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文系女医の書いて、思うこと【プロフェッショナル】

「文系女医の書いて、思うこと【プロフェッショナル】」はわたしが書くすべての記事を読みたいという方、定期購読で応援してくださる方向けです。執筆の舞台裏エピソードや医療関係者向けの特… もっと読む
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#新型コロナウイルス

結局、ワクチンで新型コロナ後遺症は防げるのか、発症率「1~2割」は本当か

新型コロナウイルスの「後遺症」の予防に、ワクチンは有効なのでしょうか。 ワクチンの後遺症予防効果を見た国内外の論文は1000本以上あります。しかし、接種したワクチンは、種類も違えばスケジュールも異なります。感染したウイルスの型も違えば、感染のタイミングや回数、重症度も受けた治療も違います。システマティックレビュー(複数の論文のデータを比較検討したもの)もいくつかありますが、バイアスや交絡(因果の判断を邪魔するもの)を取り去ることはほぼ不可能です。そのため、世界の専門家の間で

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結局、どうする?新型コロナワクチン秋の追加接種、最終ガイド

今月20日から秋の新型コロナワクチン接種が始まります。わたしの暮らすドイツでも10日から始まりますが、ほぼ誰も追加接種の話はしていません。新型コロナワクチンの接種・追加接種が推奨される対象が大幅に縮小したためです。 昨日、日本でも来年度から65歳以上の人以外は原則として自己負担になるとの報道が出ましたが、日本以外の諸外国はすでに対象を狭めています。 ワクチンが2価から1価になった理由ところで、皆さんは、この秋から一度は2価になった新型コロナワクチンが1価に戻ったことにお気

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新型コロナワクチン「本当はもう打たなくていい人」は誰なのか

今年2月、日本では2023年度は、引き続き新型ころなワクチンは接種できる年齢のすべての人に推奨され、年2回、無料で接種できることが決まりました。 ドイツでも当面は誰もが無料で接種できるものの、ワクチン諮問委員会のSTIKOは5月25日、接種・追加接種の対象者を大幅に縮小する新しい推奨を公表しました。こうした動きは、現場の医師からも「接種を勧めなくてもいい人がはっきりした」などとして、高い評価を受けています。 ワクチンの効果は、年齢を問わず時間とともに低下していきます。しか

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ウイルスの起源「研究所漏洩説」の報告書を書いた”濁った水”の正体

前回の記事で書いたとおり、いま新型コロナウイルスの起源をめぐる問題が急展開を見せている。原因不明肺炎の発生を受けた中国が2020年1月、武漢の市場を閉鎖した際、市場を消毒する前に採取した検体の遺伝子配列の情報が、国際的な遺伝子情報データベース「GISAID」に密かに公開されたからだ。 非公開になった武漢の市場の遺伝子情報しかし、公開された情報は再び非公開になり、ウイルスの起源の解明をめぐる中国と世界との駆け引きはますます過熱している。 武漢の市場の遺伝子の一件がひと段落し

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ウイルスの起源の問題が急展開!中国が3年経って武漢市場の遺伝子情報を公開

2023年3月はじめ、フランスやアメリカなどの研究者は、中国CDCが2020年1月、武漢の湖北海鮮市場を閉鎖した際に市場の環境から採取したウイルス検体の生の遺伝子情報が、国際的なウイルスの遺伝子情報共有データベース「GISAID(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data)」に公開されていることに気づいた。 GISAIDは2006年、世界の科学者が、インフルエンザウイルスがパンデミックにつながる変異を起こしていないかを

「さらば、マスクよ」全員着用解除の初日は岸田さんに100点?

