傷ついたF1の「2つのレバー」を倒す【BLM、放映権】
6月17日に行われた臨時総会。ここでラポルタは2つのレバーを動かす許可をソシオたちにお願いした。このレバーたちは何を意味し、これからのバルサはどうなっていくことを意味するのだろうか。
お久しぶりです。しばらくバルサの情報を追ってなかったので、最近の展開についていけずよくわかっていませんが、自分自身が理解する為にも「6月17日に行われた臨時総会」を軽くまとめていきます。
また、間違いや勘違いがある可能性が大いにあるので、その際はDMでもいいので指摘してください笑
FCバルセロナは、クラブの経済状況を改善するための解決策を承認することを目的とした臨時総会をオンラインで開催し、ソシオと共に重要な日を迎えました。
まず、ラポルタは「私が会長である限り、クラブはソシオによって所有される。
クラブは非常に活発な組織で、資本を集める能力が高く、そのガバナンスモデルや所有権モデルにおいて独立性を失っていない。
明日で就任から1年3カ月になるが、非常にデリケートな経済状況にあり、給料を支払うことができない。
今日、私たちは、バルサがガソリンがなく、エンジンが壊れたフォーミュラ1(F1)であることに気づいたと言えるでしょう。どんな会社でも、会社を解散させるか、パートナーにお金を出してもらうか、という選択肢がありますが、私たちはそれを望まなかったのです。
クラブの将来を危うくすることなく、できるだけ早くバルサの財務を一掃するためにやってきた。
競合他社の資金がすべて、我々のバルサ、我々の本質、我々の歴史、我々のスポーツ、社会、国の理解の仕方を買い取ることはできないでしょう。」
と、ラポルタのスピーチが終わり、次にBLMの説明に入ります。
BLMについて
マーケティング担当副社長Juli Guiuが説明を始めます。
「本日は、BLMの最大49%を売却するプロジェクトをご紹介します。」
簡単にいうとバルサ(選手)の様々な権利を扱い、消費者に販売するにあたり、その販売方法や価格設定を戦略的に設定するための活動や計画、管理を行なっている会社です。
BLMは①実店舗②ネット販売③第三者販売(卸売業者)④ライセンス契約している製品。この4つが主なビジネスです。
クラブにとって、BLMとはどのような存在なのか?
下図は、2018/19~2021/22シーズンのBLMによる収益額です。
上の図の様に、パンデミックの影響もあり2020/21ではBLMの収益が2200万€まで下がりましたが、2021/22は5600万€まで復帰する見込みです。
パンデミック後のビジネスは、観光の活性化、有観客でのスタジアムの試合、オンライン販売により回復してきました。
バルサ実店舗の来場者(+550万€)、オンライン販売(+400万€)、2000のライセンスにより世界中にバルサ製品を展開。2021/22シーズン終了時点の予測に基づきますが、現地市場において+75%のビジネスを展開していきます。
また、ラポルタによると公認企業によって算出されたBLM社全体の評価額は約7億€と推定されています。
BLMに必要な3つのプランと投資
BLMに対して、これから必要なプランとして以下の3つを掲げています。
新たな市場・視聴者に向けたオンラインビジネスの拡大
クラブにとって最も有望なエリアでの実店舗事業の拡大
ライフスタイルを重視した新商品群及び新規事業領域
現在バルサストアはヨーロッパのみ配送可能であり、日本で購入するには、海外転送サービスを使用しなければならず手間と時間とお金がかかっていました。しかし、これらが実現すれば日本でも、簡単にバルサの商品を購入することができるかもしれません。
またダサいと言われがちなバルサのグッズや服も、PSGみたいなカッコイイ商品が増えるかもしれません。
上記の3つのプランに対して必要な投資は順に以下の3つとしています。
技術・デジタル開発
新しいトレンドの開拓と、ロジスティックチェーンの拡大
生産・デザイン部隊の増強と多様化
これらに対して投資を行い、ビジネスの拡大を図るとの事です。
我々日本のクレからすると、これらは一刻も早く実現してほしいですね笑
これからの収益の推移
BLMの計画では、収益はカンプノウに特化した実店舗中心のビジネスから、新たな補完的収益源を持つデジタル化されたビジネスモデルへ発展していくそうです。
写真の様に、現在の21/22シーズンはカンプノウ(青)が1/3以上を占め、実店舗(黄)、オンライン販売(赤)、卸売事業・ロイヤリティ(紫)の占める割合が小さいです。
しかし、25/26シーズンには赤、紫、黄が占める割合が大きくなりデジタル化されたビジネスモデルへの発展に力を入れていることが分かります。
運用の基準
BLMを譲渡する際、運用の基準としては以下の4つを主においています。
BLM社の49.9%を上限とする少数株主持分を売却
一緒にビジネスの拡大を加速させるパートナーと
中期的に事業を買い戻すオプション付き
クラブの価値観に合致していること
投票結果
ラポルタやギウにより、BLMの説明が行われ、いよいよ投票に入りました。
結果、ファンを代表する代議員は、FCバルセロナが所有するライセンスとマーチャンダイジングの交渉を担当するバルサライセンシング&マーチャンダイジング(BLM)の少数株式(49.95%)の譲渡を有効にすることを、88%の賛成票を獲得し、圧倒的多数で承認されました。(賛:88% 反:10% 空:2%)
これにより、クラブを健全な財務状態に戻すことを目的に取締役会が提案した1つ目のレバーの作動は承認されました。
よって、BLMの株式売却により2億〜3億€の収入が得られることになりました。
テレビ放映権について
次にロメウ経済副委員長が第3の議題として、テレビ放映権に関する事項を発表しました。
そもそもテレビ(LALIGA)放映権って??
