トランプ王子様☆ [1]

登場人物

エース:最上 陽葵(もがみ ひなた)
トランプをまとめる最上家の一人っ子。友達が多く明るさが取り柄。料理はできるが包丁が使えないという弱点が。
クラブ:一ノ瀬 三葉(いちのせ みつば)
優しく温厚なクラブの王子
ハート:篠原 心(しのはら こころ)
情熱にあふれたハートの王子
スペード:渡辺 剣(わたべ つるぎ)
不愛想だがドジなスペードの王子
ダイヤ:有明 ダイヤ(ありあけ だいや)
細かいことにまで気が回るダイヤの王子
ジョーカー:王(おう)

お話

私の名前は最上 陽葵。只今「護身用の」トランプを探すべく学園内を走り回っているところ。
というのも私の両親はトランプの世界と人間の世界をつなぎ守る役割(エース)を果たすと勘違いしているのだ。
それで先祖代々伝わっているだのトランプの世界からもらっているだの2つの世界をつなぐ架け橋になっているだのという古めかしいトランプを何故か護身用として持たされている……のだけどそれを学校のどこかで失くしちゃったみたいなのだ。
「ううん、どうしよう。」
私が頭を悩ませて階段の手すりに寄りかかっていると、
「どうかしましたか?」
見るからに優しそうな少年が私の目の前に現れた。
「あ、あの。実は。」
私は突然のことに驚いておどおどしてしまう。
「すみません。自己紹介がまだでしたね。僕は一ノ瀬 三葉です。」
「みつば? 私は最上 陽葵です。実はトランプを落としてしまって。」
すると彼は少し驚いたような顔になって
「まさか。」
と小さくつぶやいた。
私が頭に?をたくさん浮かべている横で彼は私に尋ねてきた。
「もしかしてそのトランプは少し古めかしくて柄が特殊なやつですか?それにあなた、もしかして『エース』?」
彼が提示してきたトランプの特徴は私のトランプの特徴ときっちり一致していた。それにエースって、
「お母さんたちの嘘だと思っていたのに。」
思わず口から声が漏れる。
「やっぱり。」
彼は私の言葉を肯定ととらえたようだ。にっこり笑っていった。
「ちょっと来てくれますか?」
私は言われるがまま一ノ瀬くんと中庭に出た。すると、
「三葉?そこの女の子は?」
そこには一ノ瀬君と同じくらい美男子な男の子が3人いた。
「彼女は『エース』の最上 陽葵ちゃんだよ。みんなも自己紹介して。」
彼らは驚いた顔をしていたが、驚きたいのはこっちだ。しかし彼らは
「三葉が言うなら本当か。」
と勝手に納得してしまった。どうやら一ノ瀬君は信頼されているらしい。でも、でも!勝手に理解していかれても困る!私は何もわかっていないのに。そうこうしている間にも彼らは自己紹介を始めた。
「ハートの王子の篠原 心だ。」
と言ったのは赤みのかかった茶髪の勝気そうな男の子。
「スペードの王子の渡部 剣です。」
というのはいかにも理系で不愛想といった雰囲気を匂わせる男の子。
「ダイヤの王子、有明 ダイヤでーす。」
そう言ったのは銀髪の男の子。
「僕はクラブの王子、一ノ瀬 三葉です。」
最後に話してくれたのは一ノ瀬君。
「あ、あの。最上 陽葵です。状況が何もつかめないのだけど__。」
私の困った顔に彼らははっとした顔になった。
「ごめん、このことについては僕から話すよ。」
そう言ったのは渡部君。彼によると
最上家は代々トランプの世界をまとめる『エース』、つまり1番の役割を担っている。
今、トランプ界は「王」と呼ばれる『ジョーカー』によって危機にさらされている。
王子たちは私『エース』の力を借りに来た。
ということらしい。
「で、あなたたちが各国の王子であると。」
彼らは頷いた。
(そんな真顔でうなずかれても困るのよ。私ただの中学生なのに。)
「お願いだ。このままだと__、トランプ界は滅び、世界からトランプは消える。」
(え。)
複雑な事情は全然なために入ってこなかったけど4人の美男子が頭を下げてきているのに断るなんてできない。
「わかりました。やります!でもその前にお母さんに連絡してもいいですか?」
私があせあせと連絡しているのにお母さんはのんびり、
「じゃあ家に来てもらいなさい。」
と言っていて。私は彼らと家に向かった。
「お母さん!いったいこれはどういうこと?」
「だーかーら。前から言っていたでしょ。最上家は『エース』だって。」
「そんなの信じるわけないじゃない。」
私たち親子がみっともなく言い争っているのを見て王子達は
「すみませーん。」
口をはさんだ。
「あらごめんなさい。」
お母さんは『エース』の仕事をあっさり承諾した。それに加えて
「じゃ、王子達は一緒に住んでもらいなさいよ。」
なんてことになっちゃったのだ。
そう、ここから私たちの波乱万丈な日々は始まる___。