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無自覚に、期待に応え続ける、を終わらせる

「君には期待しているよ!」

ポンと肩を叩く上司と、期待をされて嬉しそうな若手社員。

そんな爽やかな昭和のサラリーマンドラマが懐かしい。

この冒頭のシーンのように、

「期待」

が誰かを鼓舞する言葉になることもあれば

ならないこともある。

今日は、「ならないこと」について書いてみる。

期待をされたのに応えられなかった6年生


勉強も運動もそれなりにできて聞き分けの良い優等生だった私。

小学校の頃はずっと学級委員だった。

忘れもしない、小学校6年生の秋頃のこと。その時も学級委員だった。

私は担任の先生に音楽室に呼び出された。

ピアノの横に先生が立っていて、私に告げる。

「〇〇ちゃん(その当時、クラスにお友達がいなくていつも独りぼっちだった子)が、卒業までに、みんなと仲良くできるようしてもらえる?

りえちゃんならできると思う。先生、期待しているし、応援しているから。」

うろ覚えだけど、そんな言葉だった気がする。

先生は私に期待を寄せてくれていた。

「よし、頑張ろう!」

と当時のりえちゃんは思った。

それから毎日、その〇〇ちゃんがみんなの輪に入れるように、声をかけたり、みんなに働きかけたり、私なりに色々と手を変え品を変え、やってみた。

卒業までのカウントダウンは、私にとっては恐怖だった。なんとかしないといけない、先生の期待に応えないと・・・!〇〇ちゃんがみんなと仲良くできるように私が頑張らないと・・・!!!

けれど、状況は変わらなかった。

「先生に期待してもらったのに、できなかった・・・」

卒業式の日、先生の顔を見れなかった。

先生の期待に応えられなかった自分。
先生を落胆させてしまった自分。

「私には人を変える力はない」

そんな思い込みが作られた瞬間だった。

私の力不足ももちろんあったかもしれないけど、今思えば、先生の要望もなかなかハードルが高いものだったなぁ~と思う。それだけ期待を寄せてくれたのはありがたいことだなぁ~とも思う。

今となれば、ね。

先生も私1人に任せたわけではなく、先生なりにも色々と策を練って〇〇ちゃんやクラスの子達にも関わっていたと思う。

でも、12歳の私には、その期待はあまりにも重かった。

「学級委員なんてやるもんか。リーダーなんてやるもんか。」

その後の私は、リーダーを避ける人生を歩むことになる。リーダーを支える副リーダーやギリギリやれても、リーダーはやれなかった。

人の期待に応えることなんて、人を動かすことなんて、自分には到底できないと思っていた。

社会人になっても続く、期待に応えるゲーム


「リーダーをやらなければ、期待に応えなくて済む、人を落胆させなくて済む。」

そう思っていたのに、その後の人生も、リーダーはやらないにも関わらず、「期待と落胆のゲーム」はさらにレベルアップして私を待ち構えていた。

それは社会人になってから顕著になった。

新卒で入った会社(メーカー)と転職した会社(広告代理店)で10年間営業をしていた。

営業職は、会社の売り上げを背負う存在。

お客様からご発注をいただき、問題なく商品やサービスをお届けし、お金をいただくお仕事。

そのプロセスにはもれなく

「お客様の期待」

という目に見えないエネルギーが付きまとう。

「相見積り」「コンペ(コンペティション)」で、競合他社と価格と品質について横並びで比較される。

「あなたの会社で決めようと思うけど、もう少し安くならない?」
「あなたの会社で決めようと思うけど、このサービスもつけられない?」

当所の提案から価格を下げることや、オプションサービスをつけることもよくあることだった。

なんとかコンペで勝って発注をいただいたとしても、お客様の期待に沿えないようなトラブルが起きないよう細心の注意を払い、お客様の期待を超えるような120%以上のサービス提供ができるようにと、常に、尽力する世界。

そして、120%のサービスが提供できて、

「あなたに発注して本当に良かった!」

と喜ばれて、継続のご発注が決まった矢先には、前回の120%のサービス品質がデフォルト設定(初期設定)となり、次にはさらに上のサービスを期待される。

1回目:120%

2回目:120%の120%

3回目:120%の120%の120%

お客様の期待に添えるように、他社に乗り換えられないように、必死に120%の更新をし続ける。

リーダーをやらなければ、人の期待に応えないで済むし、落胆されないで済む。

そう思っていた私にとっては、想定外だった。

「リーダーやらなくても、期待に応えるゲームは続くじゃん・・・」

独立しても続く期待に応えるゲーム


私は10年続けた営業職を辞めた。

会社は好きだったし、仕事も好きだったし、人と一緒に切磋琢磨して協働しながら働くことも好きだったし、目に見える成果を関係者と分かち合うことも好きだったし、お客様に喜んでもらえることももちろん好きだった。

