ポケモンSVシーズン1 個人的総括

ポケットモンスターSV ランクマッチシーズン1お疲れ様でした。
個人的な最終順位はだいたい28000位と極めて不甲斐ない結果に終わってしまったのですが、反省もかねてシーズンの総括をしてみたいと思います。雑魚のたわごとではありますが、けっこう的を得た分析だと思いますので、ご笑覧くだされば。

「テラスタル」に対する(いまのところの)総括

すでに多くの人が知っているように、シーズン1の最終1位はほぼポケモン専門の有名ゲーム実況者であるバンビーさんが勝ち取りました。個人的に好きな実況者だったので嬉しかったんですが、興味深かったのは最終的に使った構築です。一位獲得後の配信でチラ見せしていましたが、使っていた6体がこちら。

・カイリュー(食べ残しHB渦羽アンコ)
・ウルガモス(厚底ブーツHBベース蝶の舞)
・サーフゴー(ゴツメHBベース自己再生気合玉)
・コノヨザル(オボンHBDステロ展開)
・ドドゲザン(黒い眼鏡準速AS)
・ガブリアス(鉢巻AS、寝言)

ご本人が配信中で語っていたように、いわゆるグッドスタッフな個体で固めているのがわかります。グッドスタッフとは、元来は(たぶん)MTGからきた用語で「強いカード(個体)でデッキを組んだらそりゃ強いデッキになるだろ」という、ある種シンプルな考え方によって組まれた構築のことで、いわゆる「厨パ」と言われたりもしますが、構築を組む上では一つの指標となる考え方だと思います。

詳しい構築のコンセプト自体はわかりませんが、シーズン1で何度も対戦していたプレイヤーならわかる通り、この環境における最強のポケモンはカイリューでした。コノヨザルがステロを持っており初手置きに安定しそうなこと、ウルガモスが厚底ブーツでステロ対策を行っていることからも、「カイリューをメタりながらカイリューを使う」が一つの重要な狙いになっていることは伺えます。ここまでは個人的にもシーズン終了前からこうなるだろうとわかっていた人は多かったと思います(実際ほかの高順位プレイヤーにも似たような意図がみられる)。いわばシーズン1のカイリューは、剣盾におけるサンダーのような存在であり、どれだけ対策されたとしてもそれでも強いポケモンだというのは明白でしたね。

ですがこの構築において個人的にもっとも注目したいのは、カイリューがいることなんかよりもグッドスタッフで固められていたこと。ポケットモンスターのシングルランクバトルにおいて、シーズン1はもっとも参加者の多いシーズンであり、剣盾ではシーズン1での参加者は100万人を優に超えていました。つまりそれだけ環境の回りも早く、競争が激しく、想定外の強いポケモンが組み込まれた構築が勝ちやすい条件が揃っているということでもあります。

実際、剣盾シーズン1~3あたりの初期環境ではコオリッポやタチフサグマといった高ティアではないポケモンを採用した構築が1位を獲得したりしており、プレイヤーらが剣盾でいえばダイマックス・9世代でいえばテラスタルの強い使い方のセオリーがまだ固まりきっていないことからも、予想がつかない・どう転ぶか不確定要素の強いシーズンになりやすいのが初期環境だといえます。

にもかかわらずグッドスタッフ構築が1位を取った、ということにはかなり重要な意味があると思います。28000位が何言ってんだと思うとは思いますが、この分析自体はおそらく間違っていない自信があります(順位が低いのは分析力に構築力とプレイングが見合ってないからだと思う)。そもそも、他の高順位プレイヤーの構築記事をざっと眺めてみても、事前予想では含まれているのではないかと噂されていたハラバリー・パーモットなどのような特定の構築にはエグいほど刺さるダークホース的ポケモンが組み込まれた構築は思ったよりかなり少なく、どの記事を見ても高ティアなポケモンで固められた構築ばかりです。

テラスタルシステムの本質

なぜこんなことになっていたのでしょうか?

おそらくそれは9世代の「テラスタル」というシステムが、強いポケモンをさらに強くするシステムだからに他ならないからだと思います。これはおそらく絶対に間違っていないはず。

そもそものシーズン1において、使われたポケモンたちが環境のなかでどのように評価が変移していったのかを考えてみましょう。

環境初期ではまずサザンドラ-サーフゴーの相性補完が優秀な並びが評価されました。このあたりではカイリューはまだ評価はされていたものの最高評価ではなく、Sランク評価ではなくAランク~Bランクあたりに位置していたと思います。ドラパルトはこのときから評価されていたものの、ガブリアスもまだ評価されていたわけではなく、シーズン1終期のようなドラゴン大跋扈はだれも予想していませんでした。

