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「コットンパール」 Ep.18

 今日は、朝から一段と冷え込んでいて今年初の大寒波が来ると朝のニュースで言っていた。気だるい終業式の間中、私はずっと外を見ていた。いつ雪が降ってもおかしくないような曇り空だ。いつも寒い体育館がより一層冷え込んでいる。

 「杏、行こー。いつものカフェでいいよね?」
「うん、いいよ。昇降口で相馬くん待ってるって。」
私は、終業式を終えた後、沙耶と相馬くんと出かける予定になっていた。

 沙耶と私は、昇降口で相馬くんと合流し街にあるカフェへと向かった。私と沙耶は、ミルクティーとそれぞれブラウニーとマロンケーキを頼み、相馬くんはホットコーヒーを注文した。
「今日、ほんとに寒いね。」
沙耶が、まだカフェに入ったばかりで暖まっていない両手を擦り合わせながら言う。
「ほんと寒い! 終業式中の体育館が寒すぎてヤバかった。」
相馬くんも寒そうにしている。
「てか、今日ありがとね。」
私は、わざわざ私に付き合ってくれていることに対してお礼を言う。
「ぜんぜん大丈夫!」「俺、特に予定ないし。」
沙耶と相馬くんが笑顔で答える。
「2人に聞いてほしい事があるんだけど…。実は、昨日晴人が告白されてるところ見ちゃった…。」
「マジ?」「え?」
沙耶と相馬くんが同時に反応する。
「うん。相馬くんと同じクラスの女子だったよ。女子が泣いてるのが見えたから、晴人、断ったみたいだけど…。」
私が昨日見た状況を説明する。
「そうなんだ。なんだかんだ晴人、けっこうモテるからなぁ。」
相馬くんが言う。
「でも、杏、断ってるっぽいならよかったじゃん。」
沙耶は、安心したように言う。
「それはそうなんだけど…。私、このままじゃいけない気がして…。でも…、なかなかどうしたら良いのかわからなくて…。」
晴人への想いばかりが募っていく。

 それから私たちは、普段の生活のこと、文化祭の話などたわいもない話をした。
時刻が16時になった頃、「今頃、晴人はサッカー部のやつらと一緒かぁ。あいつら何してんのかな?」と相馬くんが言った。
「男子って普段、行くとしたらどこ行くの?」
沙耶が相馬くんに聞く。
「んー、俺はダチの家、カラオケ、ボーリング、買い物とかそんなかなぁ?」
「俺、晴人に何してるのか、LINEしてみようかなー?」
少しいたずらっぽい顔をする相馬くん。
「あ、それいいじゃん! LINEしてみてー。」
沙耶もそれに乗っかる。
私も晴人が今何をしているのか気になった。

 少ししたら、相馬くんが「あ、晴人から返事来た。」と言った。
それを聞いてドキっとした。
「晴人何してるって?」
沙耶が相馬くんに訊ねる。
私もすごく気になる。
「なんかボーリングしてるらしいよ。あいつら普段も部活で運動して、遊ぶ時も体動かしてすげーな。」
相馬くんは笑いながら言う。
「ほんとだね。」「確かに。」
私と沙耶が笑いながら返事をする。

 晴人、ボーリング終わった後もどこか出かけるのかな?
「ボーリングってことは、晴人もこの近くだよね?」私は相馬くんに聞く。
「そうじゃね? ボーリング場ってこの辺りにしかないし。」
「わ、私、やっぱり今日、晴人に会いたいから今から会えないか聞いてみようかな。」

晴人に会いたい。すごく会いたい。

「LINEしてみるっとこと?」
沙耶が言う。
「うん! なんかわからないけど、今日なら、私…、自分の気持ちを晴人に伝えられる気がする…。」
まったく根拠はなかった。でもなぜか心からそう思えた。
「告白するってこと?」
相馬くんが驚きながら、私に確認するように聞く。沙耶も私の気持ちの変わり様に驚いている様子だ。
「うん! とりあえず、今からLINEしてみる。」
私はそう言い、すぐに[急にごめんなさい。今から駅前の時計台で会えませんか?]と晴人にLINEをした。
相変わらず、沙耶と相馬くんが私の急な行動力に驚いている。でも、それと同時に応援してくれているのが伝わってきた。

私もなぜかはわからない。
昨日の告白を見てしまったからかな?
この2人が一緒に居てくれて、背中を押してくれるからかな?
やっぱり晴人のこと好きだからかな?

きっと全部だ。今は心のままに動くのが正解だ。

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