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さいのめ

うちにはカブトムシか、というくらいスイカが好きな人たちがいる。わたしもまあまあ好きな方だが、あの二人は桁違いだ。

「うちの畑でとれたスイカなんだけど〜」と、友だちが持ってきてくれた。4分の1に切ってあったが、かなりの大きさだ。じゃあ、今夜いただこう、と思っていたのに、オットが帰ってきやしない。

23時を過ぎる頃、オットは「何も食ってない」と言いながら帰ってきた。朝も昼も夜も食べずに働くオット。会社はどういう働き方改革をしたんだろう。まあ、現場仕事だから、食べそびれるとそのままチャンスが巡ってこないのだ。

ところで今日はゴミ出しの日だ。福岡市はゴミを夜中に収集する。ゴミ袋にゴミをまとめながら、「あ、スイカの皮」と思い出した。「スイカ、食べる?」と聞くと、ムスメは「明日の朝でいい」と言い、オットは返事をしなかった。明日食べると、生ゴミが来週の月曜まで家の中にある。それがなんとなく嫌で、赤いところだけ切って保存容器に詰めておこう、と作業を始めた。

賽の目、つまりサイコロ状に切り始めたところで、「あれ?なんでそんなにスイカを粉々にするの」とオットが詰め寄る。せっかくいただいたスイカに対する冒涜だとまで言う。「いや、今夜中に皮を捨てておきたくて」というと、「スイカを食べるなら、普通に切ったらいいじゃないか」と文句を言う。「今夜食べないんでしょ?」「いや、食べる。すぐ食べる」そう言って、オットはサイコロ状に切ったスイカをしゃくしゃくと食べ始めた。「全部食べちゃうよ」と言いながら、本当に全部食べる勢いだ。わたしは慌ててムスメに「今食べないとなくなるよ」と言うと、「わーー、食べる食べる食べる!」と突進してきた。

23時40分。わが家の台所はスイカ争奪戦である。でっかい保存容器にいっぱいだったスイカが、ものの2〜3分で消えた。


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