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ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020 @大分DRUM Be-0 (2020/01/10)

〜"氷もほっときゃ 流れるぜ"〜
〈ザ・クロマニヨンズツアー PUNCH 2019-2020@大分DRUM Be-0 感想〉

クロマニヨンズの音楽を聴くと、音楽に対してすぐに評論したり考察することは大した意味を持たないなって思う。ブルース・リーの「Don't Think, Feel」じゃないけどとにかく今鳴ってる音が全てで、それ以外はそれ以外でその時考えればいい。そう諭されている気がする。「今」ここにある音に聴力・心力・瞬発力を研ぎ澄ます。ライブだとそこに視力が加わる。

ザ・ブルーハーツは伝説だ。多くの追随ミュージシャンに今も昔もリスペクトされ、毎年のように何かしらのドラマやCMのタイアップが付いてたりする。個人的な見解だけどザ・ブルーハーツの曲は反戦歌が多い。時代背景もあるのだろうけど、それだけヒロトやマーシーが時代に敏感であり、またその熱量だったりをそのまま音楽にぶつけてた。だからストレートでわかりやすい。まるで反骨精神の象徴のような(正真正銘のパンク)シンプルさが永く愛される理由なのだろう。

ザ・ハイロウズの時代もあるけれど、今回はクロマニヨンズのライブを観ての感想だから、クロマニヨンズの話に戻ります。

クロマニヨンズの音楽もストレートでシンプルなバンドアンサンブルが主体。音を重厚に重ねたり加工してたハイロウズ時代を経てのものだからなのか、尚且つブルーハーツの頃よりも当然ながら洗練されてる。漫画家だって漫画を描き続ければ当然絵柄が上達するように、荒削りだった(勿論それも魅力)頃に比べてクロマニヨンズの音楽は安定して聴ける。勿論音楽はどちらがいいというものじゃない。ここで言いたいのはそうした変化云々についてじゃないので、冒頭で触れた「なぜクロマニヨンズの音楽は只管に「今」を感じさせるのか」について続けたい。

個人的に今回ライブ観て感じたのは、その時代、その瞬間、その場面毎に、やりたい事、やるべき事を完全燃焼させてきたこその「今」。ザ・ブルーハーツの言葉を鋭利に研ぎ澄ませ、時代に真っ向から抗っていた時代。ザ・ハイロウズのまるで中期以降のビートルズのように、音楽に対し正解のない挑戦を続け、己の魂を削り続けた時代。その系譜を経て鳴らされる音楽は「今」だからこそ成り立つもの。その尊さは真に音楽を愛する者だけが知っている。

そんな彼らが行き着いた答えが「今」。それが音楽に対しての最大のリスペクトであることをリスナーに説教臭く教えたり伝えたりするのではなく、ただ「好きにしたらいいよ」と言ってくれる。突き放すのではない。「感じるままでいい」。言葉ではなくても表情、声、仕草、姿が、既にそれを放ってる。

ずっと感じていたことだけど、文明の利器がどれだけ発達しようと、VRやハイレゾやAIが生まれようと、ライブのあの感動や臨場感を再現することは不可能だ。ツアーが発表され、チケットを取り、カレンダーにスケジュールを書込み、日が近づくに連れワクワクが高まり、当日の服装を決め、会場へ向かい、入場待ちの列に並び、ライブハウスの入り口をくぐった途端の日常と切り離された、幸せしか満ちてない場所の空気を存分に吸い込み、この日までのあれこれを開演待ちの音楽をBGMに回想しながら開演を待ち、暗くなるスポットに興奮は沸点を迎え、本人たちの姿を目にした途端、理性はすっ飛びステージにに立つ憧れとの距離を目測しながら、興奮と衝動で追いつかなくなった思考は術を失くし自然と涙が溢れてくる(目にした瞬間からこの間わずか1.02秒ほど)。あとは開演中何度も繰り返す興奮の坩堝に、ただ身を任せればいい。

どうだろう。この体験が果たして再現できるか?非常に拙くアナロジーながら、こうして体験談として書き起こした方がまだ全然伝わる気がする。「今」を只管に歌う刹那は、同時にその場でしか味わえない渦(グルーヴともいう)を生み出す。伝説であるからして世間にとってヒロトやマーシーの「=元ブルーハーツ」という肩書きは消えない。しかし多くのファンはここに至るまでの系譜を知るからこそ、「今」に辿り着いた彼らの歴史を想像するからこそ、今も愛することを止めない。

今回のライブではおよそ自分と同世代、もしくは若い世代を多く見た。かなり意外な気がしたけど、昨年最も支持された若者層を主メインとしたドラマ「3年A組」の主題歌として「生きる」が使われた影響が大きいのかもしれないと聞いて納得。仮に「生きる」から入った今の彼らしか知らない世代には、ブルーハーツやハイロウズの音楽はどう聴こえるのだろうか。

「今だけ 今だけ 今だけ」。今の尊さを歌う「エルビス(仮)」。
ただ、心臓の脈打つ鼓動を唱え続ける「エイトビート」。
「導火線バチバチ 今この瞬間」「今日は最高!」と「今」を歌う最高の賛美歌である「ギリギリガガンガン」。
「見えるものだけ それさえあれば たどり着けない答えは ないぜ」。あれこれと空想し不安に縛られるのではなく、「生きる」ために大切なものはもうすでに見えている。

多感な時期に真っ新な状態でザ・クロマニヨンズの音楽に出会えた若い世代を羨ましく思うと同時に、何かを感じた「今」「この瞬間」が一番若い自分なんだぜって、ヒロトはそんなこと言ってないけど勝手に言われてる気がした。

幾つになっても純粋な言葉と笑顔と上半身裸の姿を前に、歴史とか考察とか難しい理屈はどうだっていいよね。

「形は変わる 自分のままで」

もっと「今」を好きになれるように。

〈SETLIST〉
01.会ってすぐ全部
02.怪鳥ディセンバー
03.ケセケセ
04.デイジー
05.ビッグチャンス
06.小麦粉の加工
07.旅立ちはネアンデルタール
08.犬の夢
09.クレーンゲーム
10.ガス人間
11.整理された箱
12.リリィ
13.長い赤信号
14.単二と七味
15.生きる
16.エルビス(仮)
17.エイトビート
18.ギリギリガガンガン
19.ナンバーワン野郎!
20.ロケッティア
21.炎
22.タリホー
23.クロマニヨン・ストンプ


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