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#8 クラウドファンディングを振り返る 前編

そういえば、noteではきちんとした報告をしていませんでしたが、Rigelでおこなったクラウドファンディング『甲府の人も街も輝かせたい!亡き店主が想いを込めたジュエリーショップを再開したい』は、目標金額の80万円を上回り、のべ120人の方に合計913,500円のご支援をいただきました。
本当にありがとうございました。

そして先日、リターンをすべて発送し終えました。
リターンの履行が終わったわけではありませんが、郵送すべきものはすべてやったはず。ちょっとひと息という感じです。
(まだ届いてないんだけど!という方はご連絡ください(汗))

というわけで、ここらでクラウドファンディングのことを振り返っておこうと思います。
今後のためというのもありますが、「クラウドファンディングってどうなんですか?」というご質問も時々いただくので、ご参考になれば、というのもあります。
なんとなく世の中「クラウドファンディング素晴らしい!」「新たな時代の新たな資金調達!」的な空気もありやなしやですが、何事もいい面もあればそうではない面もあります。
せっかくなので、実際にやってみてわかったいろんな面をお伝えできればと思います。

なにが嬉しいって応援してもらえるってなにより嬉しい

まず、ご支援いただいた方には、100%、一点の曇りもなく「感謝」の気持ちしかありません。
120名もの方が、現実的にお金を、それもコンビニのお釣りを箱に入れる程度の額ではなく、贅沢なディナーでもできそうな、スタバのフラペチーノが10杯以上飲めそうな額をポチッとしていただいたのですから、本当にありがたいことです。

もちろんリターンを設定しているとはいえ、純粋な買い物とはまったく違う視点で選んでくださったのは明らかですし、つまりそれだけ「支援」の気持ちを込めてこださったのだと思うと、イスラム教徒ばりに拝み倒したい気分です。
この場合のメッカの方角がわからないのでやめておきますが。

支援していただいた方の内訳としては
・初代店主順子さんの友人含め、Rigelの常連さんなど:5割
・2代目店主(つまり私)の友人の方々:4割
・その他:1割
という感じだったので、やはりRigelの存続を期待する方や、順子さんへの想いをお持ちの方が多かったというのが、達成できた要因だと思います。

そして、自分でも意外なほど、もしかしたらお金以上に嬉しかったのが、支援に添えてくださった皆さんの応援の言葉です。
普通の人間が普通に生きていて、大勢の人から「頑張ってください!」「応援してます!」と言っていただく機会などそれほどありません。
自分自身も、あんまり他人を褒めたり励ましたりするのが得意なほうではないので、皆さんからのポジティブな声が、新鮮であると同時に、思っていた以上にグッときてしまいました。

本音を言えば、「うわぁぶち上げてしまったなぁ」というのも感じてまして、これだけ支援していただいた以上、簡単には辞めれんなぁ…という怖さも感じています。
なにが起きるのがわからないのが人生、根拠のない約束はできません、という逃げを打っておきつつも、できるだけ皆さんの期待に応える努力はしていきたいと思います。

一方で、実際にやってみてわかった、なかなか大変なこともいくつかあります。

なんやかんやでかかる費用をあなどるなかれ

ここからいきなりビジネス講座っぽくなりますがご了承ください。

まず前提として、クラウドファンディングといっても、その種類はいくつかあります。
・購入型
・寄付型
・投資型
このうち、一般の皆さんがよく見かけているのは「購入型」というやつです。
数十万とか数百万円の募集で、リターンでなにがしかの商品やサービスの提供が設定されてて…というもの。

購入型を提供しているプラットフォームサービスでいうと
・CAMPFIRE ←今回Rigelではコチラを使いました
・READYFOR
・MAKUAKE
・FAAVO(運営会社はCAMPFIREと同じ)
あたりがメジャーでしょうか。

投資型や寄付型は、またそれぞれ違った特徴があって規制される法制度も違ったりするようですが、ここでは、前提として一般的によくお見かけする「購入型」についての話をします。

さて、クラウドファンディングで●十万集まりました!●百万達成しました!と見ると、なんとなくその金額がそのまま本人に届いている印象になりがちですが、実際にはなんやかんやかかって、自由に使えるお金はその一部です。

主にかかる支出は
①手数料
②リターンの原価
③外注人件費  

①手数料
他人がつくったプラットフォームを利用させてもらい、集金や情報拡散をしているわけですから、さすがに無料というわけにはいきません。

ではこの手数料、いくらくらいなら納得できますか??
実際に私たちがいくら支払ったかはちょっとナマナマしいので伏せますが、各サービスのHPに載っている情報を見てみると
・CAMPFIRE 17%
・READYFOR 12%or17%(プランにより異なる)
・MAKUAKE 20%
*実際にはキャンペーンなどでもうちょっと低くなったりします。私たちももうちょっと少ないです。

なかなかだな…と思う人はけっこういるのではないでしょうか。
例えば、クレジットカード決済の手数料はだいたい3%、ホテル予約サイトだとairbnbが10%、booking.comや楽天トラベルなどで13%〜15%くらいです。
ホテルの予約サイトって世界全土を網羅してますし、翻訳などのサービスもついてます。
それに、宿泊を管理するのってシステムとしてかなり複雑らしいのです。
それでも事業者にとってはけして安いとはいえない手数料ですが、クラウドファンディングはこれ以上なのですよね…。

