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逆ヘッドタックルを回避せよ

前回の記事では、

こんなタックルは危ない!

というお話をしました。

ラグビーにおいて、

タックルする、という行為は、

怪我するリスクと隣り合わせ。

ですが、その「タックル」こそが、

ラグビーの魅力のひとつであることは事実。

だからこそ、

「正しいタックルスキル」

を身につける必要があります。

前回、1対1のタックルでは

正面からタックルに入る時に

相手の脚にタックルするとリスクが高い、

という話をしました。

今回は、

「頭の位置」について触れていきたいと思います。

前回ご紹介したFeller et al(2010)の論文において、

統計的な有意差はなかったものの、

タックルする選手の頭が、

ボールキャリアーの正面にある時は、

ボールキャリアーの横、後方にあるときより、

怪我のリスクが高い傾向があったことが言われています。

皆さんは、「逆ヘッドタックル」を

ご存知でしょうか。

ラグビーの現場ではよく聞く言葉なのですが、

一般にはあまり知られていないと思います。

逆ヘッドタックルとは、

ボールキャリアーの進行方向を、

タックラーの頭で遮るような方向に頭部を位置させるタックルです(下図)

スクリーンショット 2020-04-17 13.06.14

(順天堂大学プレスリリースより引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000021495.html)

順天堂大学の川崎隆之先生らは、

日本の強豪大学チームの試合ビデオから、

3970のタックルを抽出し、

逆ヘッドタックルと、

進行方向に頭を入れないタックル

(図に示された「順ヘッドタックル」)

で、頭頚部・肩外傷の発生率を提示しました。

その結果、

逆ヘッドタックルにおける外傷発生率は、

69.4/1000 tackles

順ヘッドタックルのそれは、

2.7/1000 tackles

と30倍近い発生率であったことが示されました。

これは、1000回逆ヘッドタックルすると、

69.4回頭、頚、肩の怪我をするということです。

順ヘッドならば、

2.7回。かなり大きな開きがあると思います。

相手の進行方向を塞ぐように頭をぶつけてしまうので、

頭や頸が危ないのはわかるかなぁ、と思います。

実は、この逆ヘッドタックル、

肩関節脱臼も引き起こすことがあります。

手前味噌になりますが、

初回肩関節脱臼をしたラグビー選手の受傷起点を

受傷起点となった動画を収集して解析しました。

その結果、約3割が、

この逆ヘッドタックルで脱臼していたことがわかりました。

逆ヘッドタックルで肩関節脱臼が生じることは一般的にあまり

認識されておらず、過去の調査では

以前の記事でもご紹介した

Arm tackleで腕が後方に持っていかれたときに、

腕の骨が前側に脱臼することが言われていて

これが一般的な受傷起点だとされていました(下写真のような形)。

スクリーンショット 2021-01-09 18.33.01

(Maki et al. より引用。タックルする選手がすれ違いざまに腕を伸ばしたため、後方に腕を持っていかれて肩が脱臼します)

逆ヘッドで入っているタックルは、

インパクトが大きくて、相手を逆に倒してしまうほど、

一見すると「ナイスタックル!」

と思えなくないものも含まれていました。

スクリーンショット 2021-01-09 18.33.28

(Maki et al.より。このように、相手の中心を捉えているものの、頭が相手の進行方向を遮る形で位置している。この形で、タックラーの右肩がはずれます)

このとき、腕の骨は決っして後方に持っていかれていないのです。

これには受傷時のインパクトと

力が加わった方向が関係していると思われますが、

詳細は明らかにできていません。

今後の課題というところですね(^^)

ただ、ラグビー競技におけるタックルにおいて、

逆ヘッドタックルは、

頭や首の怪我のみならず、肩の脱臼にまでつながる、

危ないタックルです。

どうして逆ヘッドタックルになってしまうかというと、

相手のステップが予測できていなかったり、

得意な肩でタックルに行きたかったり、

痛みのある肩でタックルしたくない、

逆ヘッドじゃないと間に合わなかった、

などと言った理由があります。

なので、中学生や高校生のうちから、

タックルに入る肩に得意不得意を作らないよう、

練習せねばなりませんし、

コンディションの悪い状態で

練習したりしないようにしなければなりません。

ちょっとした心がけかもしれませんが、

選手も、そして現場に携わるトレーナーやコーチの方々も、

逆ヘッドでタックルに行く頻度が高い選手は、

個別に原因を探して、修正してあげてくださいね。


このあたりでラグビー競技と怪我の関係のお話は

一旦おしまいにして、

次回からはよくある怪我とそのリハビリ、

気をつけなければいけない後遺症とか、

実際に現場で起きている問題をピックアップして、

対処方法について書いていけたらなぁ、

と思っています。。

ゆるくやりますので、よろしくおねがいします。

最後までお読みいただきありがとうございました!

引用・参考文献

・Tackler's head position relative to the ball carrier is highly correlated with head and neck injuries in rugby. Sobue S, Kawasaki T, et al.
Br J Sports Med. 2018 Mar;52(6):353-358. doi: 10.1136/bjsports-2017-098135. Epub 2017 Nov 21.

・Video Analysis of Primary Shoulder Dislocations in Rugby Tackles.
Maki N, Kawasaki T, et al. Orthop J Sports Med. 2017 Jun 29;5(6):2325967117712951. doi: 10.1177/2325967117712951. eCollection 2017 Jun.







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