このあたりでは剣盾のころのような、アタッカーを受けるためのクッションが従来の考え方で構築に組み込まれているケースが多く、特に採用されていたのがアーマーガアです。地面無効・ドラゴン半減ができる物理受けということで、サイクルを回すための重要なクッションとして採用されていることが多かったと思います。

そこから少し進んで環境中期。このあたりではアーマーガア+ドオー+こだわりアタッカーのような物理受け+特殊受けの並びが微流行します。サザンサーフゴーはこのあたりではだいぶメタが進み軸として採用されるケースは減っていったと思います。ただ、環境終期になってもそもそも2体の相性補完がいいことや、単体としての性能が高いことから結果として2体とも採用されることは多かったのかなと思います。また、コノヨザル+オーロンゲのような壁展開も流行を見せていましたが、これは一時的なもので、鬼火やプレイングでの対策が進むと一気に見なくなりました。ラウドボーン・ヘイラッシャ・ドオーの天然三人衆もこのあたりに一気に有名になりましたが、こだわりアタッカーによって対策されるケースが多かったと思います。

この頃はアマガドオー的な受け回しのサイクルが現れたものの、これに対抗するために現れたのが高種族値ドラゴンたちでした。彼らはテラスタルを駆使して、自分たちを受けようとしてくるポケモンたちを軒並み破壊していきました。具体的には、炎テラスタルによってアーマーガアの弱点をついてサイクル崩壊を狙う、タイプによって受けようとするマリルリなどのフェアリーを鋼テラスや電気テラスによって返り討ちにするなど……。クッションでサイクルを回そうとする動きが、テラスタルによって成り立たなくなる事例が散見されるようになりました。

つまり構築自体のかみ合わせによる有利不利が生まれてしまい、このポケモンはこのポケモンで見る、といったような従来的な対策が成り立たなくなったことがこの頃にプレイヤーたちのあいだで判明していったわけです。

なぜこんなことが起こったのかといえば、すでにいったようにやはり最大にして唯一の理由はテラスタルでしょう。本来なら勝てるはずのない相手にも、(タイプ変更によって)勝つことができる。勝てるはずのない相手にも勝てる、というのは剣盾のダイマックスにも共通する要素ではありますが、剣盾では「たとえダイマックスをしても勝てない相手」というのは明確に存在しており、後出しが必ず成立する対面というのはあったと思います(たとえば玉サンダーにHDポリ2が後出しできるとか……ちょっと微妙だけど)。

しかしテラスタルのタイプ変更というのは特に種族値・特性とのシナジーが極めて強く、絶対に勝てないはずの相手にもテラスタル次第では勝ててしまうというのが対戦の難しさと環境の変化に大きな影響を与えていました。このあたりから環境が一気に激変していったのを覚えています。ちなみに自分が勝てなくなっていったのはこのあたりからですね……この頃までは4桁は余裕でキープしていたんですが、徐々に勝てなくなってしまいました。ほんま悔しい……。

さてテラスタルによって「勝てないはずの相手にも勝ちうる」という対面の不透明性がプレイヤーにいきわたった結果、いったいどうなったのか?

こうなると唯一正しく勝つ確率を高めるには、シンプルな方法しかなかったのだと思います。それが「高種族値・優秀な特性のポケモンを使う」ということです。たとえタイプ変更によって対面的な勝ち負けが変わるとしても、種族値や特性の優劣はかわりません。雑にいえばルリリはどれだけテラスタイプを変えてもガブリアスには勝てないということです。で、ようやく話が最初にもどってきたんですが……つまり(バンビーさんがそうだったように)グッドスタッフなポケモンを使うということが唯一の正解だったというわけです。

このあたりでプレイヤーたちがこのことに気づきはじめ、高種族値のポケモンを使い始めました。特にマルチスケイルによって実質的な種族値を高められるカイリュー、種族値があまりにも優秀で元のタイプも特性もすべてが優秀なガブリアス、圧倒的な型のバリエーションと素早さで変幻自在に惑わせるドラパルトは圧倒的な評価を勝ち取ることになりました。シーズン終盤で600族ドラゴンが最高の評価を得ることになったのは、必然の流れだったのだと思います。

話を一番最初に戻して……そういうわけで、バンビーさんのグッドスタッフ構築が結果を出したというのはある種の必然だと僕は捉えてます。したがって、テラスタル環境におけるなんとなくのセオリーは、僕は今のところ以下の感じでふんわり理解しています。

  1. 環境トップに行くポケモンは、もともとのタイプ・特性・種族値・技が優秀なポケモン。カウンターとなるポケモンの有無ではなく、そのものの優秀さが評価の決め手になる。

  2. テラスタルによって優劣がいくらでも変わりうる以上、特定の環境メタを組み込むよりも(今のところは)高ティアのポケモンで固めて単純な構築パワーを高めるほうが結果に繋がりやすそう。

