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暗闇でした

昨夜も夢を見た。

わたしは夜道を歩いている。「気をつけてね、バイバイ」と誰かと四つ角で別れた。わたしの家は、その角をまっすぐ行って、一つ目の角をまだ通り過ぎたところにある。ところが路地に入った途端、電気のスイッチが切れたみたいに、なんにも見えなくなった。真っ暗だ。「停電?街じゅうが?」どきりとしたが、ここは慣れた道だ。わたしは歩き始めた。背後に人の気配がする。良い気配ではない。強盗、通り魔、変質者、みたいな印象だ。わたしに危害を加える気でいることがわかる。

怖くて足がうまく運べない。しかも暗い。目を凝らすが全く見えない。漆黒とはこのことか、と思いながら手を前に突き出し、なにかに衝突しないように歩く。焦ってはいるが、なにしろ前が見えないのだから走りようがない。後ろからは嫌な足音が近づいてくる。

そうだスマホだ!あれが懐中電灯代わりになる、と思ってリュックのポケットに手を伸ばそうとするが、暗くてよくわからない。目の前に、誰かがいた。二人はスマホを持っていて、ぼんやりと顔のあたりが見える。若い男女のカップルのようだ。「逃げて!危ない!」とわたしは叫んだ。二人のスマホの明かりで、追いかけてくる人物の顔が見えた。ハンチングをかぶって、黒のジャンパーを着た若い男だった。わたしに襲いかかってくる。「たすけてー!たすけてー!」と、わたしは力いっぱい叫んだ。しかし、口が動かない。「あうええー!あうええー!」と唸ることしかできない。その瞬間、わたしの背中をトントン、と誰かが叩いた。ひえええええ。

目が覚めた。ムスメがわたしの背中をトントン叩いている。「お母さん?」
ああ。怖い夢を見ていたよ。ムスメは「ふーん」と言って、わたしの手をよしよしと撫でたあと、スーッと寝てしまった。うなされているわたしを起こしたわけではなく、ムスメ自身も寝ぼけているようだった。

今朝、ムスメを起こしたら「なんか、イヤな夢を見た。うなされた」と言っていた。つまりムスメの夢の中にわたしのうなされ部分が組み込まれてしまったというわけか。お気の毒に。

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