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ドラマはいつも日常の中にある〜自分流まちの原石の磨き方〜

高校時代、演劇部に所属していた私。台本は顧問の先生が自作していて、これがものすごく面白い。3年に一度は必ず高校演劇の全国大会に出場し、その芝居が県外や他校で何度もリバイバル上演されるように、この先生がつくる芝居のファンはとにかく多かった。

そんな顧問の先生が口癖のように話していたことを未だに良く覚えている。

「ドラマはいつも日常の中にある」

どこにどう光を当てたら、ごく普通の日常がこんなにも面白く、人の心を惹きつけるものになるんだろうか?

そんな疑問を持っていた高校時代から時が経つこと16年。いま、まちづくりの現場で、あの頃の先生と全く同じことを思っている。

知らなければ見えない。感じない。

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当たり前のように暮らしの中にあるものは、何か余程のことがないと不思議に思わない。そこにあるのが当たり前。だってずっと昔から、いつもあるものだし。

でもそれって、外から来た人がみたらすごく驚いたり、心を掴まれたり、不思議に思ったりすることがある。

上の写真は、今年中に我が家が引っ越す物件のすぐ近くにある田の神さあ。横には水神さまも祀られていて、思いっきり道端にあるのにめちゃくちゃ神聖な雰囲気を醸し出している。

「なんだこれ?」と思って調べてみると、なんと!市の文化財にも指定されている200〜300年の歴史がある田の神さあだった。

調べる過程で、この辺りが江戸時代に大規模な新田開発があったこと。有機農業を大きくやられている同年代の移住者ご家族がいること、毎年9月はどんど焼きをやっていて地域の一大行事なことなどなど、このまちに関するたくさんの情報を知った。

もっと知りたいと思って地元の人に聞いてみると、「んー、田の神さあは珍しくないからねえ。気にしたことないよ」

そうそう。そうなんだよね。地元の人たちにとってはなんでもない日常の風景の一部であって、気にも留めないようなものなんだよね。

でも、じつはこの田の神さあが何百年もの歴史があること、あたり一面に広がる田んぼや畑は江戸時代の人々の手でつくられたこと、どんど焼きなんて今時珍しくて外の人にとっては一生の思い出に残るなんてことも、地元の人は知らない。

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一方で全国ほとんどの地域が過疎化やまちの衰退に苦しんでいる。これって、なんかもったいないなと思うのです。活用できるものは今そこにあるのに「うちには何もない。新しいものを作らんといかん。でも若手もおらん」ってなっちゃう。

「ちょっと待ったぁぁぁあぁぁ!!!!!」と言いたい。
あるある。そのすぐ足元に、磨けばいくらでも光る原石。そのまちらしさ。

でもそれってどうやって地元の人たちに気づいてもらおうか?
どうやって、このまちをもっと磨いていこうか?

「自分流まちの原石の磨き方」を少しだけご紹介します。

まずは歩き回って写真を撮りまくってみる

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普段は車や自転車でスイーっと通り過ぎているところに意外な原石が眠っているもの。見慣れたまちでもカメラやスマホを片手に歩いてみると結構おもしろい発見が転がっている。

「あ、今はやってないこのお店の看板、なんかレトロで可愛いなぁ」
「道端に綺麗な花がいっぱい咲いてる!側溝だと思ってたところは実は細い水路だった。水が綺麗だからこんなに花が咲くのか」
「え!今まで気づかなかったけど、この交差点って昔は橋だったんだ!ってことはこの道は川だったのか!!」

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そういうの発見し始めると、まちあるきって本当に楽しい。
私は今、鹿児島県霧島市横川町(過疎化が進む中山間地域)の活性化にどっぷり関わりはじめて1年。未だに同じルートを歩いても新たな発見があって、このまちあるきは観光目的になり得るぞということで、地元の方々と一緒にまちあるきツアールートを開拓中である。

「何を写真に撮ればいいの?」というそこのあなた。何でも良いのです。かわいいなと思ったことや、何だこれ?と思ったこと、ちょっと違うなと違和感持ったこと、これは悲しいなぁと感じたことも。少しでも感情が動いたらとりあえず写真撮る。

撮った写真を地元の人に見せながら昔話を聞いてみる

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お次は、”写真を元に話を聞いてみる”。これ重要。
「この前見つけたんですけど、これって何ですか?」
その一言だけかければ良し。あとは大体の方がいろんな記憶の引き出し開けて喋ってくれる(そして止らない笑)

うちのまちには何もない〜寂れてる〜なんだかんだと普段はボヤいていても、やっぱり地元のこと好きな人って結構多い。若い時の思い出もあり、大満足ではないけどそれなりに今の環境に満足して暮らしている。

「ここは昔、家具屋さんでね。新婚の頃にここで家具を揃えたわぁ〜」
「実はこのまちは〇〇の発祥地でね〜」
「子どもの頃はこの川でよく釣りしたもんだよ。夏は川遊びも楽しいよ」

そーんな”地元うんちく”が次から次へと出てくる。一つ一つがこのまちの歩んできた歴史。人って何に心動かされるかっていうと、”ストーリー性”なのだ。
たとえ見慣れている生まれ育った地元のまちであっても、自分が生まれる前のまちの出来事・ストーリーを知ると、これまでと見え方・感じ方が変わってくる。

人ってある程度の歳になると自分のルーツを知りたくなる時期があると思うんだけど、そういうのと似てるのかも。そのまちのルーツを知ると、全然違う感覚を持つようになるんだよね。

外の人を連れ回してみる

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最後は、自分の友人でも職場の同僚でもいいから呼んできて、自分が歩いてたくさんの発見があったルートを連れ回してみること。(ただし、最初はまちあるきとかが楽しめる人かどうか選んだ方がよいかも。)
できれば、そこに地元のうんちくを語れる方も呼んで、即席まちあるきツアーをやってみる。

すると……自分も意外なところで外の人からの反応が起こったりとか、自分が「いい!」って思ったもの、地元の方が「ここは語れる」という場所に外の人もいたく共感してくれたりする。

それって思った以上にすごく嬉しい出来事で。そういう発見・新しい視点の一つ一つを「もっと楽しめるようにするにはどうしたらいいだろう?」という視点で脳みそ絞って工夫してみる。それが”原石を磨く”ってことだ。

もしも最初に自分だけでカメラ片手にまちを歩く時、うまくまちの原石を見つけられなかったら、その段階から外の人に協力してもらってもいいかも。
そのまちの日常を知らない”よそ者”の視点・感性は侮れない。

まちの原石を見つけると、何よりも自分の日常が楽しくなる

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まちを自分の足で歩いて感じたことを写真に残し、写真を通して地元の方といつもはしない話をして、友人・知人を連れてまちを案内してみる。

「まちあるきツアーやる」っていうと何か大掛かりで大変そうな気がするけど、ちょっと変わったお散歩くらいの気持ちでやってみると良いのではと思う。

そこで見つけたことは、自分が過ごす毎日を少し違う色に変えるかもしれない。それをどんどん磨いていくと、自分だけじゃなくて周りの人たちの日常も、少しずつ色鮮やかに変わっていくんじゃないかなと思う。実際、私は今そんなことを経験している。

皆さんも気になるまちがあるなら、試してみてはいかがだろうか?

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