面接官の正体とその能力,そして,評価の土台とは?【レトリカブログ面接戦略講義】第2回
【レトリカブログ面接戦略講義】第2回
昨日スタートした,【レトリカブログ面接戦略講義】の第2回のテーマは,
面接官の正体とその能力,そして,評価の土台とは?
です。
昨日のブログ講義で,教員採用試験の30分前後の面接では,受験者の人物評価を適切に行うことは,不可能だと述べました。
初対面の面接官と受験者が,30分前後,会話しただけでは,科学的に分析すれば,受験者の適性・資質・能力を,確実に把握することは困難です。
しかし,実際には,教採の面接は行われていますし,200点満点とか,300点満点といった数値評価で,評価が行われ,それで,合否が決まっています。
ここで,考えてみてください。
あなたが,初対面の人と,30分程度会話するとします。
その会話を踏まえて,その初対面の人が教師に向いているかを,例えば,200点満点で評価しなさいと言われたら,すぐに,自信を持って,「150点」とか,「90点」とか,「200点満点」というように,評価できるでしょうか?
おそらく,あなたは,そんなことはできないと答えることでしょう。
でも,教採の面接の面接官は,これが仕事なのです。
そして,受験者の面接は,数値評価され,それで,合否が決まってしまいます。
では,面接官は,どうやって,評価をしているのでしょうか?
このことを考えるには,まず,教員採用試験の面接官の正体を知ることから始める必要がありそうです。
ほとんどの自治体では,教採の面接の面接官は,以下のような人がなっています。
校長・教頭
教育委員会の中間管理職(人事課の管理職,指導主事,センター長などなど)
民間人面接官(地域の中小企業の経営者,弁護士,PTA会長,などなど)
教員採用試験の面接官は,膨大な人数が必要です。
あらゆる学校種,あらゆる教科,あらゆる分野の教諭の面接を行います。
自治体によっては,受験者は,数千人です。
この数千人を,集団面接なら,数人程度のグループに分けて,面接します。
個人面接なら,一人一人を面接していきます。
2次試験なら,かなり,人数は,減っていますが,それでも,最終合格定員の2倍から3倍の受験者は残っています。
それらの膨大な数の受験者をほんの数日間で,面接していくわけですから,面接官の数もたくさん必要です。
ほとんどの自治体で,面接官は,先ほど挙げたような,学校管理職,教育委員会管理職,教育に何らかの関係がある民間人が,持ち回りで,努めます。
俗っぽく言えば,「XX校長先生,今年は,面接官をお願いします!」というような感じです。
面接官がすべて,意欲的に,積極的に,好き好んで,面接官をやっているとは限りません。
順番が回ってきたから,やむを得ず,引き受けているということも,しばしばあります。
また,教採の面接官は,人事のプロではありません。
教採の面接官は,言葉によるコミュニケーションのプロではありません。
もっと言えば,教採の面接官は,面接で人材を選抜するプロでもありません。
面接官は,言ってみれば,夏の教採の時だけの,臨時の非常勤の面接官と言ってもよいのです。
確かに,教採の面接官は,それぞれの仕事,例えば,校長,教育委員会の行政の仕事,研修センターの運営,会社経営といった,各面接官の「本業」では,それなりに優秀な人であるかもしれません。
でも,面接官として,30分程度の会話で,受験者の適性・資質・能力を見極める能力を持っているわけではありません。
人生経験は,受験者よりは,少し多いかもしれませんが,それだけです。
ここで,また,皆さん,考えてみてください。
皆さんが知っている校長先生は,人事のプロと言えるでしょうか?
部下と話して,部下の良いところを最大限に発見し,最大限に伸ばしていけるような人でしょうか?
皆さんが知っている校長先生は,面接のような対面コミュニケーションのプロと言えるでしょうか?
そして,皆さんが知っている校長先生は,数多くの受験者の中から,最適な候補者を,初対面で会って,30分程度の会話をして,最高の教師候補者を選び出すことができる能力を持っているでしょうか?
