ニュートンの3法則について

高校物理でニュートンの3法則は習うと思いますが、高校生の頃はそんなものかと思って、受け入れた人が多いのではないでしょうか?しかし、この3法則は物理の初めと言っても過言ではなく、考察する価値が十分にある法則です。以下考察する際に、他の法則を知らないものとして考察するので3法則を「原理」として書いていきます。
(「原理」と「法則」の違いについて、「原理」は理論を構築する上で疑ってはいけないもののことを言い、実験によって正しいことが確かめられたものの事を言います。「法則」については、「原理」から数学的に導かれるものという意味があり、物理では意味が区別されて使われているという風に習いましたので、教えに従って「原理」と「法則」を使い分けていこうと思います。こだわりすぎる必要は無いかもしれません)。

 まず、ニュートンの第1原理から考えていきます。
第1原理は慣性の法則ですね。これは第2原理とも関係がありますし、第2原理の言い換えとも言えると思います。このあたりは第2原理を書いてから考察します。
 慣性の法則は、ニュートンの第1原理に含まれているのでニュートンが発見したかのように思えますが、原形となる法則を見つけたのは実は違う人です。それは、ガリレオ・ガリレイ先生です。ガリレオ・ガリレイ先生は、ある思考実験により慣性の法則を発見しました。U字状の曲線を考えてください。その曲線のある高さから斜面に沿うように球体を転がしたとします。するとU字に沿って球体は動き、転がし始めた高さに到達すると球体は動きを止め、U字に沿って球体は戻り始めます。ここで、U字の片側を底面と同じ高さにし(Lの角を丸めたみたいな形にする)、同じように斜面から球体を転がすと、球体は転がり始めた高さまで登ろうとしますが、ずっと同じ高さのままなのでいつまでも転がり続けるのです。この思考実験は、運動をしている物体は運動を妨げる力が加わらない限り運動をし続けるということを意味しています。これが慣性の法則の発見です。これをニュートン先生は、より包括的な内容にして慣性の法則として「自然哲学の数学的諸原理」に書いたのです。ニュートンの主張した慣性の法則は現代では、「物体に働いている力の合力が0のとき、物体は静止し続けるもしくは等速直線運動を続ける」として教えられていますが、厳密にいえばこの説明はダメだと思われます。なぜなら、まだ力が何なのか定義されていないからです。力は第2原理で初めて定義されるのですが、第2原理は慣性の法則を考察により数式化したものであるので慣性の法則の説明に力という言葉を用いるのは正しくないのです。では、慣性の法則はどのようにして説明されるのだろうか?
答えは、「静止している状態であっても等速直線運動をしている状態であっても、物理では同じ状態とみることが出来る」とするのが正しいでしょう。この説明については次の第2原理を考えると納得できると思います。

では第2原理についても考えていきましょう。これは物理でもっとも有名な式といっても過言ではないぐらい知られており、ma=Fとして力を定義する式です。mが質量、aが加速度、Fが力ですね。ニュートン先生は力を、物体の状態を変化させる量として認識していました。重いものは状態が変わりにくいことや物体を同じだけ押しても軽い方が状態が早く変化することは経験から分かっていたので、質量×加速度で力という量を定義できるのではないか?という発想になったのだと思います。たとえば、速度をvとしてmv=Fが間違っているとどう判断できるでしょうか?野球ボールを投げたとしましょう。ボールが手を離れて空中にあるとき、空気抵抗が無いとすればボールは縦方向に重力、横方向にmvだけの力を受けていることになります。しかし、経験から横方向へは等速度運動をすることは知られており、状態が変化してしまってはいけないので、F=mvというのは力の定義として間違っていることがわかります。xを座標として、mx=Fはどうなんだ?という疑問は簡単に否定できます。座標によって力が異なるのは明らかに間違っています。日本を基準にしたりイギリスを基準にしたり、月を基準にしたりした時に、どこを基準にとるかで加わっている力が異なるのは明らかにおかしいからです。ma^2=Fやma^3=Fはどうなんだ?という疑問が出てくることが予想できますが、これに関しては完全に納得できる答えは無いです。「原理」であるが故に、実験的にma=Fが一番近似式として正しそうだという事が確かめられたからとしか言いようがありません。ma=Fはどこまでいっても近似式でしかないのです。なので、夢を壊すようですが、ma=Fだけで物理が記述できると思ったら大間違いなのです。実際にカオス現象はma=Fから予想される運動をしません。(正しくはma=Fだけでは予想ができないといった方が良いかもしれません)。

