木になった亜沙を読んだ。

『木になった亜沙』を読んだ。

一冊の中に木になった亜沙と的になった七未とある夜の思い出という三つの話が入っていた。真ん中のものがたり、『的になった七未』が頁数が一つだけ飛び抜けて多くて、とは言っても簡単に読みほせる簡単さだからさらっと読了した。

読み終えた今、何だか落ち込んでいる。PMSは生理前だけで、もう生理になったから頭ん中にお花が咲いたまんま読み進められるかと思いきや、急に生理前と同じ気分の沈み方をしてしまった。自分が毎回PMSだPMSだと言っている体調の変化は実は思い込みだったのだろうか。それかPMSとか関係なくこの本が自分を痛めつけたのだろうか。どっちかまだ分からない。

自分はこの一年を通してどんな稚拙な創作物でも感情移入を容易に出来てしまう体になった。すぐに泣いてしまうのだ。(なんかそんな人に前出会ったなと今眉間にシワを寄せている。)

この本では、真ん中の話、的になった七未で泣いてしまった。

七未は自分に物を投げつけてくる他人からどうしても逃げ切れてしまう星の下に生まれた。現実には有り得ない変な人生を生きていた。子供の頃は、死にもの狂いで逃げて逃げて、それで毎回上の方から声援が聞こえてくる。「ななちゃん、がんばれ。ななちゃん、はやく。」

園長の投げるどんぐりから逃げ、担任の投げるボールから逃げ、ぬの太郎の投げる空き缶から逃げ、そしてようやく気付いた。声援の本当の意味は、「がんばれ。はやくあたってこっちにおいで。」だと。

それから、逃げることを一切やめる。それでも七未に何かものが当たることは無い。やがて物に当たりたいという欲求に頭を全て奪われた七未は、精神病棟に入れられて、担当医から性的虐待を受け、妊娠する。子供を産んですぐに男性は消え、七歳になった息子の七男もネグレクトを受け続けた結果里親の元へ旅立ってしまう。それから先はーもうだるいから書かない。読めばいい。

話に不満がある。精神病棟の描写だ。精神病棟に入院する患者が、3対1で誰かを虐めるなんて、そんな生き生きとした意地悪さを心の病んだ人間がするとは思えない。

あと、担当医に恋をした15歳の主人公が、次第に物に当たりたいという欲求が消えるのが、15歳の少女にしては女女していて気味が悪い。担当医に洗脳されて虐待されてドン底の妊娠をしつつも誰にも言えずお腹が大きくなってしまい、赤ちゃんに内なる外からお腹を蹴られて、その時に欲求を満たされてお腹の赤ちゃんが全てになる話になって欲しかった。てか絶対そうなると思ったよね皆さん。

大きくなった七男に最後"終わらせてもらう"のは乙な人生で良い終わり方だったんですが、あんな担当医の存在で希有な欲求が無くなるぐらいなら、七男の存在で毒母になるくらいの単純さを持って話が進んでくれて良かっただわな。

終わり。

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