しかも、ホテルの予約サイトがそうであるように、もともと自分たちのことを知らない人が、そのプラットフォームを通じて存在を知ってもらえて、予約や支援をしてくれるというのであれば、ある程度は投資効果もありそうですが、上述の支援者の内訳を見ていただければわかるように、現実には未知の支援者があらわれたというよりは、あらかじめRigelなり私自身なりを知ってくださっていたからの支援がほとんどです。
こうなると、例えば銀行口座を公開して寄付を呼びかけていたら?お店に募金箱を置いていたら?という想像もしないではありません。
実際に私の知人には、手数料を知ってバカらしくなり、自分のオフィスに募金箱を置いた、なんて人もいました(笑)

もちろん、どこまでプラットフォーム側の協力を引き出し、認知を広げられるかは企画の面白さや完成度にもよるので、私たちがそこまでに至ってなかった…と言われればそれまでですが。

②リターンの原価
なにをリターンにするかによってかなり幅がありますが、なにかをする以上いちいちお金はかかるのが世の常。
たかだか「お礼状」と言っても、便箋を買ったり、オリジナルデザインのハガキをつくったり。送料もかかります。
誰かになにかをお願いすれば、厳密には人件費もかかります。

私も、実際にやってみて一番苦戦したのがリターンの設定です。
ジュエリー屋らしくジュエリーをリターンにしたいものの、どうしても原価がかかってしまいます。
作家さんたちの理解とご協力でなんとか最低限の原価で成立させたというのが、リアルなところです。

昨今は、クラウドファンディングの案件数も増えていて、ある意味で「競合」が多数存在します。
そのなかで魅力的なリターンを設定しようとすれば、どうしても原価も高くなりがち。一筋縄ではいかないものです。

③外注人件費
これは、いっさい使わないでやろうと思えばできないでもありません。
ただ、上述したように、昨今はクラウドファンディングの案件自体が増えているので、募集ページの文章、画像、デザイン、SNSでの呼びかけなどなどのクオリティもある程度のレベルにする必要があります。
自分で長文が書けて、写真が撮れて、illustratorでちゃちゃっとデザインができちゃうような人はいいのですが、これらをあれこれ人に頼んでいたら、どんどんお金がかかります。
さらにはクラウドファンディングのコンサルティングや代行を依頼するケースもあるようで、こうなってくるともう…という感じも。

私の場合は、文章を書くのは(クオリティはともかく)さほど苦ではないのと、趣味レベルの写真でどうにかこうにかよしとしました。
それでもillustratorまでは手に負えず、一部の作業は友人に依頼しました。
格安にしてもらったとはいえ、なんやかんやかかるんだなぁというのが実感です。

お金以外のリスクもあなどるなかれ

実際にやってみた感想として、お金以外にもそれなりに葛藤したことはありました。
私自身はさほど大きな問題にはなりませんでしたが、覚悟しておくべきことはあると感じました。

①あれこれさらけ出さないといけない
クラウドファンディングの肝はやはり「共感」。
となれば、自分は何者で、どんなことをしたくて、何を目指しているのか?それなりにオープンにしなければいけません。
私の場合はもともとわりとさらけ出しちゃうタイプなのであまり気になりませんでしたが、人によってはストレスのある人もいるかもしれません。
それと、クラウドファンディングのなかには「震災で失われた○○を…」とか「○○で悩む人のために…」など、社会性が高いからこそ、一方でデリケートなテーマが含まれている場合も多々あります。
Rigelの場合、順子さんのことを勝手にあれこれ語る(言い方を変えれば利用する、もしくは晒す)のってどうなんだろう?という迷いはありました。

②身近な人からお金を集めるってけっこう怖い
お金が余って困っているという人でもない限り、一般的な社会人にとって、数千円や数万円の支援はそれなりの金額です。
その人たちからお金を受け取るということは、やはり相応の重みがあります。
金額に見合うリターンを設定しているとしても、そこはやはり、いい加減に扱うことはできないし、簡単にやめることはできません。
心地いいプレシャーや責任感と受け止められるようならいいですが、足枷やストレスになりそうなら、考え直す必要があります。

③単純にラクではありません
当然といえば当然ですが、やるにはなかなか手間はかかります。
関係者と調整し、リターンを決めて、募集ページを作成し、審査が通るまでもなんどかやり取りが必要になります。
開始してからはSNSなどで逐次発信し、告知チラシをつくったり、質問に答えたり…。〆切後は確実にリターンを送ったりお知らせを流したり…。
単純な作業といえど、支援者に漏れなく間違いなく対応するのは、マメな性格でなければ少々キツイかもしれません。
代行業者というものが存在するのはわかる気がします。

あれこれネガティブなことばかり書いてしまいましたが、つまり、ただひたすらに手元にお金を残したいだけなら、クラウドファンディングは難点もあるということ。

では、どんな状況だとおすすめなのか?どういうところに気をつけるといいのか??私なりに発見したことをお伝え…したいのですが、かなり長くなってしまったので次回!

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