ここで、第1原理の時に言った第2原理との関連性を見ていきましょう。
第2原理におけるF=0のとき、ma=0→a=0となり加速度が0になります。つまり力が加わらない限り加速しない事を示しています。なので力が加わらない限り、静止もしくは等速度運動をすること(慣性の法則)は第2原理から分かります。もう少し言うと、力を加えない→状態が変化しない→a=0という事が言えると思いますが、a=dv/dt=0というのはv=定数と同じこと、つまり、力を加えていない状態→v=定数という事が出来ます。つまり、これから記述する物理は、速度vを任意に選んでも同じ状態だと言っているのです。速度の基準を自分にしても電車にしても飛行機にしても良いって言っているのです。そこで上で書いた慣性の法則の内容を思い出してほしい。「静止している状態であっても等速直線運動をしている状態であっても、物理では同じ状態とみることが出来る」と書いたが、納得できるのではないだろうか。基準の速度を変えれば、静止しているように思えた物体は動き、動いていると思えた物体は静止しているからです。もっと一言で慣性の法則を書くなら、「基準の速度は任意に選んでも良い」という事になると思います。発展的なことを言うと、ガリレイ変換(相対速度の式)は基準の速度を変えているだけなので物理は変化しないという当たり前の事を言っているだけにすぎない事に気が付くと思います。こういった慣性の法則や運動方程式ma=Fが成立している物理系を慣性系と言い、速度の基準は∞個あり、その一つ一つが慣性系なのです。
 なので、第1原理(慣性の法則)の意味するところは、物体の状態という曖昧なものを定義し、第2原理(運動方程式)でその状態を変えるのに必要な量である力を定義しているという事です。第1原理と第2原理は同じようで、少し意味が違うという事です。

次に第3原理である作用反作用の法則について考えていきます。これは他2個とは少し違い、この法則には曖昧さが含まれます。高校物理までの課程では「作用として加わった力の反対向きで大きさの同じ力が一直線上に反作用として加わる」という説明をされるので、何も曖昧な事は無いのですが、ニュートンの書いた「自然哲学の数学的諸原理」では作用というものが曖昧なもので説明されているのです。というのも、作用を物体と物体がぶつかった運動量の変化で見積もったり、F×v(今でいう仕事率)で見積もったりと作用の正体がよくわからないまま説明されています。ニュートン自身も作用反作用の法則については反論が多く来る可能性を考えてか、本での記述は3法則のうち作用反作用の法則が一番補足説明が多いです。ニュートン自身は力学を構築する上で物体の状態を重要視して理論構築しています。作用というのは「物体Aが物体Bに状態の変化を及ぼした際の影響の量」という感じなのだと私は読み解きましたが、ニュートン先生が何を考えて作用と力を言葉を分けて書いたのかはわかりません。つまり、ニュートン先生は力に限らず、作用反作用の法則は成立しているのだと考えています。作用というのを何で見積もるのかによって出てくる式自体は変わるという事です。作用反作用の法則をわかりやすく言い換えるとしたら、「物体がある物体に一方的に影響を及ぼすことはできない」と言い換えることが出来るのではないでしょうか?作用(影響)を与える側も反作用(影響)を受けるという事です。ここまで拡張すれば、理想的な物体(剛体)に限らず作用反作用の法則は常に成立している事になります。衝突の起こっている面での力によるエネルギー、熱エネルギー、音エネルギー、弾性エネルギー等全てを考慮した作用を考えれば作用反作用の法則は成立しているはずです。古典力学で作用反作用が力のみで説明されるのは、理想的な物体でしか問題を扱わないので、結局力で作用を見積もる事と等しいから時代の流れでそうなったのではないだろうか。作用反作用の法則は正しくいうなら、「作用を与える側も反作用を受ける」としか言いようがなく、力ベクトルでの記述は作用反作用の法則の一部分でしかないのです。
(万有引力にも作用反作用が成立しているのは知っていると思いますが、順番的には万有引力を発見したから作用反作用の法則も発見できたのだといった方が正しいです。ニュートンの考えた事の一部を抜粋して説明します。何もない宇宙空間に惑星が2つだけあると考えましょう。惑星間の空間が惑星同士を結ぶ直線に垂直な線で区切られていると考えます。
惑星1|空間|惑星2 といった状態です。
万有引力があるとしたら、惑星1は惑星2を引っ張り惑星2は惑星1を引っ張ります。それぞれをF12,F21とすると、空間に働く力の合力はF12-F21となります。ここで、F12>F21とすると運動方程式ma=Fより加速度が生じます。つまり、惑星1が空間を押し、間接的に惑星2も押し、惑星1と惑星2はまるまる無限遠方まで加速して飛んで行ってしまう事になります。しかし、現実では万有引力によって無限遠方にまで加速しながら飛んでいくという事はないので、F12=F21とならなければおかしいという事になります。このような思考を基に作用反作用の法則があるんじゃないか?ということが考察されていったわけですね。)

こういう風に作用反作用の法則を考えたら、この法則は結構重要なことをいっています。宇宙全体で成立するルールとして、一方的に影響を及ぼすことが出来ないという事を言っています。すぐにこのルールが大事になるわけじゃないですが、なんとなく頭の片隅に置いていると考察する際のヒントになるかもしれません。

といったかんじで長々とニュートンの3法則の概要を書いていきましたが、3法則からわかる事はニュートン自身は物体の状態に重きを置いていた事です。高校の先生が適当に3法則を説明していたら、慣性の法則に力という言葉が出てくるのはおかしいですよね?第1法則と第2法則の違いって何ですか?作用って簡単に言いますが、作用って何ですか?速度を任意に選んでも良いことは慣性の法則から分かりますが、どうして速度に注目して状態を定義したのですか?と聞いてみましょう。新しい知見が得られるかもしれません。

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