営業がきらいだったんじゃない。
会社がきらいだったんじゃない。

でも、私は、「民間企業で営業職は向いていない」と思い、営業職の歴史に終止符を打った。

(今では、この10年間の営業職が今の仕事にすごくつながっているし、たくさんの事を学べたし、尊い経験だったと思っている。あの経験がなければ、間違いなく今の私はない、そう自信を持って言える。ありがとう、営業頑張った私。)

その後、学校法人の事務職員に転職した私。営業職から事務職への転身。結婚・出産を経て、2019年に私は独立した。

「組織という所属がなくなり、独立して自分で自由に仕事ができる!!いえーい!」

とはならなかった。

いや、正確には、なった部分もあるけど、ならなかった部分もある。

最初はキャリアコンサルタントとして、業務委託で大学や企業さんでキャリア面談や採用支援のお仕事をしていた。

時給〇〇円、日給〇〇円

のお仕事だ。

キャリアコンサルタントは山ほどいる。国家資格だけど、資格保持者は自分が思っている以上にたくさんいるということを知った。

今いただいているお仕事も、いつ他の人に置き換えられるかわからない。ミスしたら、次の案件のオファーは入らないかもしれない。

時給〇〇円、日給〇〇円に対して、それ以上の価値を提供できているだろうか?

あ、また、営業をやっていた時と同じような感覚・・・。

私はまた「120%の更新を続けるゲーム」のスタートボタンを押してしまったのだ。

「さすが中村さんです!」

「中村さんのレポートはわかりやすくて読みやすくて、本当に助かります!」

「中村さんは話しやすいのでまた中村さんにお願いしたいです」

そんな言葉をもらうたび、「喜び」よりも「安堵」を感じていた私。

期待をされる=落胆されないように頑張らないといけない

独立してからもそのゲームは続いていた。

2021年、プロコーチの資格を取り、お金をいただいて、コーチングを提供するようになった。

コーチングは基本的に継続して受けていただくものなので、継続する前に、「体験セッション」をいうものを受けていただき、継続するかの有無を決めていただく場がある。

「実は、あなた以外にも、何人かのコーチの体験セッションを受けてます」

「あなたと〇〇というキャリア支援の会社のサービスと迷ってます」

そんな言葉を聞こうものならば

「なんとかして他のコーチや同業サービスの会社と差別化して、クライアントさんの期待を大きく上回るセッションをしなければ!!!!」

と肩に力が入る。

そして、そういう体験セッションは大抵上手くいかない。

結果、選ばれない・・・。

「あれ?私、もう学級委員じゃないのに、営業職でもないのに、まだこのゲームやってるの??」

しばらくして、ようやく、そんな事に気が付いた。

そのゲーム、いつまでやるの?


学級委員(リーダー)にはならなくても
営業職を辞めても
組織勤めを辞めても

「期待と落胆のゲーム」は終わらなかった。

個人事業主としてやっている仕事を全部やめても、きっとこのゲームは終わらない。

外側の出来事を変えても、ゲームは終わらない。

全部、私の内側の問題だったから。

全部、自分でやってたんだよね・・・。

頼まれたことに対して、「できません」とか、「不安です」とか、「やり方を教えてください」とか「協力してほしいです」とか、いくらでも言えたはず。

なのに、それをできずに、1人でいつも背負いこんでた・・・。

さらに、私に期待をしてくれたお相手も、「120%を更新し続けてくださいね」なんて一言も言ってないのに、勝手にそう解釈して背負いこんでいた。

だから、相手の私に対する期待値よりも、私が想像して背負いこんでいた期待値の方が大きくて、1人で苦しんでいた・・・。

さらに、

「期待に応えれば認めてもらえる」
「期待に応えればまた依頼してもらえる」

そんな、うま味調味料に味をしめちゃって、「味の素(うま味調味料)」をかけないでお料理できない、みたいな感じになっちゃったんだよね・・・。

素材そのものの味が本当は素朴で一番おいしいのにね。

うま味調味料は中毒性があるから、それがないと物足りない、ってなってしまってたんだよね・・・。

それなのに、突然

「もううま味調味料には飽きた!素材の味を大事にしたい!」

って言いたくなって、うま味調味料の在庫を一斉処分しちゃう。

みたいな。

急にリセットしたくなって、全てを手放したくなって、燃えつきてしまって、引きこもっちゃう。

繰り返されるこのループに、私自身が飽きてしまった・・・。

自分も辛いし、周りも辛いし、良い事ないよね。

期待に応えなくても大切な人達は離れていかない


でも、そもそも、なぜ、「期待と落胆のゲーム」にここまで熱中してしまったんだろう?

