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なぜ、リディラバが「事業開発・政策立案」に取り組むのか?

こんにちは! 株式会社Ridilover 事業開発ユニットです。

この記事では、「事業開発・政策立案」に取り組む私たちが、今何を考え、どんな未来を目指しているのかをお伝えしていきたいと思います。

「リディラバって旅行とかwebメディアの会社でしょ?」というイメージをお持ちの方や、「社会課題をビジネスにするのって難しいよね?」という疑問をお持ちの方にご一読いただければ、幸いです。

※「事業開発・政策立案」って具体的に何をするの?という方は、こちらの記事をお読みください。
※2020/8/3タイトル含む一部更新しました。

「社会化」と「資源投入」

リディラバはこれまで10年以上にわたって、主にツーリズム(スタディツアー)とジャーナリズム(リディラバジャーナル)に取り組んできました。

これらの取組は、より多くの方が社会課題を身近に感じ当事者意識を持つことができるよう、社会課題の「社会化」を促す(当事者以外の人の関心を生み出す)事業といえます。

一方、さらに一歩進んで様々な社会課題を「解決」していくためには、意識や関心を向けるだけでなく、解くべき課題を明確化し、そこにヒト・モノ・カネを投下して具体的なアクションを起こしていく必要があります。リディラバではこれを、社会化のあとに必要な「資源投入」の段階と呼んでいます。

私たちはこの「資源投入」を、企業、官公庁、そして社会課題の現場で当事者に寄り添うソーシャルセクター(NPO、ソーシャルベンチャー等)の協働を通じて生み出していきたいと考えています。

例えば、子どもの貧困問題に対する新たな解決策として知られる「こども宅食」。運輸・物流の大手企業、地方自治体、NPO法人、財団法人等の複数のプレイヤーが協働することで、既存の支援から取り残されがちな貧困家庭に対し、食品配送とあわせて必要なサービスへ繋ぐアウトリーチ支援を実現しています。私たちは、こうした取組をさらに多くの領域で作り出すことで、より多くの資源が課題解決のために投入される社会の実現を目指しています。

ではなぜ今、こうしたセクターを超えた協働が求められているのでしょうか?

社会の成熟、行政の限界、市場の縮小

現代の日本は「成熟社会」であると言われます。戦後の高度経済成長・一億総中流社会を経て単純な物質的欲求の多くが満たされつつある一方で、より複雑・多様な問題が顕在化してきています。

こうした中、ソーシャルセクターだけでなく、パブリックセクター(中央省庁・地方自治体)・ビジネスセクター(営利企業)の役割が大きな転換期を迎えています。キーワードは、「行政の限界」と「市場の縮小」です。

パブリックセクターと「社会課題」

様々な当事者が、様々な事情を抱える社会課題。それをあえて類型化してみると、教育、福祉、産業、環境・・・どれも官公庁が専門の部署を持って長年にわたり取り組んできた領域であることが分かります。その中で培かわれたノウハウと、税制・法制という強力な権限、そしてなにより、国民・住民の生活を守るという思いを抱えた豊富な人材を有する官公庁は、社会課題解決に取り組む主要なプレイヤーであることは間違いありません。

しかし近年、「行政の限界」ということも言われるようになりました。人口減少・少子高齢社会の進展により、税収の減少は確実視される一方で社会保障やインフラ維持に要する費用は増大を続け、行政機関が機動的・創造的な活動を行う余力は失われつつあります。また、これまでの多くの公共事業は、農村に新しい道路を作るように、行政機関の特定の部署(例えば土木課)が解くべき課題とその対応策を事前に把握し、その仕様に合う最も低廉な企業に発注することを意味していました。

ところが、こうした行政主導の課題設定・縦割りの対応策では解決できない多くの社会課題が生まれているのです。その一例として、2019年6月に、政府を挙げての3年間の集中対策プログラムが策定されたことであらためて注目を浴びる、「就職氷河期世代の社会参画」を考えてみましょう。

「就職氷河期世代の社会参画」を考える

1700万人とも言われる当事者は、非正規雇用・無業といった表面的な雇用形態の問題の裏に、「ひきこもり」「路上生活」「身体・精神的な疾患」「学生時代の環境」「学び直しの機会」等の様々な事情を抱えています。また、当事者を取り巻く家族、地域コミュニティ、企業、従来の支援制度といった周辺環境にも、それぞれ固有の問題が存在します。