3月13日から、マスクの着用・不着用が個人の判断に任されるようになった。 しかし、日本ではマスクの着用はもともと義務でも何でもない。つまり、着用・不着用は、以前から個人の判断に任された問題だった。それでも、日本では、「個人の判断」で誰もがどこでもマスクをしていた。 外せるようになっても外したくても外せないそんな中、今朝はNHKが基礎疾患のある人が「重症化しやすい人も出かけられるよう、考えてマスクを外してほしい」と訴える映像を放送していた。 重症化しやすい人の不安はもちろ

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人災としての医療ひっ迫

去ったと思えばまた押し寄せる、コロナ流行の波。これだけワクチン接種率が上がったのに、こんなに時間はあったのに、検査をなかなか受けられない、医療機関が混雑するといった状況がまだ続いています。 原因の1つは、日本では精度の高いPCR検査へのこだわりが強く、PCR検査である必要のない場面でも、抗原検査を用いた方がいい場面でもPCR検査を使うことを求め続けた結果、抗原検査を普及させることに失敗したからです。 皆さんの多くは、抗原検査のデメリットの方ばかりを聞かされ、「抗原検査は安

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パンデミックの「やめ方」

パンデミックの終わりを祝福するかのように、今年は大好きなホワイトアスパラとイチゴがわたし史上最高に美味しいです。写真の分量の太いアスパラが2キロで8€。価格の上でもわたしがドイツに来てからの最安値です。 パンデミックにウクライナと大きな事件が続く中、たとえば、今まで5€だったサンドイッチが7€、2.5€だったバターが3€といった具合にすべての物の値段が2~4割くらいは上がっていますが、これは嬉しいことです。 ホワイトアスパラは日本で言うとタケノコのような、春から初夏にかけ

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次はあなたの故郷かもしれない

「私の故郷ハリコフは壊滅しました。次はあなたの故郷かもしれない」 ウクライナ国旗を掲げるハンブルク市庁舎前で黄色いベレー帽と青いセーターの女性が立っていました。「SNSにあげますね」と言ったら「ありがとう」と言われました。 Googleマップで検索するとわが家からウクライナ国境まで車で11時間半、距離にして1500キロ足らず、ちょうど東京から陸路で鹿児島に行くくらいの距離です。 確かに離れているのだけどそんなに離れていない、別の国だけど同じ陸の上にある、そんな場所で戦争

疫病と水

今日はわたしの撮影した写真を見ながら、ちょっと歴史の話を。

「要らなくても打つ」という選択ー英、新型コロナワクチンを健康な5歳から11歳子どもにも推奨へ

私はこれまで、子どもには新型コロナワクチンは「要らない」という考えでいました。特にオミクロン株ではワクチンが感染を予防する効果はとても低く、重症化を防ぐことしかできません。子どもの新型コロナ重症化のリスクはもともと低いので、重症化を予防するためにワクチンを接種してもあまり意味がないと考えていたからです。 「要らないから打たない」以外の選択もあるところが、わたしの周囲でも子どもや子どもがいる家庭の感染が相次ぐなか、「要らないから打たない」ではなく「要らなくても打つ」という選択

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次はウチかもしれない――子どもがコロナになったらどうするか

身近なところでのコロナの感染が相次いでいます。最近、特に多いのが学校や保育所に通うお子さんのいるご家庭の話です。 日本でもドイツでも流行っているのは、重症度は低いけれど感染力の強いオミクロン株。都市部の住環境が悪く、家庭内での隔離にひと苦労なのは日本でもドイツでも同じです。 同居家族に感染者が出たら、食事を別にすることや、換気を心がけ、寝具やタオルを共有しないことは、もう言われなくても知っている常識でしょう。 ただ、本当の悩みはそこではないんですよね。特に子どもが感染し

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政権批判、グッズ販売、宗教活動も?反ワクチンデモの今

以前からわたしはワクチンに反対する人のヘイトターゲットで、日本では反ワクチン運動関連の取材を安全に行うのが難しい状況でした。しかし、ドイツではマスクをして顔もよく分からない外国人のわたしに気をとめる人はいません。日本ではなかなか持つことのできない貴重な取材経験を持つことができています。 追加接種しないと外食もできない「2Gプラス」に日本より一足先にオミクロン株が拡大を始めたドイツでは1月7日、追加接種加速のための戦略として、2回の新型コロナワクチン接種を完了した人でも追加接

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城と赤死病と栗

年末年始、いかがお過ごしでしたでしょうか。 わたしはコロナからもインターネットからも自由な時間が欲しくて、チェコとの国境に近い東ドイツの森の中で過ごしました。森の中と言っても森の中にある友人の所有する小さなお城です。