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足関節捻挫後の段階的リハビリテーション

これからこのnote上で、各関節の代表的な外傷に対するリハビリテーションに関して記していこうと思います。20年以上も現場にいるので、各外傷のリハビリテーションはそれなりの数をこなしていて、一般的なプロトコルにない各リハビリテーション管理上の注意点などもノウハウを蓄積してきたつもりです。そういったものも含めて、ここでは皆様に伝わるよう、動画も含めてまとめています。私の手が届かない、多くの選手に、より専門的なリハビリテーションが行き渡ることを願います。

さて、初回は足関節外側靭帯損傷(捻挫)後のリハビリテーションです。スポーツ現場にいると、最も遭遇する機会の多い外傷のうちの一つです。足関節の捻挫は、足関節周囲の靭帯損傷のことを言うので、内側にある三角靭帯を痛めても、脛骨と腓骨を止める脛腓間靭帯を痛めても、足関節捻挫といいます。

本来であれば、内側靭帯損傷と外側靭帯損傷、脛腓間靭帯損傷では、管理が若干異なります。今回は、捻挫のなかでも多くを占める外側の靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯)損傷の場合を前提にお話します。

足関節の捻挫後にジョギングを開始するまでの運動療法を

①怪我したばかりの急性期、

②急性期を終えた後の亜急性期、

③運動を積極的に開始できる回復期と、

3段階に分けてlevel 0からlevel3まで説明していきます。

もちろん、各フェイズの到達目標と、

次のフェイズへ移行するための基準も明確にしています。

これで、どのような状態になったらprogressionしてよいのか、

誰でもわかるようになりますね!

記事の最後には、

今回説明した内容を表にした

エクセルファイルがダウンロードできるようになっていますので、

ぜひご利用ください!!


それでは、怪我したばかりの急性期:acute phase(炎症が治まるまで)の

リハビリから開始していきます。

足関節捻挫の急性期リハビリ

通常外傷後、48~72時間は組織に炎症反応が起こる

「急性期(acute phase)」と呼ばれる時期になります。

急性期Lv0のゴールは、

「熱感の消失」と「腫脹の増大が治まること」です。

PRICEと呼ばれる炎症管理がこの時期は重要になります。

炎症に対する管理方法のそれぞれの頭文字をとって

Protection(保護):損傷靱帯にストレスをかけない
Rest(安静):患部の安静
Ice(冷却):炎症の抑制、疼痛軽減
Compression(圧迫):止血・腫脹の抑制
Elevation(挙上):腫脹の抑制・改善

とされています。

この時期は炎症を増悪させる運動や、

損傷靱帯にストレスをかける運動(前距腓靭帯の損傷であれば内反底屈)は

決して行わないようにします。

患部以外の運動も、血流が増加して炎症を助長してしまうので、

基本的には行わずに安静にしましょう。

アイシングの目的は患部の血流を低下させ、

周辺組織の酸素需要を低下させて、

二次的な周辺組織の損傷を防ぐこと、

腫脹を最小限に抑え、疼痛を軽減させることになります。

局所の圧迫は損傷組織の出血を止めること、

腫脹が広がらないようにしてこちらも二次的損傷を防ぐ目的で行います。

挙上は血流を抑制するために行いますので、

患部が心臓よりも高い位置になるようにして

過ごしてください。

挙上した安静肢位を作る際の注意点は、

・踵を下から押し上げない(地面につけない)
・足関節をだらんと伸ばさない(底屈位にしない)

の2点です。

挙上間違い

上図のように踵が下から圧迫されていると、

距骨という足関節の骨が前方へ偏位してしまい、

損傷を受けた前距腓靭帯にストレスをかけてしまいます。

つまり、組織修復を妨げるわけですね(^^)

スクリーンショット (242)

可能な限り上図のように踵には何も当たらないようにして、

シーネやテーピングを利用して背屈位で固定できるようにしましょう。

超音波療法などの物理療法を行う際もこのような肢位を

なるべく崩さないようにしましょう。

急性期にしておいたほうが良い運動は、

足趾を握る・開く運動と

Heel cord stretch(下腿後面のストレッチ)です。

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患部に痛みのない範囲で大きく足趾の屈曲と伸展を繰り返します。


スクリーンショット (245)

Heel cord stretchは、タオルを足部にかけて軽く背屈方向へ引っ張ります。

痛みがある場合は無理に行わないようにします。

Subacute phase(亜急性期)のゴールに

「完全背屈可動域の獲得」が含まれます。

足関節捻挫後に背屈可動域制限を残すと、

再受傷の確率が高くなってしまいますし、

リハビリの過程においても二次的な障害を引き起こすリスクが高いため、

背屈可動域制限には早い段階で対応していきます。

受傷後2~3日はこの程度の運動療法のみで、

物理療法や冷却によって炎症反応を早期に抑え、

次にSubacute phaseへ移行できるようにしていきます。

足関節捻挫の亜急性期リハビリ①

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