ここが,面接官の威厳マジックなのです。
教採の面接官は,人事のプロでもなく,人材採用のプロでもありません。
その意味では,面接官としては,「ド素人」です。
でも,面接官という役を引き受け,面接官として,面接室の面接官席に座っているので,受験者から見れば,まさに面接官らしく,見えてしまいます。
この面接官は,自分の内心を見抜いてくるだろうと,身構えてしまいます。
この面接官は,自分の本当の想いや能力を,確実に評価してくるだろうと,緊張してしまいます。
でも,これは,面接官の威厳マジックです。
面接官として,面接室の,面接官席に座っているから,「すごい人」のように見えるだけです。
実際は,面接のプロでも,人材採用のプロでもない,中間管理職が,面接官という役を振り当てられて,「仕方なく」,面接官席に座って,苦労しながら,面接をしているだけというのが,真相であり,実情です。
ですから,どちらかと言えば,面接官は,ちょっと気の毒で,ちょっとかわいそうな存在でもあります。
本職は,学校の管理職であったり,教育委員会の行政職であったり,会社の経営者であったりする人が,面接官の訳を振り当てられて,頑張っているという構図が,教採の面接の真の姿です。
日本には,歳を取れば面接官ができそうとか,管理職なら面接官ができそうとか,校長なら面接官ができそうというようなイメージがあるようですが,科学的に考えると,年長者,管理職,校長であるということと,面接という対面コミュニケーションで,受験者の適性・資質・能力を,適切に評価するということは,全く,別のことです。
校長だから,人材採用に長けているとは言えません。
管理職だから,30分程度の面接で,初対面の受験者群の中から,最もふさわしい人を選び出すことができるとは言えません。
本来であれば,本当に,面接官が,受験者群の中から,最もふさわしい人を選び出しているかどうかを,後から,検証していく必要があります。
つまり,合格者の面接の成績が,その後の,その教員の勤務状況や,勤務態度,勤務成績と,どのような相関関係があるかを検証する必要があります。
教員採用試験の面接時に,高い評価を受けて,合格した人は,優れた教師として,優れた勤務状況,優れた勤務態度,優れた勤務成績,優れた授業,優れた生徒指導,優れた教育活動を行っているのかを検証する必要があります。
もし,教採の面接の評価の高低と,その後の,教師としての活動の優劣に,何も相関関係がないのであれば,そもそも,その評価で,教採の合否を決めること自体が間違っているということになります。
しかし,残念ながら,このような検証が行われたという話を聞いたことがありませんし,おそらく,教採の面接官自身も,このような検証をしたところで,有意味な結果が現れるとは思ってもいないでしょう。
はっきり言いますと,教員採用試験の面接のような形で,たかだか30分程度の面接を1回だけして,その評価で,合否を決めて,教員を採用するようなシステムでは,本当に適性があり,資質があり,能力がある人を,選び出すことは,不可能です。
そもそも,このシステムに致命的な欠陥があり,科学的な検証には,絶対に堪え得ない,粗末な人事採用システム言わざるを得ません。
でも,もう一度,繰り返さなければいけません。
それでも,現状は,そういった教採の面接で,受験者は評価され,その評価で,教採の合否が決まり,誰が採用されるかが決まります。
これは,厳然とした事実です。
では,面接官は,何を土台として,面接で,受験者を評価しているのでしょうか?
面接の素人,人材採用の素人の面接官が,初対面の受験者群の中から,30分程度の面接で,合格者・採用者を,評価・決定している土台とは,何なのでしょうか?
はっきりと,答えを言いましょう。
主観です。印象です。イメージです。
30分程度の面接で,人物評価を,客観的・科学的に行うことは不可能です。
それでも,人物評価が行われているということは,その評価は,面接官の主観・印象・イメージを土台にして行われているということになります。
つまりは,面接官は,特に,客観的な根拠や,科学的な理由に基づいて,判断しているのではなく,「この人は,なんとなく良さそうだ」,「この人には,なんとなく好感が持てる」,「この人は,自分の部下に持ちたいなあ」といった,主観的な感想や印象やイメージで,評価が決まっています。
面接での面接官の評価の大部分は,主観的であり,印象・イメージに基づいているというのは,教員採用試験の面接で言えば,科学的な真実です。
面接官には,客観的,科学的に,受験者を評価する手段と能力はありません。
面接を科学的に考察すれば,可能な限り客観的に,面接評価を行うためには,構造化面接という手法もありますが,教員採用試験で,構造化面接が,科学的に適用されているという話は聞いたこともありませんし,教育委員会が,それを行う能力とリソースを持っているとも思えません。
結局は,教員採用試験の面接は,面接官の主観・印象・イメージで,ほぼ全てが決まっています。
では,面接官の主観・印象・イメージとは,何なのか?
面接官は,どんな主観・印象・イメージで,受験者を評価しているのでしょうか?
このことを考えるには,レトリック理論・コミュニケーション理論を応用して考えてみると,答えを知ることができます。
次回,【レトリカブログ面接戦略講義】の第3回では,
面接官の主観・印象・イメージとは,どんなものなのか?
を科学していきます!
ご期待ください!
河野正夫
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