こうした問題に対しては、「道路がないから道路を作る」式の絶対的な正解はありません。当事者への就業支援が必要な場合もあれば、社会復帰を促すコミュニティの創設や、企業側の採用体系や価値観の変容、医療やリカレント教育といった対応が必要となる場合もあるでしょう。「就職氷河期世代の社会参画」実現のためには、省庁・地方自治体・民間企業、そして当事者団体等のソーシャルセクターが一体となった領域横断的・包括的な対応策が求められます。

行政をめぐる新たな動きとして取り上げられる、「新しい公共」や「大きな社会」構想といった行政機関の役割の問い直しや、スタートアップ企業やシビックテックとの協働による「官民連携・市民協働」の推進、PFS/SIBといった成果連動型委託契約の導入等も、このような社会課題の複雑化の中で求められているものであると言えます。

ビジネスセクターと「社会課題」

物質的欲求の充足や人口減少の激化は、ビジネスセクターにも大きな影響を及ぼしています。それは、「市場の縮小」という問題です。特にこれまで「大企業」と呼ばれてきた企業を中心に、中長期的な需要減少を前提とした新たな成長戦略を描く必要性が高まっています。

こうした中、企業が持続的に発展していくためには社会課題に正面から向き合う必要があるという声が聞かれるようになりました(環境省「すべての企業が持続的に発展するために- 持続可能な開発目標(S D G sエスディージーズ)活用ガイド -)。SDGsの実現や、社会課題の解決を経営計画に盛り込む企業も増えてきているようです。

「市場の縮小」の裏側で、新たな社会課題は生まれ続けています。高齢化の進展に伴う健康寿命の延伸や、自然環境の変化により激震化する災害対応等は、その一例です。これらはまた、「行政の限界」を示す事例でもあります。予防・未病の取組や、発災時の自助・共助の取組は、行政機関による一種の強制性だけでは効果は限定的です。こうした領域を新たな、大きなマーケットと捉え、挑戦していくことが、成熟社会における企業の成長戦略となる時代だと言えます。

社会課題はビジネスで解決できるか?

では、こうした社会課題はビジネスセクターにより解決することが出来るのでしょうか?

ごく単純化して言えば、社会課題の解決も、営利企業が行うビジネスも、顧客の不満、ニーズを自社の製品・サービスにより解決するという点では何ら変わりはありません。ビジネスセクターが持つ高度な技術や人材等の「課題解決力」は本来、社会課題に対しても有効に活用できるものであるはずです。

とはいえ、企業活動を存続させるためには収益性の低い事業に積極的に取組むことは難しいというのもまた事実です。また、社会課題の当事者は経済的な困難を抱えている事も多く、エンドユーザーから(代金や利用料として)直接コストを回収するこれまでのビジネスモデルが成り立ちにくいという事情もあります。こうした事業性と社会性の相反が、企業の社会的事業への参画を阻害する大きな要因となっているのが現状です。

私たちは、ソーシャルセクター・パブリックセクターとの適切な協働が実現できれば、事業性と社会性の両立は可能であると考えています。例えば、官民連携に積極的な省庁と連携し、実証事業としてイニシャルコストを調達する。地域に根ざすNPOと連携し、企業の組織力を活かして全国展開を図る。こうした取組が実現できれば、社会課題を解決する新たなビジネスモデルは数多く生み出せるはずです。

課題の構造を紐解き、社会の明日へスクラムを進める

最後に、ビジネスセクター・パブリックセクター・ソーシャルセクター間の協働を進めていくためには、何が必要なのでしょうか?

私たちは、「課題設定の場づくり」がその一つの答えだと考えています。

ある社会課題の解決に乗り出す前に、「そもそも現状はどうなっているのか。課題は何なのか。」「「解決」とはどのような状態を言うのか?」「そのために解消すべきボトルネックは何か?」という分析・合意形成を、企業・官公庁、そして社会課題の現場が一体となって行い、本質的な課題を設定すること。その過程であらゆるステークホルダーを巻き込み、事業実施段階での協働体制を作り出すこと。それが無ければ、どんなに大きな資源を投入しても本質的な課題解決には繋がらないばかりか、ときに悪影響を生むことさえあります。

「課題設定の場づくり」とは、言い換えれば、社会課題を取り巻く構造(関係者、歴史的経緯、要因)を可視化し、最も効果的な変数(レバレッジポイント)を見出すこと。そして、各自が主体性を発揮しながらも同じ目標に向かって取り組むことができる関係性を生み出すことです。これは、社会課題に関する独自の調査を重ね、現場とのリレーションを構築しながら、多くの企業や官公庁と協業してきたリディラバだからこそ出来ることでもあります。

様々な社会課題の解決に取り組むパートナーとして、多くの企業・官公庁の皆様と新たな事業を作り出していけることを願っています。

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