ミケランジェロは"手塚治虫み"がある。
青木昭著『システィーナのミケランジェロ』(小学館)の前半部分を読んだら、ミケランジェロは手塚治虫に関するエピソードや手塚治虫作品と似ている点がいくつかあったので、列挙する。(図1)
ミケランジェロとダ・ヴィンチとの関係は手塚治虫と福井英一との関係
ダ・ヴィンチとミケランジェロはバチバチなライバル関係にあった。
ダ・ヴィンチの「絵画が芸術のなかで一番優れている。それ以外の彫刻や文学などはマイナー」という言葉にミケランジェロが憤慨してから、ミケランジェロが仕返しをするようにシスティーナ礼拝堂の壁画の契約サインにわざわざ「彫刻家ミケランジェロ」と書き、ダ・ヴィンチが苛苛したこともあった。しかしながら、ミケランジェロは先輩にあたるダ・ヴィンチに対して隠れて尊敬しており、ダ・ヴィンチの絵画技法を真似て研究に明け暮れていたという。
一方で手塚治虫は柔道漫画『イガグリくん』で一躍時の人となった福井英一とバチバチな関係にあった。手塚治虫が福井英一の筆勢を羨んで所謂「イガグリくん事件」を起こし、その際、福井英一は「大阪人(手塚治虫のこと)は銭儲けのことしか考えていない」とお酒の席で吐き捨て、手塚治虫と揉み合いになった。福井英一はその全盛期に過労によってこの世を去るが、その後手塚治虫は福井英一がいつも「俺は手塚に勝てたのかな」と弱音を吐いていること、そして手塚治虫の漫画を全て取り揃えていたことを伝手で聞き知るのであった。
ミケランジェロと母との関係はブラック・ジャックと母との関係
上述のようにわざわざ「彫刻家」と強調するほか、自分が手掛けた作品を小馬鹿にした儀典関係者を『最後の審判』の地獄に突き落としたこともあって、なかなか陰湿にも程があるミケランジェロであったが、実は家族愛に溢れており、病弱だったために幼くして亡くした母を生涯忘れることがなかった。その思いは聖母マリア像の作品の多さにあらわれており、彼の代表作『ピエタ』(図3)はその一つだ。
若くして亡くなった母を思い続けた、というエピソードは手塚治虫漫画『ブラック・ジャック』を思い出させる。不発弾の爆発事故で幼少期に母を亡くしたブラック・ジャック(間黒男)は、父親の愛人の整形を委託された際に愛人の顔を母親そっくりの顔に整形し、父親に問い詰められると
と言い残して父親の前を去っていく。このシーンはブラック・ジャックが母親に対する思いを愛人の顔に昇華したシーンと考えられないだろうか。(図4)
ちなみに
手塚治虫は1986年にシスティーナ礼拝堂に訪れ、ミケランジェロの天井画『預言者ヨナ』(図5)に描かれた魚を見るなり、冗談交りにこう言ったそうだ。
ミケランジェロにもダメ出しをしてしまうのは手塚治虫の負けず嫌いのあらわれだろう。
ちなみに、ベートーヴェンにもダメ出しをする広瀬香美も同時に思い出したので添付した。(図6)
そしてブラック・ジャック「えらばれたマスク」には、父親が愛人の顔について注文するときにダ・ヴィンチの代表作『モナ・リザ』が登場するのも面白い。(図7)
最後に
これからも偉大な手塚治虫との繋がりを意識しながら知識をひろげたい。
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