偏ったひとつの視点から

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20151011 ナチュラル・ボーン・ヒーローズ

この本にはいくつも入口がある。
身体論、スポーツ、古武術、生物学、ヒトの進化、解剖学、栄養学、戦史、冒険小説、興味分野がそれぞれに異なる持つ人たちを惹きつける入口が。
いったん入り込むと中は迷宮だ。
自分が選んだ入口からの道は交錯し、途中で広くなったり狭くなったりするが、ある瞬間、読者は広間にいる自分に気づく。
人間の本質とは何か?という古来からの疑問の回答がもしかしたら積み上げられているかもしれ

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20190204 知性の転覆メモ

p.139 1980年代がどんな時代だったかは、一言で言える。

「バカになった時代」である。

バカになって、今までのものをチャラにして、新たに作り直すかどうかという「血が流れない革命の時代」だった。問題は、「バカになる」が時代の主要テーマだったから、「バカになって、それでどうするんだっけ?」、という後半部分が見えなくなったところだ。
そういうことが口にされるところでは「脱構築」ということが言わ

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20181112 パリが愛した娼婦メモ

p.128 コルバンは、このプロセスを次のように描いている。

「『精液の排水溝』としての娼家(そこへ人は生理的欲求のはけ口をもとめてやってくる)、そんな娼家に人々はもはや、いくばくの魅力も感じなくなったのである。それに代わって、誘惑が性を美化し、それへの関心が著しく高まった」

では、こうした新たな消費資本主義的な欲望をもった男たちは、どんな娼婦とどんな娼家を望むようになるのだろうか?

まこと

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201270625 エマは星の夢を見る

フランス映画[手羽先とモモ(L’aile ou la cuisse)]は、超人的な味覚と料理の知識を持つレストランガイドの調査員が主人公になっている。覆面調査を旨とするミシュラン調査員はミステリアスな存在で、様々な憶測や想像を喚起する。

ところが2004年、パスカル・レミが[裏ミシュラン(L'INSPECTEUR SE MET À TABLE)]を発表し、ミシュラン調査員の実態が明らかになった。

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20140108 オオカミの護符

2013年の冬は新しい駅ビルへの移転で最寄りの図書館が使えなかったので、比較的近い図書館分室まで散歩を兼ねてよく歩いた。

そうして初めて気づいた。
東横線で元住吉や日吉という駅は、線路上の点だ。
しかし自分の足で歩いてみると、たとえば蟹ケ谷のあたりまで元住吉、夢見ヶ崎の近くまで日吉という地名となっている。
これらの地名は東京から南下する路線の点状のものではなく、多摩川に近い順に並行する帯状の拡が

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20170723 春の夢

NHKはそろそろ朝の連続ドラマで大泉サロンを取り上げるべきだと思う。

[大泉サロン]。先行した水野英子等の女性作家、手塚治虫や男性マンガ家による少女マンガの影響を受けて昭和24年生まれの若い女性マンガ家たちが革新的な作品を生み出した特定の場所と時間がそう称された。爆発的な創造力は、後のマンガ文化に非常に強い影響を与えた。その状況がドラマとして再現されれば、当時作家や作品にリアルタイムで触れていた

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20170707 A-A'

14歳の冬だった。
プリンセスに掲載された表題作を読み、心を鷲掴みにされた。
物語冒頭の主人公アデラド・リーのモノローグは、30年以上経った今でも暗記している。

「毛深の黒馬(ポニー)と暮らしていた ただひとりの友人だった だけどわたしが11のとき黒馬はクレパスに落ちて死んだ わたしは生まれてはじめて泣いた」

当時ADS(アスペルガー症候群)という認識はなかった。
今の人間が読めば誰もがアデラ

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20170521 メッセージ(ネタバレなし)

古代ギリシアには、未来はわたしたちの背後からやってきて追い越していくと主張する哲学者の一派がいたらしい。たしかに、ほんの少し前までその存在にすら気づかず、目にした瞬間に手が届かないところに遠ざかって行ってしまった数多のチャンスのことを思い返すと、そう考えるのが理にかなっている。だが、概ねヒトは、未来は視線の先からやってくると信じている。前方を見るのに適した動物として進化し、しかもヒトに関しては二足

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20170416 ニュクスの角灯第3巻

物語はこの第3巻で大きく潮目を変える。読者が親しみ、知ってたつもりの登場人物たちは新しい場所で別の顔を、側面を、見せ始める。キャラクターを演じていた俳優が、役から解放され、素の自分に戻るように。(仮にそれが[素の自分を演じている]というメタな状況であるにしてもだ。)

第1巻には、仔猫はいずれ人間になると信じる、吉祥寺の少女の物語が反映されている。この巻ではパリという自由な場所で自らの羽を広げて羽

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20170401 ソーセージ・パーティー

予告編を見れば誰でも想像する下ネタのオンパレードだが、かなり予想の斜め上を行く。

酔っ払っていなければ見る気にはならない。だが酔っ払って見ると、酔って麻痺している頭の中の、どこまでも酔うことなく冴えている部分が映画のファクツを[読む]。読んでしまう。アメリカのエスニシティやLGBT状況に関心のある日本人なら、なおさらだ。

町山智浩さんや越智道雄先生のご著書や肉声から知った、アメリカという国を構

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