【勝手におすすめ本⑥】総合和声 実技・分析・原理

私の独断と好みで選ぶ音楽書を、勝手に紹介するシリーズの第6回。

今回紹介するのは、「総合和声」です。

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【島岡譲ほか著  「総合和声 実技・分析・原理」;音楽之友社 (1998)】


一応、このnoteのページは「楽典やり直し講座」なので、一度楽典、和声など音楽理論を勉強したことある方を対象に書いているつもりですが、この本は、そういった上級者のための、もう一歩進みたい本としてオススメしたいと思います。

よく、音大を卒業されてから、やっぱりもう一度和声を勉強しなおしたい、という方がレッスンに来ますが、話を聞くと、皆さんバス課題やソプラノ課題をやりたいというよりは、曲のアナリーゼができるようになりたい、そのために書いてある楽譜から和音が、和声がわかるようになりたい、という希望の人ばかりです。

そもそも「和声」とはなんだろう・・

そんなことも含め、この本は「和声」という観点から音楽を作る、分析する、知る、考える、という全てが一度にできる夢のような一冊です。
まさに総合和声!


かなり分厚いです(^^;
(全533ページ!!)

この本の特徴、特色

先ほども書いたように、この1冊で「和声」をとことんいろんな方面から勉強できるのが最大の特徴だと思いますが、もうちょっと詳しく内容を見てきましょう。

この本はタイトルにもあるように、「実技篇、分析篇、原理篇」の3つの部分から成り、「実技篇」で和声課題の実施、「分析篇」で楽曲の和声分析、「原理篇」で和声の概要、という構成になっています。



①序章、実技篇

よくある和声の教科書に「和声 理論と実習Ⅰ~Ⅲ」(音楽之友社)がありますが、
(1巻が赤いので赤本と呼ぶ)
そういえばあれと表紙のデザインがそっくりですね!

あれとこれとは全く違う本ですが、あの「和声 理論と実習」とほぼ同じやり方で、Ⅰ~Ⅲ巻を凝縮したような内容なのが、この「実技篇」です。

なので、ざっと復習したい人にはもってこいの分量だと思います。

実技篇の前に「序章 和声学習の基礎」というのが数ページついているのですが、ここもおすすめポイントの一つ!
まず和声の課題を実施したり、分析したりする前に、これは押さえておきましょう、という前書きがコンパクトにまとまっています。ここだけ読んでも良い復習になります。

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(前掲書;p.15)


②分析篇

一番薦めたいのは、この「分析篇」かもしれません。
実際の曲における和音の使い方、和声進行を多くの譜例から勉強できます。

「実技篇」で勉強する内容とリンクしており、並行して使うこともできます。なので、課題も実施して、その後同じ単元の分析篇のページをやるように勉強しても良いと思います。

実曲の譜例からの分析では、和声分析できるようになるだけでなく、曲をたくさん知ることができ、作曲家や時代の特徴も捉えることができます。とにかく、実曲の分析はいいことだらけです!

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(前掲書;p288, 289)
見本と解説、その後分析の課題があります。


③原理篇

「原理篇」はここからもう一歩進みたい人への読みものです。
中世・ルネッサンスの頃から現代までの和声の原理をざっとまとめてありますが、難しい内容ではありますが、とても興味深く、私自身は楽しく読みました。
とにかく「ゆれ」という言葉がそこら中に出てきて、和音や調の「ゆれ」によって安定、不安定などの力関係が起こる、とのこと。特に当たり前のように接してきた音楽も、このように構造を言語化すると、なるほど、と納得。これを読むと、機能和声でない時代の和声にも興味が出てきます。
…という私の勝手な感想です(^^;


④別巻、実施例を上手く使う

多分、ここまで読んできて、興味のある方が一番に心配することは、
この本で独学できるのか?ということだと思います。

私は、レッスンでこの本を使っていますが、先生がいて、解説があって、添削もしてもらうのが一番いいとは感じています。
しかし、この「総合和声」には「別巻」という、実施例の本が出ているので、それも使えば独学も十分できると思います。


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特に和声課題の実施例は正解が一つではないので、本当なら誰かに見てもらった方がいいと思いますが、分析は、この別巻と照らし合わせながらやれば初学者でなければ理解できると思います。


あと、おまけですが、
別巻のお得な使い方(^^♪

(1)実技篇の実施例の和声記号を隠して、和音記号を書く練習に。
(2)コードネームを書く練習に。
(3)四声体の和声聴音に。

いろいろ使えます!

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(写真:別巻p.41)


まとめ

私は大学院時代にこの本を使い、そこから15年くらい経っているのですが、今までいろんな理論関係の本に出会ってきた中でも、一番読み返し、一番役に立っている本です。
特にアナリーゼに於いて、「和声」の観点から分析する時には、この本の「分析篇」をやったことが土台になっています。

ちょっと、文章が難しいのが欠点かもしれません(^^;
しかし、何度か読んでいるとクセのある文章に慣れてくるので大丈夫かと。

値段も、6000円くらい、別巻も8000円くらい(現在)、と結構しますが、
絶対元が取れる、非常にコスパの良い本だと思っています。
時代が変わればわかりませんが、まだまだこの本で勉強できることはいっぱいありそうです!(^^)



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