アイカツスターズと「努力」のお話。


「努力は必ず報われる」
あるアイドルはそう言い放った。そして彼女はそれを自分の生き様で証明した。
(注釈しておくと、これはAKB48の高橋みなみの言動であり、アイカツスターズの世界の言動ではない)

本当にその言葉通り努力で報われる世界ならば、アイカツスターズの世界において天下を取ったのは恐らく桜庭ローラであろう。彼女の努力量はアニメを見れば明らかである。ではなぜ、アイカツスターズの世界において桜庭ローラを虹野ゆめが上回ったのか。
答えは簡単で、才能量を努力量は上回れないからである。

無論、桜庭ローラに才能が無い訳ではない。彼女に才能が無かったらそもそも四ツ星学園に籍を置くことは無かっただろう。才能自体はあったので、スタートラインに立つことそのものは許されたのだ。その才能の上に努力を重ねたことで桜庭ローラなりの立ち位置を掴んだ。

しかし、残酷なことに努力量は自分で幾らでも増やせるが才能量は生まれ持ったものである。虹野ゆめと桜庭ローラの最大の違いはここだと考えている。
例えるならば、黒の上に色をどれだけ重ねても上に重ねた色はほぼ目立たない。グレーの上にどれだけ色を重ねても色はぼやけた色になる。しかし、白の上に重ねる色はどの色を重ねても綺麗に発色する。要するに虹野ゆめの生まれ持った色は白で、桜庭ローラの生まれ持った色はグレーだったのではないだろうか。
才能の上に重ねる努力は無限の可能性を魅せてくれる。逆に言えば、それは才能あっての話である。才能量の少ないものの上に重ねる努力は、はっきり言うと報われない可能性の方が高い。これが桜庭ローラが何度も当たった壁であり、虹野ゆめが桜庭ローラを上回っていた最大の理由である。
一番最初に話した「努力は必ず報われる」という言葉は、発した本人は気付いていないかもしれないが、本当は才能がある人の「努力は必ず報われる」という意味である。

ただ、アイカツスターズを最後まで視聴すると、桜庭ローラにも頑張ったぶんの見返りはしっかり受けているように見える。これは製作者側と、桜庭ローラを見ていた人達が履かせてくれた「下駄」であろう。

「努力は必ず報われる」ことを「証明したい」、これが最初の言葉の意図である。自分自身の努力も勿論、周りの人間が努力をしていることが報われないことが辛かったのだろう。故に自分みたいに努力をしていれば「それを見ている人達は必ずいるから」いいことがあるよ、報われるよ、そんな意図があるように見える。桜庭ローラが天下を取れずともそれなりに評価を受けた理由はこの部分だと考える。

桜庭ローラは努力の人間である。その努力は、虹野ゆめをはじめ、学園関係者や営業先の方々もしっかり目撃している。才能量では決して虹野ゆめに勝つことが出来なかった桜庭ローラだが、周りの大人はそんな桜庭ローラの頑張りを無駄にしたくない、報われたくなかったのであろう。
アイドルというのは、勿論見た目やパフォーマンス、客との対応で人気を掴んでいくものだが、中には「頑張ってるしこの子を応援しよう」というファンも少なからず存在する。そう感じるのはファンだけで無いのだろう。
桜庭ローラは頑張った分、様々な大人が下駄を履かせてくれた結果、虹野ゆめを上回ることは出来なかったものの彼女なりに輝くことが出来たのである。

虹野ゆめは1期の初期から持ち前の才能量と周りの人間のサポートでのし上がって来た描写が多数存在する。
(一応言っておくが、虹野ゆめも才能だけの人間では無く、才能の魅せ方や受け入れ方に四苦八苦して、その部分においての努力が報われた結果が今の立ち位置であり、虹野ゆめが努力していないとは思っていない)
しかし、桜庭ローラも虹野ゆめと同様に周りの支えがあって今の立ち位置があるのである。中々虹野ゆめほど分かりやすく描写はされていないが…

アイカツスターズは女児アニメではあるが、我々に、

・努力は才能を上回ることは出来ない
・故に努力は必ずしも報われる訳ではない

といった女児には厳し過ぎる現実を突きつけてくるが、同時に、

・頑張っていることは必ず誰かが見ている
・その頑張りを評価としてくれる人も存在する

といった救済措置があることも見せてくれている。
世の中の大半の評価される点は実績である。過程なんて無関係で出来上がったものしか評価されないことがほとんどである。
アイカツスターズの世界も同じで、アイドルとしての才能(パフォーマンスや対応など)が評価されることが大半であるが、中には一定数「頑張っていること」を評価してくれる人もいるのである。

桜庭ローラは、頑張りの結果は報われないこともあるけれど、そんな頑張りを評価してくれる人達もちゃんと存在するから、頑張ることが自分の支えになることを証明している。
逆に、才能があるものを見つけることさえできれば上乗せする努力次第で虹野ゆめのような生き方が出来る「夢」も虹野ゆめが見せてくれている。

どちらの生き方からも言えること、それは、
「頑張りは自分の背中を押してくれる」
こんな部分だろう。
我々はそんな彼女達の生き方に背中を押してもらえる。

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