アジアではデング熱の大流行など、今年は他のウイルスが今までとは違う動きをしています。

以前から存在しているけれども今までとは別の動きをしているウイルスや細菌のことを「再興感染症」といいます。今まで人間には認識されていなかったウイルスや細菌のことは「新興感染症」といいます。たとえば1983年にはじめ

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