見出し画像

鼻息は潮風のように

沖縄帰省最終日。おみやげを買いにショッピングモールへ義理姉に連れていってもらった。その時、嫁が「ねえ、あの人…」と言って指差したのはどこにでもいる普通のおばあさんの後ろ姿だった。嫁は駆け寄り、横から顔を確認した後、挨拶をしていた。
知り合いかなと思いながらおばあさんの横顔を見て驚いた。
先日、僕たちが見てもらったユタだったからだ。

もう会うことはないだろうと思っていたけどまさか最終日に外で偶然会うとは思っていなかった。嫁の実家、ユタの家、ショッピングモールはそれぞれ近い位置にはない。でもまあ、偶然会う可能性はないことはない。驚いたのはそこじゃない。僕が「なんで?」と聞いたら嫁は顎を少し上げ見下ろすような流し目でこちらを見ながらさらっと答えた。
「そんな気がした」

最初、嫁がユタを見つけた時、後ろ姿だったから全く顔を見ていない。髪型や服装に特徴があるわけでもない。極々普通のおばあさんの後ろ姿で一度しか会っていない人の後ろ姿を記憶することもない。見た目で気づくことはないだろう。

嫁はフフンと鼻息を鳴らしながらドヤ顔で見つめてくるので僕はそっと無視をした。

励みになります。ありがとうございます。