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「デザイン=装飾」ではない

「趣味は?」と聞かれてあまり「これが趣味です!」と言えるものはないのですが、唯一これかなと言えるのは『考え事』かなと思った今日の朝です。色々突っ込まれるのは承知の上で言っているのですが、結構真剣に考え事してるんです。立ったまんまか座ったまんま何も言葉を発せずに、考え事に耽る。側から見たら完全に不審者なのでなるべく家の中でやるようにします。

今回は「デザインは装飾をすることではない」ということについて書きたいと思います。このマガジンの最初に書けばよかったなと思っていた内容です。

『デザイン』とは

『デザイン』という行為の目的や意味を皆さんはどこまで理解しているでしょうか。よく勘違いされやすいのは『飾り付けをする・オシャレにする』という認識です。もっと簡単に言えば、「見た目を良くするんでしょ?」というようなものです。そういう人たちに言いたいのは「見た目を良くする」ってなんですか?ということです。何を持って見た目が良くなったと判断できるのか曖昧です。
よく"デザイナーズマンション"とか"デザイン家電"とかいう言葉がはびこっていますが、あれは『デザイン』という言葉の意味を間違えて伝えてしまっている悪い例です。

デザインの本質は「設計をすること」です。そして設計の先には必ず、なぜこういう設計をするのかという目的があります。なのでデザイナーとは
『目的に沿って、その対象に適した設計をする人』
だと思います。マクドナルドは人の目を街中で惹きたいという目的があったので、赤と黄色の注意喚起を引き起こすデザインになりました。デザイナーズマンションなどの"デザイン"という言葉がよくない理由は、デザイン=装飾・オシャレといった意味にすり替わっているからです。この意味通りに捉えてしまうと、じゃあオシャレじゃないマンションはデザインされていないということになってしまいます。そんな事は勿論ありません。その証拠にどのマンションも人間がちゃんと暮らせる設計になっています。雨風をしのげて、寝て起きれて、食事ができる環境という目的に沿った設計になっているのでデザインされているといえます。オシャレなマンションは部屋の空間により強いこだわりを持つ人へリーチしたいので、そういうデザインをしているだけです。

「足す」のではなく「引く」

日本においてはデザインという言葉が間違って解釈されているがために、依頼する人がデザイナーに依頼する際に「見た目をよくしてほしい、オシャレにしてほしい、派手にしてほしい」という依頼のされ方をされてしまいます。そういった依頼の本質は要素を足してインパクトを出してほしいみたいな感じです。けどもさっきも書いたように、デザインは設計をすることなので"インパクトを出す事"が目的に沿っていなければインパクトを出しても効果が全然ないものになってしまいます。なぜインパクトを出さないといけないのか、本当に必要があるのかという議論をしないといけません。

例えばフランスから修行を終え、日本に帰ってきたシェフが渋谷でレストランを開くとします。デザイナーはそのレストランのビジュアルを依頼されたとしましょう。レストランのシェフの目的としてはお客さんに来てもらって美味しいフランス料理を食べてもらうことです。あくまで主役は料理なので、ビジュアルとしてのデザインにインパクトは求められていません。むしろ気づいたらそこにあるような静かな雰囲気かつ、渋谷という都会の中で映えるようにあえて南仏の田舎のレストランを思わせるビジュアルにすると、そのレストランの気持ちいい空間を作ることにより繋がるかもしれません。
時々、料理とお店のビジュアルの空気感がかけ離れてしまっているか、方向性は合ってるかもしれないけどデザインをやり過ぎているお店に出くわすことがあります。それはお店としての目的とデザインを別々に考えてしまっているから起こるのかなと思っています。本来の目的を見失って、「デザインしなきゃ」と思ってしまうと、いかにもデザインされたように見えるものが完成してしまいます。

別々に考えないようにするには、デザインは目的があって成立するという考え方と共に、基本的にデザインは「足すのではなく、引く作業」ということを認識する必要があると思います。要するに対象の本質を理解して余計なことをしないということです。

「引く」の究極、 "TOKYO1964"

TOKYO1964のオリンピックの際のシンボルを見るたびに、ぼくはデザインの仕事を体現してるなぁといつも思っています。日本で行われるはじめてのオリンピックで、どういうシンボルにしようかとなったときに当時のいろんなデザイナーがあれやこれやと案を出しました。日本だから扇子だろ、いや富士山だ、桜だろと色々モチーフを探って制作しましたが皆納得がいかない。そんな中、亀倉雄策というデザイナーが出した赤い丸のみのシンボルがその場にいたデザイナー全員を唸らせました。赤い丸はいわば日本の"日の丸"であり、日の丸は国旗の象徴です。本当にただの赤い丸のみ。しかしどの案よりも強く、存在感のあるシンボルでした。

アートボード 15 のコピー 5

勿論それぞれ目的があるので、あらゆるデザインにおいて、シンプルにすればいいというわけではないです。日本のオリンピックというお題において、1番本質を捉えていたから強かったのです。そして本質を捉えるには、いろんな要素を削ぎ落とす必要があります。表すこと・言いたいことを一つに絞る。じゃないと他人には伝わりません。料理の例えばかりで申し訳ないですが、本当に美味しいお米と塩で作ったオニギリはそれ以外何もいりません。ここに少しでも具を入れてしまうことで中途半端なオニギリが見事に出来上がってしまいます。(千と千尋の千尋が食べていたオニギリだって、具がないから感情が動くと思う)
デザイナーは良い素材に対しては「これは何も足す必要ないです」と言える勇気を持つことも重要だと思います。その判断をしたことに価値があると思います。

良いデザイナーを生むために、良いデザイン教育をするということはもちろんですが、デザインを依頼する素人の人にもデザイン教育は必要だと思います。日本の義務教育に加えたら良いんじゃないかなぁ、、と考え事をしたいと思います。

今回は以上です!



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