見出し画像

やしなう

なぜトイレの夢ばかり見る。

わたしは小さな印刷会社で、パートで働いている。家族経営で、男性社長のお母さんが雑事をこなし、社長は営業、妻は事務をしている。そこに恰幅の良いおじさんが出入りしている。

そのおじさんが、印刷会社を自分の会社と合併するという。経営が怪しくなっていたので、致し方あるまい。すると「うちの会社では、寮に入ってもらいます」と、家を与えられた。バスで行くような距離感で、ここから通うのは大変だなあと思う。その家にはベニヤ板で仕切られた小部屋が6つあって、ドアを開けると、4つがトイレで、2つが圧力風呂だった。圧力風呂なんて、現実にはないけれど、風呂が圧力釜で焚かれる仕組みで、「こんなものがあったのか」とわたしは驚いた。

1つ目のトイレは、何もなかった。便器さえもない。タイル貼りの壁と床のつながり部分に小さな穴が開いていて、どうやらそこに排泄するようだ。ここは男子トイレなのだな。隣のトイレは、大きな宝箱みたいな青い蓋つきの箱が置いてある。大人が二人は座れるサイズで、重い蓋を開けると、そこには座席の上に一枚のシートが置いてあり、小さな穴がいくつも開いていた。そのシートをめくると、下には隙間を開けて二枚の板が貼ってあり、なるほど、ここに座るのか、と思う。しかし、そこでおしっこをすると、どう考えても座席の中には全部が収まらず、下半身がずぶ濡れになるであろう。不潔だ。さらに板張りの中蓋のようなものを持ち上げると、中はよく見えないが、おそらく排泄物でいっぱいである。あかん。下水道ではない。

さらにまた別のトイレのドアを開けると、またも何もないトイレで、その隣はまた、同じように宝箱のトイレだった。同じかよ、と思って絶望する。

わたしは三人の小学生と同居することになった。男の子が二人で、女の子が一人。男の子の一人は人気者だけれど、自己中心的な子で、すぐに他人をいじる。もう一人は自由過ぎて、こちらの言うことを全く聞かない。女の子は、賢く静かな子だけれど、どこかよそよそしい。この三人を養っていかなければならないらしい。三人も不安そうだが、わたしも自信がない。

「どうして僕たちがりかよんさんと暮らさないといけないんですか」と聞かれるが、理由はわたしにもわからない。とりあえず、稼ぐことを考えよう、と思う。しかし、パートの仕事だけでなんとかなるだろうか。

そこへ社長がやってきて、「今月も来月も忙しくなるからね。しっかり働いてよ」と言う。ブラック企業かよと思いながらも、子どもたちを養うには身を粉にして働くしかあるまい。

とりあえず、今から食事を作ろう。わたしはそう思って台所に立つ。三人がトイレに行きたいと言う。「それぞれ好きなところを使って」と答えるが、果たして、あのトイレでみんなはちゃんと用が足せるのかと不安だ。

やはりどう考えても、無理だと思いながら目が覚めた。上・下水道のありがたさよ。

サポートいただけたら、次の記事のネタ探しに使わせていただきます。