それを考えるとね、

「人に必要とされたい」

だったんだなって気が付いた。

ん?

ちょっと違う。

必要とされたいのではない。
それがゴールではない。

人に愛されたい

こっちだ。
これが欲しかったんだ。

究極的には、

私は愛されている

を実感したかったのだ。

最終的にほしいものは、

・たくさんお金を稼ぐことでも

・高い評価を得ることでも

・必要とされること

ではなかった。

自分がただ自分のままでそこに存在していいと思える安心感
自分はそのままで愛される、大切にされる存在だと思える安心感

それが一番感じたかったものだった。

でも、それが一番ほしかったのに、「期待と落胆のゲーム」をやっている限りは、悲しいかな、それを永遠に感じることはできないルールになっていた。

「落胆されないために、期待に応え続ける」

それをやっている時点で、ありのままの自分で存在してはいけない、をやっているということだから。

***

それがわかってしまってから、私にとっては一番怖いチャレンジをしていった。

「できません」
「やれません」
「期待には応えられません」

を言うこと。そしてそれを体現すること。

できない自分でいる。
やれない自分でいる。
期待に応えない自分でいる。

「期待と落胆のゲーム」をやっていた古いOSの自分が疼いて、

「やります!!!」

を言っちゃう時もあったのだけど、それでも、信頼できる人達に対しては、「できない」を正直に言ってみたり、できないままの自分でいることをやってみた。

すごい怖かった。

生まれたばかりの小鹿が一生懸命歩こうとしているみたいな、ブルブルしている感じだった。

でも、それを言ったところで、

「え、なんでできないの?」
「ちゃんとやってくれないと困るんですけど」
「りえちゃんにはがっかりしたわ」

なんて言う人は誰一人いなかった。

「そっか。わかった!じゃあ、どうやったらできるか考えようか」
「わかったよ。気持ちは受け取ったよ。一旦保留にしようか」
「できる範囲でいいよ。そこからまた考えよう!」

って言ってくれる人ばかりだった。

大切な人達は離れていかなかった。

ちゃんとありのままの私で存在して大丈夫なんだ、と感じることができた。

離れていくのは仕方ない。プレーしているゲームが違うから。


あ、でも、もしかしたら、心の中で

「期待に反して、りえさんたいしたことないじゃん。残念」

って落胆して、すーっと距離を置いた人もいるかもしれない。

でもね、それでいい。

私はそんなに万能じゃないし、聖人君主でもない。

ただ、自分のその時のベストは尽くすけど、自分以上の自分を出し続けることはできない。

それは長続きしないから、私自身にとっても、あなたにとっても、よくないの。

だから、そのままの、ありのままの私でいさせてね。

時には無理して期待に応えようとして頑張ってしまう私もいるけど、それも含めて、ありのままの私。

「期待した通りじゃなかったわ」

って思う人が離れていくのも、それも実はすごく悲しい。

本当は、みんなに愛されたいし大切にされたいから。

でも、それは無理。

この世の中は、同じゲームをしている人達同士でしか遊べないようになっているから。

違うゲームをしている人達同士では、マルチプレーができないでしょ?

私がプレーしたいゲームは

「どんな人でも、ありのままのその人で安心してその場に存在していられるゲーム」

キレイごとに聞こえるかもしれないけど、このゲームって、

優しい世界

なんだよね♡
あったかくて、落ち着く。

このゲームでは、それぞれが、自分良いところも悪いところも、光の部分も影の部分も受け止めあいながら、活かしあいながら、一緒により良いものを創っていくゲーム。

自分のすごく苦手なところは、それが得意な誰かがサポートしてくれて。

誰かの苦手を私の得意でサポートする。

お互いの得意と得意を掛け合わせて、ミラクルを起こす。

そんなゲームをやっていきたい。

***

私はこれからは

「期待と落胆のゲーム」

じゃなくて

「愛と調和のゲーム」

をやっていく。

数年前から何度も何度もそれを決め直しているんだけど、気を抜くとまた「期待と落胆のゲーム」をやってしまうから、

自戒を込めて、今回この記事を書いてみた。

過去の私へ。
今の私へ。
未来の私へ。

そして、これを読んでくださり、共感してくださる皆さんへ。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

今日も優しい世界が広がりますように。
愛と調和のゲームでまたお会いしましょう♡

*****

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