ラリーガは放映権として、いくら収入を得ているのでしょうか?
LaLigaの収入とクラブの分配金は?
2020/21シーズン(1番右の列)を例に説明します。
1行目の10億9500万€は、LaLigaの国内による収益額を表します。
2行目の7億200万€は、LaLigaの国外による収益額を表します。
3行目は1行目と2行目の合計額、LaLigaの総収益額を表します。
4行目はLaLigaの総収益額(3行目)をLaLigaに分配した金額です。
5行目は3行目から4行目を引いた額であり、20クラブに与える総金額です。
図の様に、ラ・リーガが放映権から受け取る収入は、2018/19シーズンで最大(18億6400万€)となっており、LaLigaの収益の6割は国内権販売によるものです。
ちなみに他リーグと比較するとこのような結果となりました。
クラブに与える放映権料の決め方
では、クラブに与える16億6200万€(20/21シーズン、表の5行目)は、何を基準に20クラブに分配するのでしょうか?
決め方は以下の3つに基づきます。
放映権料の50%は各チームに均等に分配。
放映権料の25%は市場の規模に依存。(観客数およびチケット販売数…)
残りの25%は過去5年間のスポーツの実績により決定。(LaLigaでの順位)
2020/21シーズンのラ・リーガの収入は16億6200万€でした。(内、2億1730万€はセグンダの収益)よって、リーガ1部の収益は14億4700万€なので、これの50%から20を割った3600万€が全チーム均等に配られた金額となります。
2020/21シーズンのバルサはこの3600万€、②市場の規模による7200万€、③過去5年間の成績による5800万€、これらの3つを合わせた1億6600万€がLaLiga放映権の収入となります。
上図のように、過去5年の収益額に多少のばらつきがありますが、クラブ宛の金額に対しての割合としては11.5%付近を維持しています。
クラブの収入にどの様な役割を担っているのか?
投資家に提供されるテレビ放映権(25%)は、クラブ総予算の約5%に相当します。
因みに、テレビ放映権の10%売るごとに約2億ユーロを調達する見込みで、"25年以上続く運営は考えていない "との事です。
投票結果
「テレビ放映権の利用による収入の25%を上限として、1人または複数の投資家に譲渡する権限」に対する投票が行われました。
結果、テレビ放映権に基づく資金調達を行うことを有効にすることについて、過半数の支持を得ました。認定会員586名のうち494名(87%)が賛成票を投じ、62名(11%)が反対票を投じ、13名(2%)が空白票を投じ、承認されました。
そして、クラブを健全な財務状態に戻すことを目的に取締役会が提案した2つ目のレバーの作動は承認されました。
10%売る毎に2億€(最大25%)を得られます。
また、25年以上は続けません。
また、6月30日までに放映権のを売却を完了させる必要があります。現在2億〜3億€のオファーが8件あるそうなので、見極め、交渉を終えて欲しいですね。
まとめ
ラポルタは2つの投票の前に代表者たちにあるお願いをしました。「なぜなら、私たちはもう限界だからです。そうしなければ、国営のクラブと競争することができなくなりますし、私たちを後見人として介入させようとする人たちに対抗して、独立性を保ち、統治と所有のモデルを継続させることができなくなります。」と、会員に呼びかけました。
さらに、クラブは "利益を生み出し、正の資本を持ち、これらの財源を使って、繰り返し、組織的に、執拗に受けている障害を克服する "必要があると主張しました。
そして、約6億ユーロと推定される収入を得るために、2つの財務メカニズムを起動させることが、明確な多数決で承認されました。
これにより、2021/22会計年度を黒字で終了できるようになり、バルサを競争力のあるチームにするために必要な投資の可能性が生まれます。
6月16日の臨時総会により、2つのレバーの作動は承認され、ラポルタは感謝の言葉と「現在を解決し、未来を保証する」ことができると述べました。
これから、傷ついたF1マシンはガソリンを入れ、動ける状態に戻し、優秀なピットクルーの元、グリッドの最前列に戻らなければなりません。
傷ついたF1マシンが再び勝利を手にする事ができるのでしょうか。
ここまで、読んでいただきありがとうございます!
是非拡散、指摘もお願い致します。
追記(2022/6/30)
2022年6月30日日本時間の21時にFCバルセロナから公式情報がありました。
バルサとSixth Streetが、クラブのリーガ・エスパニョーラ放映権の10%シェア獲得で合意
この取引により、FCバルセロナは、今シーズンのキャピタルゲインとして、総額2億6700万ユーロを生み出します。
Sixth Street社に、今後25年間クラブのリーガ・エスパニョーラのテレビ放映権の10%を売却することにより、バルセロナは2億750万ユーロを受け取ります。
一つ目のレバーを6月30日以内に動かしたことで、黒字で今シーズンを終了します。
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