クライアントに“浸透”するデザインが生み出す広がり|日比谷花壇 母の日・父の日プロモーション
RightDesignInc.のnoteでは、これまで弊社が携わってきたプロジェクト事例を紹介していきます。今回ご紹介するのは、日比谷花壇による母の日・父の日のプロモーションデザイン。本記事では制作プロセスの様子やその裏側を紹介していきます。
花束を買う高揚感を体感
提案にあたって私たちがまず初めに行なったのは、花束のプレゼントを体験すること。実際に日比谷花壇の店舗に行き、花束を選んで、社員同士でプレゼントしあいました。
そこで抱いた感情は、誰かのために花束を買うことのなんとも言えない高揚感でした。普段、花を購入することのないからこその気恥ずかしさと、相手が喜んでくれることの嬉しさ。こうしたワクワクした感情を表すデザインで表現すべく、コンセプト策定に取り掛かりました。
花を買う場所から時節をアナウンスする場所へ
日比谷花壇は、150年以上の歴史をもつ由緒あるブランドです。今回お話をいただいた際には、課題として「若い層への認知を広げたい」というご相談をいただきました。
そこで私たちが力を入れたのが、オンラインとオフラインの繋がりでした。それまで日比谷花壇でとられていたプロモーション施策は店頭やSNSとの繋がりがなかなか見えにくいものでした。オンライン(ECサイトとSNS)とオフライン(店頭)が相互に連関しながら、日比谷花壇全体で一貫した顧客体験をつくることをまず考えました。
では、日比谷花壇のブランドエクスペリエンスをどのようなものにしていくか。私たちが提案したのは、店頭の認識を「花を購買する場所」から「時節を街にアナウンスし、オンラインへの誘導を促す場所」へと変化させるというもの。「感謝を伝える日」として、オンライン・オフライン双方に使用できるデザインを検討していきました。
感謝のつながりを表すチェックパターン
プロモーションのビジュアルをつくっていくうえで私たちが目指したのは、「シンプルかつボールド」なデザイン。今回の目標は、「誰でも再現できるロゴ」を考えることでした。誰でも再現できるデザインとすることで、日比谷花壇の社員や店舗スタッフが自分のものとして説明し広げていけるように、簡単で親しみやすいものが必要だと私たちは考えました。
「シンプルでボールドなデザイン」を基準として採用されたのは、「つながり」をチェック柄で表現した案。母の日・父の日が「私→母」「私→父」という一方向の動きだけでなく、さらにその先に広がりやつながりをもっていることを表現したものです。「母」「父」の漢字のオリジナルロゴと、その延長線上で展開されるオリジナルのチェックパターンをデザインをしました。これらを共通した見え方でデザインしていくことで、母にも父にも同じように感謝が伝えられるように、という思いを込めています。
また、「感謝の気持ちはつながっていくから」というキーステートメントも併せて弊社で担当し、こちらも「母の日」「父の日」共通で使用しています。
展開可能性が高く、シンプルで覚えやすいデザインは、オンラインストアやインスタグラム等のオンラインからオフラインの店舗をつなぐ役割を果たします。
祝祭感を高めるリソグラフの活用
制作にあたっては、日比谷花壇の方々に毎週私たちのオフィスに来ていただき、実物を確認しながら調整を進めていきました。
毎回その場でモックアップを一緒に作成することでスムーズに議論できるだけでなく、大きな目標を共有しながら共創する関係も生まれました。モックアップを元に話し合いの場でロゴや画像の細かな位置を検証・調整できたことが、本プロジェクトの成功の秘訣とも言えるでしょう。
実制作にあたって私たちが注力したのは、印刷表現でした。リソグラフによって印刷したチェックパターンを素材として使用することでアナログなかすれ感を表現。チェックパターンに暖かみを生み出すとともに、母の日や花を買うことの祝祭感を表現しました。
ポスターに限らず袋やカードなど、制作物は22種類にも及んだため、印刷する素材が異なると各商品の色を合わせることが難しいことも課題のひとつでした。店頭には各商品がまとめて陳列されることが想定されるため、多量のサンプルをもとに色校正を重ねることで、一体感のある空間が生まれました。
クライアントにデザインを“浸透”させる
いざ母の日のシーズンが近づくと、キービジュアルや制作物がウェブや店頭に広がっていきます。すべての店舗の陳列やプロモーションを私たちがコントロールすることは難しいのですが、誰でも再現できるシンプルなチェックパターンを採用したことで、思わぬ広がりも生まれていきました。
店舗スタッフの方々が店頭の黒板にチェックパターンを描いたり、なかには自身のネイルにチェックパターンを取り入れるスタッフの方が現れたり──ただ一方的に私たちがクリエイティブを提供するのではなく、店舗へとデザインが浸透したからこそ、多くの方が主体的に使いこなしてくれるクリエイティブが生まれたのです。
今週日曜の父の日においても、チェックパターンを連動させたデザインが展開されています。しばしば母の日の陰に隠れてしまいがちな父の日ですが、母の日でも父の日でも花を贈る楽しさや花をもらう喜びは変わらないもの。このプロモーションが、大切な人へ花を贈るきっかけとなることを私たちも願っています。
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