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挑戦|エッセイ|「早起き」

4時前に目が覚める。鼻が詰まって息が苦しい。鳥の鳴き声がやたらと耳に入って、得意の二度寝ができない。色々試すが寝れない。

観念して起床。昨日の洗い物が異臭を放つ。
「仕方ない、洗おう。」
洗い始めれば、昨日の暑さを残した部屋の中で、水を触るのは気持ちいい。
「外が、想像した物語に似てる。」
最近始めた物語の想像が、外の様子と重なる。曇り空と早朝と、今の自分の声を聞ける感じ。
「実際に見てくるか。」
と散歩を決意。珍しく活動的である。

洗い物を終えて、着替えるために寝室に向かう。寝室に入ったあたりで、案の定
「いや、こんな早くに行かなくてもいいんじゃないか」
“何もしないのが安全マン”が現れる。
「あ、結構ですー間に合ってますー」
と横をするり抜ける。今日はうまくかわせた。

ここ1週間の中で、最速かつ円滑に、最低限の身支度を終えて家の外へ。予想通りの情景に安堵しながら、近所の緑豊かな公園まで歩く。淡い桜の季節は終わった。新緑と凛とした白の花が、寝ぼけた目にそっと目覚めを与える。

緑豊かな公園は、誰もいない。狙い通りなので、心の中でガッツ。まるで馴染みの場所のように、湿った公園を歩く。
時々、木の間で蜘蛛の巣に引っかかること以外は、とても優雅だ。
今にも雨が降りそうな空気も、豊かな水分が新緑を鮮やかにするようで、なんかいい。

約1週間、亀が甲羅に籠るように過ごした体は、緑の小山の中を往復しただけで、なかなか息が整わない。公園の中の東家は想像より綺麗だった。ベンチに腰をかけて、息を整える。鳥のさえずりが、ベッドで聞いた時より随分優しい。弱った体を励ましてくれるようだ。

帰路は何だか味気なく、緑の力を恋しく思う。家の中の澱んだ空気を入れ替えて、水をコップに1杯。
これを書きながら、「ああ、いい朝だったな。」

こういう朝をなんと言えばいいだろう。
そして、毎日続けようとするとちょっと違うもどかしさは、
誰と共有できるだろう。

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