見出し画像

まんじゅうこわい

今日も病院で点滴を打ってもらった。点滴疲れっていうのがあるのかどうか知らないが、さすがに10日目になると疲弊してきた。両腕にプチプチと注射針の跡と、内出血がある。

待合室でぐったりしてお会計を待っていると、後ろで年配の女性が話しているのが聞こえてきた。

「甘酒まんじゅう、がんばったのにな。ダメだったわ。今度は肉まんでがんばってみる」

その声には後悔なのか、反省なのか、とにかく力がなく、『ダメだった感』が色濃く出ていた。わたしは振り向く力さえなく、耳だけ向けていた。

相手の女性も「あら、そうなのね。まぁ…。」とこれまた残念感たっぷりの声だったので、なるほど、手作りを失敗したのかな、と思った。ところがその次にふと思いついたような声で「そうね、肉まんといえば、ホウライがおいしいわよ!」と元気づけるように言った。ん?手作りじゃないんかい。しかし、ホウライ、聞いたことあるなあ。どこにある店だっけ?

そのあとの声はもう、わたしには聞こえて来ず、結局、その人がなんのために肉まんをがんばるという決意をしたのか、理由はわからなかった。ただ、ホウライというお店の名前だけがわたしの頭の中でぐるぐるしていた。

なんだろうな、ホウライ。有名なお店なのかな。…あ!あれか。関西方面から博多駅に降り立つ人の多くが持っている「HORAI551」とプリントされた袋。あの店舗は福岡にはない。デパートの催事で見かけることはあるが、今すぐ手に入れようと思ったら、かなりハードルが高い。そしてその店を勧めるということは、なんなの?あなたがたセレブなの?

相当具合が悪く、だるくて吐きそうなのに、わたしは蓬莱の肉まんのことに集中していた。そしてまた、それを吐きそうな感じでnoteにまとめている。自分でもアホか、と思うが、まあ、それくらいの元気はまだあることに感謝である。

そういえば、待合室でわたしの前に座った高齢の女性がスマホでベルサイユのバラを読んでいた。老眼で吹き出しのセリフが読みにくいのだろう。拡大画面いっぱいいっぱいにして、指先で漫画のコマを上下左右にスクロールしていた。その手つきの鮮やかさはまるで職人のようだった。わたしはそのスピード感についていけず、目が回った。

明日はちょっと大きな病院に紹介されたので、そこでもまた、何か面白いことがあったらいいなと思っている。




サポートいただけたら、次の記事のネタ探しに使わせていただきます。