個人的にはこういったメカニズムで600族ドラゴンが環境上位にいったことは理解していたのに、それが構築単位として高種族値で固める…というところにまで意識が向かったのはただただ悔しいです。ただ次シーズン以降に向けた収穫は得られたので、反省にして次に挑みたいです。

その他、構築を組む上で気づいたこと

上記2点の傾向がテラスタルという9世代特有の仕組みによって生まれている以上、今後もこの傾向は続くものだと考えられます。たとえばこの後は、現在は禁止されているパラドックスポケモンや、悪4体の準伝説ポケモンなど、さらにはDLC以降の禁止伝説ポケモンなど……たとえどの環境になっても「強いポケモンはテラスタルによってさらに強くなる」というのは変わらないでしょう。この強いポケモンにはこのポケモンが強いからこれで対策する!という考え方ではおそらく今後のランクバトルは勝ち抜けないはず。構築の組み方を根本から考え直す必要を感じています。

ドラゴン600族が環境トップで大暴れしてフェアリーやアーマーガアを駆逐していったあたりからこの変化は痛感していたことでした。あのあたりで構築の組み方・セオリーは従来から一気に変わったと思います。

「環境トップ(のドラゴンたち)をどうやって対策するか?」このことに頭を悩ませたプレイヤーは多いと思いますが、今のところのこれに対する一つの回答は「構築全体でふんわり見る」ということだと思っています。マリルリ・アーマーガアなどでさえ単体で見るのが不可能だったのだからそうせざるを得ないでしょう。つまりどの対面・どのポケモンを選出しても、ある程度は環境トップに圧力をかけられるように構築を組むということ。こう考えていたあたりで、(今回は結果が出せなかったようですが)有名強者のサックーさんがこの構築記事を載せていたので「ああ、やっぱり考えることは間違ってないんだな」と思ったりしました(その他にも「今日ポケ」のクリスマス配信でも3人が似たような考え方を述べていたのである程度間違ってないと思う)。

ただし、バンビーさんの最終的な構築を見る限り、ガチガチにドラゴンへの打点で固める感じではなかったので、やはり汎用性、ある程度の動かしやすさは確保しないといけないのだと思う。ここらへんのバランスをどう捉えるのかが、個人的にどうするか考えなきゃいけないポイントだと思っています。

まとめ

SVシーズン1は、難しいとはわかっていつつも自己ベストの最高順位を取りたい!と思って臨んだシーズンでしたが、まあズタボロでしたね……。今のところは剣盾のいつだったかとった3800位くらいが最高です(ちなみに剣盾の後半シーズンはほとんど潜ってなかったです)。500戦以上潜ってかなり真剣に一ヶ月間取り組んだのですが奮わなくて残念です。

ところで個人的な野望として考えていることが一つあって、それが「ポケモンシングルバトル 対戦技術大全」的な本を作りたいなということ。ポケモン対戦って、対戦のための必須知識がものすごくめちゃくちゃ多いのに、それらを網羅した教科書的な存在が皆無なので、これがあったら絶対にいいよなぁとずっと考えているんです。今はこういう学習教材って動画が主流ですけど、動画じゃあどうしても限界があると思っているので。

ただ……知識としてはまあまあ蓄えているし、分析力や文章力にもまあまあ自信があるのですが、仮に監修をつけてもらうにしても著者がへっぽこじゃあ説得力がなさすぎるよな……ということでずっと踏み切れずにいます。せめて最終3桁を取っておきたいと思っているのですが……そう思ったまま幾星霜という感じ。まあランクバトル参加者がもっとも多いシーズン1で最終3桁はちょっと目標としては高すぎたのかもしれませんがね……とほほ。

とはいえまだランクバトル上位を目指すには、まだまだこれからでしょう。

シーズン1は残念な結果でしたが、勝ち上がるための対戦セオリー・構築セオリー的なものは見えてきたシーズンだったと思います。特に9世代のテラスタルはポケモンプレイヤーの実力がかなり正確に反映される対戦システムだと思っています(ダイマックスのようなびっくり箱で押し切って勝ちのような初心者に優しい要素が少ないので)。今回の28000位という結果は粛々と受け止めて、今後の精進に励みたいと思います。

……でも冷静に考えて、100万人の上位3%なんだからそんな悪い結果ではないはずなんだけど。ポケモン廃人たちの謎の「最終3桁以下は人権ないよねw」的な空気はあまりに幼稚すぎると思っているんですが、まあ競技としては歴史が浅すぎる(+年齢層が若い)ので仕方ないんでしょうけどね……。と愚痴をこぼしつつ終わりたいと思います。

それではまた。

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