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CORAL

子どもの頃、ビン入りの星砂をお土産にもらった。これなあに?と聞くわたしに、お土産をくれた人は、小さな白い粒はサンゴの仲間だと言った。わたしは星の形をした砂が珍しく、とてもキレイで気に入った。かわいいなあと思っていた。机の引き出しに大事にしまっておいて、時々ビンから取り出しては、手のひらに出して、その形を確かめたりしていた。

大人になって、星砂は有孔虫という生き物の殻なのだと聞いた。サンゴの生息する美しい沖縄の海に生息するのだという。サンゴの仲間、というのはそういう意味だったのかと笑ったが、あの真っ白な砂浜が有孔虫の死骸で埋まっているのかと思うと、ちょっとゾワっとした。その正体がわかると、かわいいとは思えなくなってしまった。

ムスメが小学6年生のとき、家族で沖縄に行った。さまざまなお土産が売られていたが、どの店にも相変わらずビン詰めの星砂も並んでいた。わたしは「はいはい、有孔虫の殻だね」と心の中でシラっとしていたが、美ら海水族館でそのビンを見つけたムスメが「わぁ♡星の砂だって〜。おかあさん、これかわいいね」と言って欲しがった。なるほどキラキラした目でそれを眺めている子どもに「これは虫の死骸だよ。虫の殻なんだよ」とは、夢を壊すようで言えない。

ムスメの机の引き出しには、星砂のビンが大事にしまってある。

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