さくさく小説

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小説/夜明けに咲く 第1話

小説/夜明けに咲く 第1話

第1話  「春先の風」 1 恐らく私は悪女だ。 打算こそ行動の原則。損得がすべて。得になることを続ければ幸せになれる。いつもそう信じている。 子どもの頃から今まで、そしてこれからも一生そうであるはず。なぜなら私はモテる。 絶世の美女というわけではない。それは自分でもよく理解している。しかし私はモテる。 容姿は普通かどうかといえば、普通よりは上というレベルだろう。 そもそも普通の顔というのがどんな顔かは知らないが、普通よりは美

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小説/神霊スペシメン 朝焼けの詩

小説/神霊スペシメン 朝焼けの詩

観るモノ 目覚めし刻 本当の刻が動き出す 群衆の眼差しの先 遥かな空洞 修羅 本当の宇宙は 己に在る しかし辛い別れではない この手に残る温もりは真実 あなたが微笑む写真の光 虚から逃れる道しるべ 目を閉じた先 広大な無に包まれても 美しい温もりが心を照らす 突き刺す風の冷たさで 熱を失うこともない 今はただ穏やかな凪と朝を待つ 花冷えの季節 静かな水面 激情 心宿る はじめての朝

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小説/神霊スペシメン 第2話

小説/神霊スペシメン 第2話

クローンといえども特別な力はない。 見た目は普通の人間だ。20歳の男。身体能力も20歳の成人男性の平均通り。思考力も平均的だろう。いや平均よりは少し知能が高いかもしれない。 そう思いたい。 クローンと言われない限りは、どちらかといえば平凡な男である。少しくらい何かで優位に立ちたい。 でないと割に合わない。クローンというだけで色々な弊害もあるし、うんざりするくらいこき使われている。 普通の人と違う点があるとしたら、我々民間向けクローン達はいくらでも代えがいるということだ。人

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小説/神霊スペシメン 第1話

小説/神霊スペシメン 第1話

序章 人々は堕落した。あらゆる希望は地の底に落ちた。 そして、それらの原因はすべて私にある。 私と私たちの存在は彼らにとって恩恵であるはずだったのに、いつの頃からかすべては狂い出した。 小さなほころびはやがて大きな混沌となり、人々の穏やかな日常を破壊した。 飢餓、病苦、戦争、破綻、混乱、嫉妬、崩壊。起こりえるあらゆる問題の引き金を私が持った。 すべての過ちはいつどこから始まったのだろう。 考え詰めるとキリがない。 今もあらゆる厄災を告げるサイレンが鳴っている。 明日もまた

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小説/Field Flowers フィールドフワラーズ 第1話

小説/Field Flowers フィールドフワラーズ 第1話

また転んだ。 これで3回目の転倒だ。コウエイはマラソンが嫌いだ。 それなのに人一倍負けず嫌いだから、ヘタなフォームでドタドタと慌ただしい走りだ。しかもサイズの合わない靴とブカブカのジャージが邪魔をする。中学生になっても成長が遅いコウエイは、制服を着ていないと小学生に見える。背も他のクラスメイトより頭ひとつくらい低い。 それでもコウエイはいつだって全力疾走だ。 転んでも転んでも誰よりも早く立ち上がる。痛みを感じる暇すら忘れてしまっているようだ。立ち上がる勢いだけは誰よりも速い

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小説/Field Flowers フィールドフワラーズ 序章

小説/Field Flowers フィールドフワラーズ 序章

どこからか煙の匂い。 目の前に小さな子が立っている。こちらを見てにこにこしている。 なんだか眩しくて、見ているだけで元気が湧いてきそうなのは、白い服に白い帽子を被っているからだろうか。白い帽子。ファンタジーの世界で出てくるような、魔法使いのとんがり帽子のようだ。 大きなつばに、細長くとがったてっぺん。白い服も魔法使いのマントのようだ。 白い靴、白い肌。そして帽子から見える白い髪。 子どもなのに髪さえも白いから、そこだけまるで絵本から抜け出してきたような不思議な光景。私は、

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[無料] 小説/月灯りとミラーちゃん 第4話

[無料] 小説/月灯りとミラーちゃん 第4話

ミラーちゃん人形のブームがいつの間にか終わっていた。 少女たちは中学生になった。桜舞う校舎の下駄箱。張り出されたクラス割りをみて落胆する人、喜ぶ人。それぞれが新生活に想いを馳せている。これからは小学生の頃のような誰もが仲良く過ごす時代は終わったのだろう。なぜなら学期末テストの結果で、単純に能力に順列がつけられるから。競争で勝ち抜けるものこそが価値に変わる。鈍臭いやつは蹴落とされる。いよいよ大人が近づいた気がする。もう手を繋いで仲良くみんな一緒にゴールはできない。この中学生活の

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小説/ふれあい緑道 第2話

小説/ふれあい緑道 第2話

手の温もり。思い出すたくさんの愛おしい思い出。 この道を何度も二人で歩いた。川沿いのこの道。 雪の日はこけてしまわないように注意深く。秋の日は枯葉舞う寒空の中、君を抱いて。 それでも、いつか君との別れが訪れるだろう。そんな遠い日を想像しながら歩いた。 それでも今二人で歩くことの意味。 何度も違う人とすれ違った。君以外の可能性もたくさんあった。 けれど今の君との出会いが私を変えた。もうきっと君でなければ、君の代わりだけはどこにもいない。 心から守りたいと思った。 だから手をも

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小説/ふれあい緑道 第1話

小説/ふれあい緑道 第1話

春の緑道を歩く二人。それはとても朗らかで美しい道のり。太陽は柔らかい熱を肌に与え、その刺激が気分を高揚させる。どうしてこの場所にたどり着いたのだろう。いくつもの可能性を経て、なぜ二人はこの道を歩くのだろう。 人生とは不思議なものだ。君と出会ってからの日々があっという間に過ぎていく。幸せに包まれ、穏やかな時の流れがむしろ早く感じる。出会ったのは遠い遠い、今ではもう思い出せないくらいに昔のことなのに、遠ざかるほどに出会いの頃が鮮明に思い出せる。きっと縁も宇宙も、森羅万象は円環のよ

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小説/友だちリスト 第2話

小説/友だちリスト 第2話

水沢さんに話を戻そう。 彼女の異変に気付いたのはそんなに前ではない。ごく最近。異変といっても何か大きな変化があったという訳ではない。多分女性同士にしかわからないレベルの些細な変化だ。新しい環境で、うちの部署に配属され、席も隣になったから毎日嫌でも(嫌でもないが)彼女の言動が目につく。どちらかというと職場では着飾るタイプではない私だが、水沢さんは逆だ。 エアコンが強めのオフィスだというのに、体が冷えそうなノースリーブを着て来たり、季節外れのワンピース(スカート短め)というよう

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